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人間の能力はタンクと蛇口【比べない体育 Vol.7】

船橋インターナショナルスクールで、『古武術で遊ぼう』のクラスを担当してくださっている玄武術【天根流】代表の方条遼雨さんと共に、比べず、体を育んでいくための場について学びを深めるため、『比べない体育』という講座を開いています。詳しくは、こちらのnote記事へ

この記事は、2021年5月開催分の講義ノートです。◆は方条さんのお話、◇は参加者の方のお話です。


◆人間の能力はタンクと蛇口で出来ている

人見知りだろうが、話し下手だろうが前に出て話す体験をすることで、どんな人でもだんだんと磨かれていくものです。

私は人間の能力は、タンクと蛇口で出来ていると考えています。タンクは、創造性・イマジネーション・才能の部分、蛇口は、表現する出口の部分。

人見知り、内向的な人はタンク系、先天的にコミュニケーションが得意な人は蛇口系、両方揃った人がエンターテナーになるんです。

人見知りな人、内向的な人、社交的じゃない人、表現下手な人は、一見わからないのだけれど、自分の中でイマジネーションを育てていて、能力の埋蔵量が多かったりする。

引っ込み思案の人は、話し合いの場で他の人に意見しないけれど、上品でいいものを持っていることが多い。人を押しのけて我が我がという感性を持った人は、上品じゃない。人を押しのけていくような下品さを知っているということは、上質な表現をできる能力とすごく密接に関係していると思います。ぐいぐい前にでる芸人さんも元々引っ込み思案だったりしますよね。

一方、元々社交的な人はその能力をどんどん伸ばせばいいんです。だから、体験することが大事なんです。


◆ディベートしない話し合い

『比べない体育』のお話版のような感じで、やってみたい企画の一つが『ディベートしない話し合い』。

討論番組を見ていて、人の意見を遮る下品な人の意見がテレビなどでは取り上げられやすい傾向にあると思ったんです。そこで、司会者やまとめ役が均等に話を振ってそれぞれの意見を引きだせれば、もっといいものができると思ったんです。

『ディベートしない話し合い』のコンセプトは、その場にいる人たちが、一緒に場を作り上げるということ。

いくつかのルールを押さえておけば、様々な人の多様な意見を引きだせる場が作れるはずです。そのルールとは、以下のようなものです。

1 結論を固定しない
結論を固定すると知性が低下します。その結論に向かってしまって、それを越えた結論に到達する可能性を自分から削除してしまっているからです。
2 自分が絶対正しいというスタンスで話さない
3 人が話している時は絶対遮らない
4 それぞれの発言時間を均等にする 
タイムキーパーをおいて、発言時間を均等に割り振り、持ち時間を超過した人は話せないようにする。前に出て話してばかりいる人は、持ち時間がすぐ無くなる仕組みです。
5 人の意見を聞く
大事なこと。全く考えの違う人たちでも、それぞれの考えをカタログを見せあうように、ああそうですねと聞き合う。理想的には、違う考えの人に触れて、こんな考えもあったんだと自然に考えがバージョンアップされていく場になるといい。
6 勝ち負けを決めない
意見が違ったら、争わず、違ったままにする。
7 その場で人の考えを変えようとしない
変わるきっかけになるに留める。自分たちができることはきっかけになることだけ。それぞれがきっかけになって、変わろうとする人は変わっていくものだから無理に変えようとしない。


この形式は、クリエーターや指導者を養成する際にも有効に機能すると予感しています。

大事なポイントは、自分から話す人だけがしゃべるのではなくて、みんながちゃんと発言できる場を作ること。

自分とかけ離れた考えの人と触れ合うことは、自分になかった範囲を拡張してくれます。けれど、たいていは拒絶反応をおこして、反射的に相手をつぶしにかかってしまう。その心理の働きを押さえながら、豊かな場を作りたいのです。

それができると人間の成長においてとても重要な能力、『待つ』ことができるようになる。その人の上質さを決める要素です。待てないと反射的に不快をあらわにしてしまう。けれど、不快の向こう側に何かを掘り出すのが人類の進化なんです。例えば、ウニのようにとげとげしたものに出会った時に、不快で終わらせずその先に何があるのかを待てると、開いた先に美味しいものに出会えるようなことです。

Vol.8につづく

講師/方条遼雨
文責・写真/あおいえりか

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