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”学習プロセスコントロールの支援”の実践

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私が実際に大学で行っていた実践と雑観(2021年度〜2023年度) 新しく始める学習支援の実践と雑感(2024年度〜)
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記事一覧

ニューロダイバーシティ(多様性)を知る一助としての「同時・継次」

大学で行っている”学習支援”のワークショップの第一回目には、必ず認知処理傾向としての「同時処理と継次処理」の話をすることにしています。 これは学生の記憶にも強く残っているようで、WS最終日に全体を通しての感想を書いてもらっても、この点に言及する学生がとても多いのです。 それくらい、インパクトを与える話なのかな、と思っています。 ワークを始める前に、あくまで、学習方法を考えるときの一つのヒントであり、絶対的なものでないということは、断りを入れます。 また、これからする設問も、

同時処理傾向のある人は、情報が1枚に収まっている方が良い(仮説)

同時処理傾向のある人は、情報を取り込む時、 文字の羅列よりは→表で 表だけよりは→矢印などで思考に動きがある ページをまたいだ説明よりは→その単元が見開きや紙1枚に収まっている 方が理解や記憶に効果があると考えている。 同時処理は、「視覚型」とも言われる。 私は同時処理を語る時、あまり「視覚型」と言いたくない、と思っている。 「視覚型」という言葉からイメージする範囲が広すぎるので、少しずれた使い方をされているように思う例があるからだ。 でも、上記の事柄は「視覚型」と言われる

ディスレクシアが強く疑われる中1生の指導覚書

「書き」に強い困難が見られる中1生。 読書はよくしていて、知識や理論(理屈)も強いが、成績は学年でもほぼビリみたいな感じらしい。 先日、本人に会って、少し話をし、 もし、本人の気が向いたら、学習指導を始めるかもしれない。 まだ、教え方がしっかり定まっていない、 というか、本人の内的外的状況を見ながら、本人と話し合いながらどう学んでいくか決めていくことになるだろう。 でも、私の方ではある程度、心構えを作っておかないと、繊細な学習者を傷つけてしまうことになるかもしれない。 そこ

困っている人が、”支援者”に「助けて」と言うまでに

「困っていたら声をかけてね」 と発信することはとても重要だ。 今困っている人に対して、 支援している人が存在する、ということを知らせることになるし、 繋がろうと思えば繋がれる、と知っていることは、何かが起こった時や何か行動するときの安心材料や自信につながるからだ。 けれど、 「いつでも相談に乗るよー」 と支援室の椅子に座っていても、 ”困っている人”はそこに来るまでに様々に葛藤する。 「援助要請プロセスの段階」というものがある。 様々な研究から一定程度の結果がそこにまとめ

同時処理傾向の人>丸暗記をしなくてはならない時は、大きめカードと太めペンで。

同時処理傾向の人は、単調な丸暗記が苦手なことが多い。 英単語は書いても書いても覚えられないし、 歴史の用語も覚えても覚えても、こぼれていく。 一問一答形式の問題集で答えを覚えていくのも好きでない、 と訴える人が多いと思う。 それでも、時間的制限や与えられた情報の性質によって、 「丸暗記」をしなければならないことがある。 そんな時、勧めているのは、 大きめのカードに太めのペンで、その用語を書くことだ。 逆に言うと、市販の「単語カード」などにボールペンなどで覚えたい単語を書いて

このnoteは、「学習プロセスのコントロール」支援を中心に書いています

学びが楽しいとは、 ひとつに、知的好奇心をそそられること、 ひとつに、目標があるなら、それを達成すること、 そして、学びのプロセスを自分でコントロールして楽しむことがある、 と、私は思う。 自分で自分の学びのプロセスをコントロールするのは面白い。 学びのプロセスとは、つまり、学習方法だ。 学びのプロセスをコントロールするとは、 自分に合った学習方法を自分で作っていくということだ。 そして、それを日々、状況によって変えていくことだ。 ただ、この「学びのプロセスをコントロール

大きい不安を消す。小さい不安を消す。

(写真は、今日のうちの大学) 今日は、大学で、2月の国家資格試験に向けての学習について、学生の個別相談にのる日だった。 1時間半の相談から、振り返ってみて、今日の相談相手の彼女とのキーワードは「不安」かな、と思う。 「今から、どうやって勉強したらいいかと思って・・・」 というのが、彼女の主訴だったが、 状況を聞いてみると、 就活がまだ続いており、卒論は見通しは立ったがまだほぼ手付かず。12月に行われる実習経験発表会の準備もまだで、レポートは骨子ができたところ。3週間後の模

相談時、「他に合わせられる部分は?」と自問する

(写真は、ある相談者との話し合いの時に書かれたホワイトボードです。話しながら、相談者である学生さんの言ったこと・二人で合意したことなどを書いていきます。軽い学習障害が疑われる部分がある学生さんなのですが、非常に卓越した能力を持っている部分もあり、それを前提に話し合っています) 学習方法(学習の進め方)の個人相談を受けています。 一人一人の置かれている外的状況と、持っている個性に合わせて、自己効力感のある学習計画を一緒に立てられるように努めています。 以前は、ある程度状況を

「相手と”合わせる”部分を多くする」←マイブーム

今出席している大学院の講義で、「人と意見を合わせる時、何を合わせているか?」という問いかけがあった。 私たちは、ざまざまなものを合わせていって、その先に「合意」がある、という話だ。 これは、私にとって目から鱗の話だった。 私は、他人に「気持ち」を合わせていくのは上手い方だと思う。丁寧に話を聞いて背景も聞き、状況を理解し、その人の気持ちに自分の気持ちを重ねて、理解していく。 なのに 「結果」を出さなければならない、多人数の話し合いの時は、一人で勝手に心の中で「結論」を考え、皆

「学習のお悩み解決!グループワーク」の効果(学生目線)

上掲した図の文字の部分は、Schun&Zimmerman(1998)の「自己調整学習サイクル」の図です。脇に添えてあるイラストは、私の資格試験学習法のワークショップの説明です。時々、個人ワークに加えて、グループワークを行います。その主目的は「メタ認知力の強化」にあるのですが(別の機会に書きたいです)、その意図とは別に、このグループワークは、学生にとても好評です。 一番は「孤独感からの解放」にあるようです。 そのことについて、今日は書いてみたいと思います。 グループワークの一

経営コンサルタントとの約束と、note

(イラスト。まさしくこんな感じでした。パソコンもりんごだし。私のコンサルタントはもっともっとトシ取っていますが) 私は某地方に住んでいるのですが、先日、わざわざ(?)泊まりがけで”都市部”に出かけ、以前お世話になった「経営コンサルタント」の方とお話ししてきました。 経営コンサルタントといっても、彼の信条は「儲かる儲からない」が前提にあるのではなく、「自分を掘り下げて、自分の強み、譲れない理念を自覚して、それを武器にすれば、周りの人と闘わなくても、自分が幸せになる自分の商品がで

「自分のやり方に合っていたため、楽しかった!」

先日、某大学での学習法ワークショップの2回目を行いました。 そこで、丁寧にこの2週間の自分の学習の取り組みを振り返るようなシートづくりを学生にやってもらいました。(自己調整学習サイクルの「内省」を深める外化) ある学生が2週間前の”目標”のひとつとして、「同時処理タイプの勉強をしてみる」と書いていたのですが、その振り返りの書き込みが「できた!」ー「自分のやり方に合っていたため、楽しかった!」ー「またやりたい気持ちが出てきた!」ー「時間で決めるのではなく、曜日で決めた方が長続

論文で、ワークショップは改善されたと思う

先日、大学4年生の某資格試験を受験する学生を対象に、今学期第一回の勉強法のワークショップを行いました。昨年度から取り組ませていただいているものです。 ワークショップで使用する物品を大学事務室に取りに行くと、事務方の「ちょっと偉い人」がやってきて、「やー!まーみさん! いやもうほんと、一時期は合格率下がって、どうなっちゃうんだと思ったけど、見事なV字回復ですよ!まーみさんのおかげですよ!今年もよろしくお願いしますね!」「いや。いやいやいや・・・」私は消え入りたくなりました。

実践に役立ちそうな論文を手に入れて、希望に満ちている←イマココ

【修士課程(研究)中の不安】 修士論文を書いている時、孤独と不安がずっと付き纏っていました。 自分の塾での指導中に湧き上がっていた、興味のある研究対象(このnoteに書いているようなこと)に、ダイレクトに結びつく「先行研究」がなかったからです。 先行研究がなさそうだ?というのは、大学院に入ってから初めてわかったことでした。 入学するまでは「研究環境に身を置いて、論文を検索すれば、先行研究をみつけられて、私はそれを学びつつ、それに何かを付け足すような研究をすれば良い」と、し