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(航空ニュース解説)オスプレイの事故について


ニュースの概要

11月29日に鹿児島県の屋久島沖で米軍の輸送機オスプレイが墜落してしまいました。

乗員は8人で、内7名は死亡、1人は行方不明となっています。(記事作成時点)

日本政府はオスプレイの飛行停止を米軍に要請していますが、アメリカ側は日本での運用を継続しています。

オスプレイってなに?

簡単にいうと「飛行機」と「ヘリコプター」を組み合わせた航空機です。

飛行機は高速で飛べますがホバリング(空中でその場に留まること)はできません。
逆にヘリコプターはホバリングはできて、救急、人命救助に活用できますが、高速飛行や大容量の搭載は飛行機に比べてできません。

オスプレイは
離着陸時やホバリング時はヘリコプターのように、
目的地に高速で飛行する時は「飛行機」のように
形態を変えることができます。

それぞれのいいとこ取りをした航空機
というわけですね。

ちなみに名前の由来ですが、
垂直に降下してエサをとる習性のある鳥のミサゴ(osprey)から採用しています。



登山や旅行向けのバックパックメーカーの「オスプレイ」も由来は同じです。バックパックのイラストだと馴染みがありますでしょうか?

出典:https://www.lostarrow.co.jp/store/c/c2010/?filtercode12=backpack

最近開発されたものなの?

オスプレイの歴史はそれなりにあります。
元になる案は1930年に考えられ、
1989年にオスプレイと名のつく機体の初飛行がなされました。

あと数年で100周年を迎えると結構な歴史があるとも言えますね。

事故と改良を繰り返して、現在は「CV-22」という型式のオスプレイが運用されています。

日本に配置されてる目的は?

配置に賛成、反対色々な意見がありますが、なるべく中立的立場で事実を説明していきます。
以下の説明は防衛省の公表データを元に作成しています。

目的1 日米同盟を物理的な形にする

日米同盟とはアメリカ合衆国と日本の間で結ばれた「協力して安全保障に取り組もう」という取り決めです。
大本は約60年前、1960年に定められています。
しかし同盟という言葉や書面だけでは、一般人や国民からは「本当に一生懸命取り組んでるの?」と疑問を持たれるかもしれませんね。

そこで国は
「日本にオスプレイや米軍を駐在させる」という形で、物理的に同盟を表現しています。

ではなぜ米軍やオスプレイを日本に駐在させることで安全保障の形になると言えるのでしょうか?


目的2 アジア太平洋エリアでの特殊作戦のために使用する

例えば他国が日本を攻撃してきたらアメリカは日本に軍事的支援や協力して防衛をしたりします。
(ただし、具体的な対応は事態の進展や状況によって異なります)

その際にオスプレイを使って迅速に特殊作戦を実施することができます。
例えば海兵隊や空軍や物資を運んだり・・というイメージです。

すぐに反撃されると思うと、他国も簡単に攻撃したくありませんよね。
その「簡単に攻撃したくない」と思わせることが戦争などの抑止力になるというわけですね。
オスプレイを配置してそういった対策やリアクションをより取りやすくすることが、意義(目的)のひとつと公表されています。

ちなみに運用、操縦を行なっているのは日本に駐在する米軍の海兵隊や空軍です。

目的3 軍事や防衛以外にも

他にも災害発生時などに人命救助、災害支援を行う目的もあります。
山奥で遭難している人を救助するのに適するのは、飛行機よりヘリコプターです。
離着陸に滑走路を必要としなかったり、ゆっくりホバリングできるからです。
そういった支援面でもオスプレイを活用するために配置していると公表しています。

ちなみに実績ですが、
・2013年のフィリピンでの台風に対する復興支援
・2015年のネパールの大地震に対する復興支援
・東日本大震災に対する復興支援

などがあります。
大規模災害時にも使用されている事実は、私も調べるまで知りませんでした。
こういったニュースの際はどうしても被害側の方が取り上げられて、裏方(復興に尽力している団体側)のニュースは注目されにくいですよね。


日本にはどこに何機くらいあるの?

23年12月で合計44機が配置されています。
内訳は
アメリカ空軍:6機
アメリカ海兵隊:24機
自衛隊:14機 です。

2024年を目処に4機追加配置が計画されています。

配備場所は
東京、横田:6機
千葉、木更津:14機(暫定)
沖縄、普天間:24機

出典:NHK

また配備場所と着陸空港や飛行ルートは別物です。
今回の事故は
米軍岩国基地(山口県)

米軍嘉手納基地(沖縄県)
に向かう訓練飛行中に発生しています。

米軍のオスプレイは日本を自由に飛び回れるの?

今回の事故を受けて最も関心を持つのはこの話題かもしれません。

日米地位協定という取り決めを抜粋、要約すると
米軍が公務執行中なら、基本的に日本の法律は適用されないということになっています。

つまり米軍が「これは公務だ」と主張すれば日本の法律は適用されないことになり、どこでも飛べます。

また規制しようとすると個別に取り決めを国同士でする必要があります。

そのため国は米軍や米国に対して要請することはできても、禁止はすることができないのです。

そのような背景があって
・横田基地周辺の協議会が要請を出したり
・基地のある木更津市が防衛省に要請したり
・国はアメリカに要請したり
というニュースが流れているわけです。

またアメリカ空軍は
「初期段階の調査で得られた情報は、機体そのものの問題が事故につながった可能性を示している」
「問題の原因については現時点ではわかっていない」
として世界中のすべてのオスプレイを飛行停止にしています。

偏見なく自分の意見を持つことが大切

ここまで読むと読者の皆様もなんとなくオスプレイ配置のメリットデメリットが浮かんできたのではないでしょうか?

ニュースや記事は賛成または反対に偏った内容が多く、読者の理解をミスリードさせるものが多いのが現状です。

オスプレイの配置に限らず、他のニュースについても言えますが、
世に出回っている記事に煽られず、メリットデメリットそれぞれを正しく理解した上で、自分の意見を持つことが大切なのかと思います。

今後もこのように航空業界に関するニュースを、なるべく事実ベースで解説していきたいと思います。


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