今でも大きく影響を与えている1995年公開の映画作品たち
1989年ベルリンの壁崩壊。
1991年ソ連崩壊。
ずっと続くかに見えた世界の形が変わり始めたころ、水面下で映画界も形を変え始めていたのでしょうか。
王道からアートエンタメへとでもう申しましょうか。
アート性の高いエンタメ映画作品たちが一気に噴出したのが1995年。
まさに1995年は映画当たり年であったかと。
私の独断と偏見もあるかと思いますが、2020年の現在に至るまでエンタメ界にどっしりと影響を与えた作品たちをご紹介したいと思います。
ちなみに日本国内の1995年はというと。
阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件。
そういった悲惨な出来事もあり、社会に深い影を意識させるご時世でした。
今では懐かしいノストラダムスの大予言もあり、暗いわけではないのですがなんとなく世紀末感が漂っていたふしもありました。
それでは1995年公開の作品を見ていきましょう。洋画の場合、日本では翌年公開となっている作品も多いです。
『セブン』
監督:デヴィッド=フィンチャー
この映画以降のサスペンス、ミステリーは順を追って犯人が仕掛けてくるパターンが定着し、暗くて見えるか見えないかぐらいの照明など今でも大きく影響を及ぼし続けている作品です。
『12モンキーズ』
監督:テリー=ギリアム
ドラマにもなりまして、今でもウイルスやテロについて深く考えさせられる作品です。強烈なキャラクターに挑んだブラッド=ピットはここでアカデミー賞チャンスがあったと思います(必見)。
『アンダーグラウンド』
監督:エミール=クストリッツァ
カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した怪作。ユーゴスラビア史を扱っていて、内戦も絡んでくる内容であるため人間と国家について深く考えさせるテーマなのですが、とにかく滑稽でファンキーな人たちが織りなす人生模様が悲しくも楽しく描かれています。ラストの観客に向かって直接語りかける展開はもはや伝説。
『ヒート』
監督:マイケル=マン
もちろんパチーノとデ・ニーロのマッチアップが売りの作品なのですが、チーム対チームの熱い戦いが描かれている作品なんですよね。また、ガンアクションやカメラワークに見られる映画的贅沢さが芳醇でして。これを見てからの『アイリッシュマン』という方が多いとは思いますが、『アイリッシュマン』を見てからのこちらも熱いですね。
『ユージュアル・サスペクツ』
監督:ブライアン=シンガー
謎の人物の扱い方、オチの作り方、容疑者を並べて写真を撮る構図など多大な影響を及ぼした作品。あまりに有名となったオチではあるもののシナリオライティングのお手本かもしれませんね。ジョジョ第5部ですとかたくさんの作品に影響を与えた作品ですね。そういった影響を受けている作品にもよいイメージを持てるというか。もはやユージュアル・サスぺクツメソッド!
『デスペラード』
監督: ロバート・ロドリゲス
『エル・マリアッチ』に続いて予算大幅アップでロバート=ロドリゲス監督の大きな街道が開けた作品。ガンアクションは自由で映画的なものでいいのだ、と割り切った感の痛快さたるや。ポップコーン食べながら楽しくどうぞ。ちなみにロドリゲス監督が開いた街道はロドリゲス監督専用の街道な気がします。
『ブレイブハート』
監督:メル=ギブソン
それまでの歴史もののイメージを痛快にぶち壊したヴァイオレンスアクション大作。それでもって1996年の第68回アカデミー賞においてアカデミー作品賞、アカデミー監督賞、アカデミー音響効果賞、アカデミーメイクアップ賞、アカデミー撮影賞の5部門を受賞しちゃうのが格好良すぎました。『ゲームオブスローンズ』の戦闘シーンなどを見ていても本作を思い出す時があります。戦の前の演説がばしっと決まっていて、あの演説は映画史の中でも秀逸なのでは。
『クリムゾンタイド』
監督:トニー=スコット
弾道ミサイル原子力潜水艦を舞台にした作品なのですが、照明といい艦内の撮り方といい今思えばスタイリッシュの塊のような贅沢品に仕上がっています。政治でもよく目にする「どちらも間違っているわけじゃないんだけど」な議論バトルが観客をも巻き込んでくるような錯覚を覚えました。ちなみにタランティーノが脚本のリライトを行っています。
『アポロ13』
監督:ロン=ハワード
月面着陸を目指していたものの度重なる故障と不具合により、「生きて帰る」こと自体が目標に変わった史実を基にした作品。思い通りにいかない中でどう立ち回るか、どうふるまうか。リスクや失敗に向き合う時、人間って格好いいなと思える作品。地上クルーがまたいいんですよね。この作品が宇宙系コンテンツに与えた影響は大きいですね。
『アウトブレイク』
監督: ウォルフガング・ペーターゼン
25年前の作品ですが、ウイルスへの警告的な作品といえばこちらですね。この作品の中では架空のウイルスだったのですが、感染する恐怖が強く印象付けられたのを覚えています。ゾンビ映画でも感染ものが増えていくわけですがそういった感染する恐怖と戦うストーリー構造のお手本のようになった作品でもあります。
『トイ・ストーリー』
監督:ジョン=ラセター
25年前からずっと人気ですよね。当時はまった子供はもう立派な大人になっているという。玩具ビジネスとの組み合わせ方といい物語のテーマといい優等生タイプの映画でしょうね。
『ウォーターワールド』
監督:ケヴィン・レイノルズ
あえてチョイス。といいますのも当時、だいぶ評判が悪かったんですよ。前半がめちゃめちゃ面白いのに中盤からだらけてくる、と。予算の使いすぎも報じられてなんだか負のイメージがついちゃったんです。しかし、何周かまわってこの映画、類まれなるオンリーワンな存在感が熱いんですよ。前半に後先考えずにテンションあげちゃうアート性。後半は海のまっただなかに放り出されたような放浪感たるやなんとも味わい深い。当時見限った方もぜひ再挑戦いただくと発見があるかと思われます。
『ストレンジ・デイズ/1999年12月31日』
監督:キャスリン・ビグロー
実は個人的なイチオシです。ヘッドセットを付けるとVRみたいに他人の記憶を体験できるという設定のSFなのですが、大きな陰謀などと戦うのではなく、とっても個人的な話としてすすんでいきます。まぁ、男が弱い。なさそうでどこかにありそうなスクラップな世界観がたまらない作品です。この映画のジュリエット=ルイスはめちゃめちゃ格好いいですよ。
ここから邦画へ。
邦画も1995年はすこぶる熱いんです。
『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』
監督:押井守
当時、ジャパニメーションとなっていたのも懐かしい。今でもシリーズが続き日本のミステリー系SFアニメをけん引し続ける神コンテンツが誕生した年でした。原作からのアレンジ感、音楽、哲学、構図、声優の芝居にいたるまでいまだこのブームとトレンドが尽きるイメージがないです。この作品と『AKIRA』について海外の方と話すとき、誇らしい気持ちになる自分がいます(自分はなにも関係ないのに)。
『MEMORIES』
監督: 大友克洋、森本晃司、岡村天斎
もうこの予告編の時点で神がかっているのですが、3つのストーリーからなるオムニバス作品です。ここからとんでもない人材が育っていったわけですが、第1話目の脚本に「今敏」と名前が入っていることがじんわりときますね。
『ガメラ 大怪獣空中決戦』
監督:金子修介
金子監督による平成ガメラ三部作の偉業はここから始まりました。キネマ旬報ベストテンに怪獣映画として史上初めて選ばれた作品でジャンルのイメージをがらりと変えた革命的な作品。リアリティの追及によって、子供向けジャンルを離れ、大人も楽しむ社会派に仕上がっていたわけで。
『耳をすませば』
監督:近藤喜文
ナウシカやラピュタ、トトロとジブリマインドをすっかり浸透させた観客たちに「あっ、こういうジャンルもジブリから出てくるんだ」と意表をつき、ピュアな気持ちになって映画館を後にした作品。感性をひろげてくれる効果がある作品でしたね。ラストの台詞についてはずかしい議論をしたのを痛烈に覚えています。実写化するんですねぇ。
『Love Letter』
監督:岩井俊二
数々の賞を獲得した強烈なタイトルです。役者が空をあおいだりたたずんでいる台詞のないシーンで観客をぐぐぐっと引き込む手法といいますか。岩井監督ワールドここにありな秀逸な作品。話のつなぎ合わせがおしゃれで面白いんですよね。そういえば見た後、なんとなく風邪薬を買っちゃいそうな内容ですね。
まだまだ”1995年映画当たり年”を立証する作品はあると思います。
当時、10代だった方は今や30代、20代だった方は40代、30代だった方は50代なんですね。
「12モンキーズ」や「耳をすませば」など当時に衝撃を受けた人たちが大人になってアンサーとして企画を立てているのかもしれませんね。その場合、企画を聞く側も想像しやすいというメリットがあります。ぜひ再び「ウォーターワールド」のリメイクに挑戦する猛者が現れることを願っております。
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