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誰でも体育教師になれる【比べない体育Vol.4】

船橋インターナショナルスクールで、『古武術で遊ぼう』のクラスを担当してくださっている玄武術【天根流】代表の方条遼雨さんと共に、比べず、体を育んでいくための場について学びを深めるため、『比べない体育』という講座を開いています。詳しくは、こちらのnote記事へ。

この記事は、2021年4月開催分の講義ノートです。
◆は方条さんのお話、◇は参加者の方のお話です。

◆在り方を転写する

イルカは生まれてすぐは泳ぎ方を知らず、お母さんイルカから教えてもらっているらしいんです。イルカは言葉で論理的に教えてはいないですよね、寄り添って泳いでいるのを見せて伝えているんだと思います。動物はそもそも言葉とか論理を有していない。

つまり、そもそも習得とは順序立てて論理だててされるものではないんです。在り方を捉えて、自分のものとして習得していく。

整理しすぎると、大人には習得しやすくなるけれど本当にくまなく習得するためには、切り取ったり切り分けたりしない方がいい。

伝える対象の在り方に接してもらって、転写する、全部コピーするのでなくても都合のいいところだけ取り入れればいいのです。

ちゃんと整理しようとする人、きっちりしようとする人にはなんだこれはという不安なものにもなる。だから教える側は整えようとしてしまうんです。

一定の目標や道のりを設定して順に習得して進んでいくチャート的な進み方はわかりやすくて、安心感はあるんです。でも一本道だとして、どこかでつまづくと落ちこぼれてしまったり、苦痛を伴いながら進むことになる。

道が一本道とせず空間、場とすると自由にどこでも行けてロールプレイングのようなイメージです。習得する手順や順序は、その人にちょうどいうように習得してもらう方がその人の栄養となる。

「比べない体育」の場でお伝えしているのは、誰でも何かを伝えることができる、在り方は誰でも伝えることができるのだから、誰でも体育教師になれるということです。


◆大人のあり方

親や周りの大人のあり方が、意識せずとも子どもに転写されるんです。だから、大人のあり方は大事。子どもに学ばれる前に大人が学ばなきゃいけないし、子どもをしつける前に自分を整えなくてはいけない。

嘘をつくなど、その場で子どもを従わせるのに便利なツールを安易に使うことは、その後のどのような後遺症を与えるのかまで思いが至らず使うと、安易な方法を用いたその大人のありかたがその子に影響を与えてしまうんです。

完璧な存在なんていないから、その時の自分が持っているままを出すしかない。

自分の持っているものを少しでも良くしようというあり方も問われる。その人の完成度とか、能力ではなく、姿勢の問題。その人がどうやって自分を改善しようとしているか、自分にどう取り組もうとしているかが大事です。あり方はいつでも自分で選べるもので、才能とか能力の問題ではない。


◆現役であること

教える側、伝える側が現役であることが大事です。

現役であるとは試行錯誤しているということ。

多くのコーチは、引退した後に工夫することもやめて動くこともやめています。そんな人がベンチから叫んだり、フィールドで動いている人に一方的に指示を出したりしている構造になっているから、ずれが生じるのです。

その人のあり方はやめた時点で終わってしまっているから、そこには嘘がある。

どんなにつたなくても衰えていても自分が改善するというあり方さえ示せば、そのあり方は言語外で伝わるものです。その言葉として発している万の言葉よりも学びになる。

常に自分が問われているんです、教えている側は採点する側ではないんです。


◆誰でも体育教師になれる

だから、誰でも体育教師になれる。自分のあり方が相手に転写されるんです。暴力を使えば、こういう場合に暴力を使っていいんだたということが転写されるので、気を付けなくてはいけないんです。

命令したり大きな声で号令をかけたりすることが多ければ、自分に対する減点の対象になる。子どもがたくさんいる場で全員が言うことを聞いていることなんてありえない。

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◆押さえておくべきポイント

それぞれの在り方でいいよという自由さはありながら、押さえておくべきポイントをいくつかお伝えしておきます。

①大人の権力を行使しない

権力は行使した分だけ、自分のマイナスポイントになる。言うこと聞けということは、いくらでも大人は子どもに行使できます。腕力も多く生きて知恵も回るのだから。これは、上司と部下の関係にもありますね。「なんて礼儀知らずなんだ」と言うのは、自分に対して例を尽くせと言っているようです。傲慢、自分は礼儀を払われる対象なんだと言っているようなもので、恥ずかしくて私は言えないです。

なんらかの権力を行使して強制するということはその人が自信がないだけ。

言葉に出すということは、不安の表れ。愛国心とか、私の事好き?とか、幸せだと連呼する人は確実に幸せではない。当たり前に幸せな状態なら口に出さない。連呼するってことは、どこか不安だから、自分は幸せだと思いたいから連呼している。ふと思い出して幸せだなと言うのはいいけれど、連呼するのは自己洗脳のようなことしようとしているもの。自分の子どもがかわいいかわいいと連呼しているのは、危険信号だと思った方がいい。

一般的に便利なツール、当たり前のツールと思っているものから見直した方がいい。大体はそれを使用しているのは、権力者側の怠慢。言うことを聞かせる便利なツールほど自分の足りない能力をごまかすためのものになっている。

②その時の自分でやる

けれど、言うことを聞いてもらえるに値する人になれよ、というのも急には無理な話です。

だから、その時の自分でやるしかないのです。その時大事なのは、自分の至らなさを含めて正確に自分を認識をすること。意気込みをもってするのではなく、事実をそのまま認めるだけでいいのです。至らなさを大げさにとらえてしまう人が多いけれど、実際はそうでもないで。

③反省することと落ち込むことを分断する

反省することと落ち込むことをセットにしている人が多い。これは分断できること。たいては反省する人は落ち込みながら反省してしまう。ポジティブな人は反省しないで、何の改善もしないで自己肯定感の化け物になる。

反省と落ち込むことは、抱き合わせ販売みたいになっている。落ち込まないで反省できればそれが最強。

反省するとは、自分の欠点を正面から見て改善する事。しかも落ち込まないからストレスもかからずに進めるのです。抱き合わせ販売を分解して、いいとこどりの組み合わせにする。自分の在り方を改善することに対しても、その場に心穏やかに自分の至らなさを発見すればいい。

④現実を認識する

成長するための前提条件は、現実を認識するということ。ポジティブ思考だけの人は、現実を見ないで現実逃避しているだけだからそのうち付けが回って来る。原発の安全神話のようなもの。

この世界には、ポジティブもネガティブもなく事実があるだけ。事実にはプラスもマイナスもあるだけだから、事実を見るだけでいいのです。心理状態は、ポジティブな状態はパフォーマンスが上がりやすいのは確か、だからちょっとご機嫌くらいで自分の欠点を観察するといいと思います。

自分の実力を把握し常に改善の姿勢を持ちながら、その場において出来ることをやれば、それだけで体育教師になれる。何の自信も根拠もない人に体育教師になってというも難しいので、場の理論をここで伝えています。


【実践】なんとなく覚えていることを出してみよう

会社組織はトップダウン。司令塔や指導者や権力者がいて、そこから従わせたり、指示をする構造がある。下から意見を聞くよという双方向の会社組織もあるけれど、主にはピラミッド構造です。

場の考え方はそれとはまったく違う。

★場づくりのKeyWord

・潮目をよむ
・場を均一にする
・影響力=重力=引力

◇1人1人を惑星と例え、その影響力を重力とする。

◇常に重力が動いている中で、重力が移り変わるのをみつつ、全体の中でどういうことをすると場のバランスが一番よくなるかを考えるのも大事です。

◇場のバランスは流動的で、潮目を読んで場を均一に均していくことで、バランスを整えていく。それは固定されるのではなく流れている。

◇場を作っていく時に子どもたちの重力の大きさは違う。子どもが一人でいると、影響力が小さいとみえがちだけど、ほんとにその子が集中して取り組んでいたら、一人でいたとしてもその子の影響力は大きいから大人はかかわる必要はない。その子はその子だけの影響力で存在しているから、他の子に関わることで場が均一になっていくということもある。


◆重力は伸び縮みする

重力は場における人それぞれにその場にある。その人に特殊技能があって、他の人がそれに興味があればその人の影響力は大きくなり、興味がなければその人の影響力は小さくなる。でも、興味がなかったんだけど、その特殊技能の良さに誰かが気づきはじめて、その良さが伝わり始めると重力が増す。

リアルタイムで重力は伸び縮みするし、変転して移動する。重力に流れが生じる、それが潮目です。潮目をよむとは、全体の流れを感じて自分がどこに身を置き何をするかを考えながら移動することなんです。それを考える時の指針として、場を均すことが役に立つ。

大きな重力の人は、ここにこいと重力を集めがちです。

基本的な原則として、重力は大きいところは小さいところへ、小さいところは大きいところへ移動させていくことで均一にできます。その場その場に生じている重力を感じながら、全体のバランスを見ながらどんどん移動する、それが潮目を読むことになり、グルグル重力が流れるようになり、その流れに乗ることができれば、何もしなくても場のエネルギーが何かを生んでくれるのです。

それぞれの潮目を読む感覚をもって、それぞれなりの考えをもってフォーメーションを変えていっている。その人の経験も蓄積されていき、潮目を読む感覚が増してくる。

Vol.5に続く

講師 / 方条遼雨
文責・写真 / あおいえりか



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