《自作詩》人あらざるもの

1『バケモン』

おい見ろよ
ありゃ何だ
詩人だよ
詩人だって?
書くのをやめた詩人さね
そりゃ詩人って言わねえんじゃねえかい?
ペンを置いても詩人気取りさ
救いがねえな
全くだ
言葉を忘れちまったのかい
枯れちまったんじゃないのかねえ
なんせペンを置いたから
置いちまったら書けねえさ
言葉を忘れて文字も忘れて
おーおーありゃあ見苦しい
うめき声ばかり上げてらあ
自分だけは詩人気取りかよ
ただのバケモンだってのに


2〘機械〙

機械は知っている
この老婆はいずれ死ぬことを
機械を置いていくのだと
機械は知らない
死ぬとはどういうことなのか
置いていかれたらどうすればいいか
機械は知っている
人には感情があることを
死ぬことは悲しいことだと
機械は知らない
涙がどういうものなのか
悲しいとはどのような感情か
機械は知っている
この老婆は機械を愛していることを
この老婆は機械にたくさんのことを教えてくれたのだ
機械は知らない
愛を知らない
まだまだ知らないことがたくさんある
知らない
知らない
だから教えて
死なないで


3❝天使❞

私は天使
元天使の方が正確ね
天界を追放されちゃって
羽根もなければ天輪もない
でも魔法で大抵のことは出来るから
魔法使いでも良いわね
人間に私のことは見えないから
人でないことは確かよ
私は天使じゃなくなって
人でもなくって
それでもこの子の傍に
この子だけは守り抜くわ
最初は失敗してしまった
とてもつらい思いをさせてしまった
本当に本当に良い子なのに
それなのに地獄行きですって!?
駄目駄目駄目駄目!
なんて酷い世界なの!?
自分が天使じゃなくなってでも止めるわ絶対

そんなことはもう随分昔の話
それからずっとこの子の傍に
この子は私が見えないけれど
ふよふよぷかぷかてくてくと
この子の魂とともに
色んな世界を見てきたわ
それだけで満足

この世界は酷い世界ね!
また貴方が大怪我をしている
私は何も出来なくて
ふよふよおろおろ
どうか死なないで
「あんた、幽霊かいな。」
え?
「幽霊見えるっつーこっちゃ、俺は死ぬんか。それとも死んどんのか。」
「違う違う!死んでない!死なないで!」
「……えらい優しい幽霊さんやなあ」

なんてこと!
この世界のこの子は
一命をとりとめた後
私のことが見えるらしい
話すことだって出来るの
「俺には守護天使さんがついとるんやなあ」
元、だけどね!



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