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『スタンフォードの権力のレッスン』から考える良い上司の条件

「あなたにとって良い上司の条件とは?」と聞かれたら、何と答えますか?

・部下の意見を聞いてくれること
・リーダーシップを発揮してチームを引っ張れること
・きめ細かなフォローができるマネジメント力に溢れていること
                          等々、、、

「職場での人間関係」というのは、転職理由の大きな理由の1つとなっていると言われています。1日の実に3分の1以上の時間を一緒に過ごしている職場の人との関係性はたしかに大事ですよね。
そして、「上司に恵まれているか?」ということは、職場の人間関係に大きく影響していると言えるでしょう。

本記事では、”デボラ・グルーンフェルド著(以下、筆者)”『スタンフォードの権力のレッスン』をもとに私の考える理想の上司について考えてみたいと思います。

良い上司の前に良い部下について考える

部下がいなければ、上司は存在できないわけで上司について考えてみる前に部下について考えてみたいと思います。

 ときには、自分の役割は変わらなくても、上司が変わったために調整が必要になることがある。
 いい部下の条件は、上司がだれなのか、上司がどんな部下を好むのかによって変わる。
パワーアップ※1が得意な上司は、パワーダウンする部下との相性がよく、パワーダウン※1を好む上司は、パワーアップする部下の方がやりやすいと感じる。ある上司の下ではステータスを得るのに役立った行動が、別の上司の下では逆効果になることがあるということだ。

※1自分の権力を目に見えるかたちで強調すること
※2自分の権力を控える慎み深さのこと

上記の通り、良い部下の絶対な定義など存在せず、それは上司によって変化するものであると筆者は述べています。
※ちなみに、筆者はそれまでの上司がなんでも部下に任せる人で、説得力のある説明さえすれば、ほとんど全てのことに「イエス」と言ってもらえていた。つまり、筆者の方がパワーアップすることで上司と上手くいっていた。しかし、上司が変わってもこれまで通りの提案をし続けていたら、その上司から「攻撃的だと感じた」と説明を受けたエピソードを述べています。

実は私も似たような経験をしたことがあります。
以前いた組織では、管理職が存在せず社長以外は全員がフラットでした(ときには社長すらフラットな立ち位置になることもありました)。そのため、自分が感じたことや改善した方が良いことを提案すれば、実現するかどうかは別としてMTGの議題にあがって検討されていました。むしろ、自分からそのような提案を行わない人にとっては居心地のあまり良くない環境でした。なので、自分が感じた違和感を発信することが私にとっての正義で、何も発信をしない人は悪でした。

しかし、環境が変わり新たな上司に同じような提案をしたら、曖昧な返事のみが返ってくるばかりで、まともに取り合ってくれませんでした。そして、それでも提案を続ける私を鬱陶しいと思ったのか私に対する指示は端的で事務的、他の従順なメンバーへは絵文字も入ったフランクな内容でした(最も私がそう感じただけかもしれませんが、)。

その当時は提案が受け入れられないことが不思議で仕方がなかったですが、この本を読んで腑に落ちたことを覚えています。どちらが組織として良いか悪いかは別として、同じ「積極的に提案をする部下」が悪い部下にも良い部下にもなることを身をもって実感しましたが、大切なのは自分はどうありたいか?そして、自分の考えを受け入れてくれる組織に身を置くことだと思いました。

良い上司は存在するのか?

さて、上司に話を戻しますが、上記の部下の例に習えば良い上司というのも環境(部下)によって変わるとも言えます。いや、上司が決まるから良い部下の定義が定まるのかもしれません。そんな卵が先か鶏が先か議論は一旦、横においておき、あくまで私が考える理想の上司について本書をもとに述べていきたいと思います。

「覚悟」が力を生む

下記はスタンフォード大学で行われている現役の学生と世界中から集まった優秀な卒業生によるロールプレイ形式で、行う伝統ある教育イベントである「エグゼクティブ・チャレンジ」での一幕です。

当日、学生にはビジネスケースと約1時間の準備時間が与えられる。学生はビジネスパーソンとして二人でペアを組み、卒業生はステークホルダーを演じる。学生側がめざすのは、30分間のミーティングで合意を成立させることだ。各ミーティングには審査員(卒業生と教員のボランティア)が立ち会う。学生はソリューションを提案し、数字を駆使して議論しながら、困らせてやろうと手ぐすねを引いている卒業生に対処しなければならない。

部屋には二人の学生がいた。一人の元気の良い若者。話すのはもっぱら彼の方だ。もう一人は、そんな彼の横に座り物静かにしているが沈黙しているわけでなく、じっとしているが固まっているわけではない肌の色の濃いアフリカ系アメリカ人の女性だ。彼女は恐れているようには見えず、エネルギーを集中させている。リラックスした表情だ。微笑むと白い歯がのぞいていた。

役員役の一人が突然立ち上がり、彼らに歩み寄って問い詰めた。
「間違いだったらどうするんだ?失敗したらどうする?だれが責任を取るのかな?」これは学生ペアが予想していなかった質問だ。
「さて、この件については、だれと話せばいいのかな?」
男子学生はこの質問にうろたえ、姿勢を変えて彼女のほうをちらりと見た。彼女は動揺した素振りもなく、
「私に話してください(ユー・カム・テゥーミー)」
と答えた。
彼女の一言で全員が息をのんで言葉を失い。彼女が部屋を支配した。役員は席に戻って座った。それが最後の質問だった。
彼女とペアを組んだ男子学生は疲れ切っているようだった。あの一言で、彼女はどんなリスクも自分が責任をもって引き受けると伝えたのだ。

ここで出てきた女子学生の行動こそ、私が考える良い上司の条件です。
彼女は、失敗したときの「責任」を負う「覚悟(決断)」をしたのです。それも「本気」で。

ビジネスをしていれば、大なり小なり決断を迫られる機会が何度もあるでしょう。でも、その決断が正解かどうかなど分かりませんし、確かめる術もありません。また、必死になって正解を探し当てるのではなく、選んだ方を正解にすることに必死になった方が良いと思います。
ただ、どちらか決めなければならないときに、いつまでも決断を先送りにせず、時にはリスクを取れること、そしてその決断に対して責任を負える人に私は惹かれます。
「なんで?」と聞かれても正直、はっきりとした理由は答えられません(笑)言ってしまえば何となくであり、上記の女子学生をカッコイイと思い、自分のこんな上司の下で働きたいと思ったからです。
強いていうなら、「上司には権力(権利)があり、権力があるならその分の責任を追っている。」また、「背負っているリスクが高い分、部下たちより高い報酬を得ている(つまりリスクをお金で買っている)」という公平性を大事にする私の性分があるのかもしれません。

自分にないから求める

勇気をもって決断を下す。その決断に責任を負う覚悟をもつ。

それは私が目指している。つまり今の私には無いことだから憧れるのだとこのnoteを書きながら思いました。

人によっては「自分と同じものを高いレベルで持っているから」という理由で良い上司を定めるかもしれません。
あなたにとっての良い上司、是非教えてください。



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