《自作詩》サイレン
サイレンが聞こえる
家の前を通る
大晦日の日
自分じゃないことに安心する
自分の周りの人じゃないことに安堵する
嫌な奴になったのか
全人類の幸福を願うほど
素晴らしい人間にはなれない
それでも願わずにはいられない
どうか皆、良いお年を迎えられますように
サイレンが聞こえる
テレビやスマートフォンから
遠くで災害が起こった
恐ろしい光景
見たくなくてテレビを消した
そして思う
自分に関係なくて良かった
ああなんて嫌な奴
私は悪い大人になった
嫌な部分を見せたくなくて
せめて良い子ぶっていたくて
ひどいことを思ってごめんなさいと許しを請いながら
募金箱にお金をいれる
サイレンが聞こえる
近いんじゃない?
誰かが窓を眺めながら呟く
私もちらりと窓を見た
サイレンは近くで鳴っている
2種類以上のサイレン
何かが近くで起こっている
それでも私は知ろうとせず
安全であろう職場で仕事をしている
17時
懐かしい音楽が子どもたちを家へと連れて行く
さっきまでウーウーと喚いていた音は消えた
静かに音楽が流れる
なあ子どもだけじゃなく全部連れ去ってくれよ
綺麗な音に浸っていたいよ
そしたら言葉が生まれてさ
最高の詩を作れるかもしれない
サイレンが聞こえる
私はその時生まれた言葉を忘れる
安全な職場で仕事をしている
サイレンは聞こえない
頭の中でうだうだと言葉を練る
時計の音が響く
言葉は下らない
言葉は無力
自然の力に人間は勝てない
思いがけないトラブル
突然の災難に人間は順応できない
傷ついた人を救うのは何だろう
それがもしも言葉なら
無力なのは言葉ではなく私なのか
やはり嫌な奴になってしまった
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