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半分だけおねだり

2022年8月21日11時加筆
靳シリーズ「ラブレターの透視」では執筆に際して縛りを設けることにしました。それは「好き」「愛」という言葉を一切使わないことです。第二回目をそのように書き直しました。


あなたは自慢の彼氏。女友達みんなが羨ましがってくれる。デートではいつも素敵な場所に連れて行ってくれるし、おいしいご飯を食べさせてくれるし、服とかもイヤな顔せずいろいろ買ってくれる。笑顔も絶やさないし、おしゃべりも楽しいし、歩き疲れたらこまめに休ませてくれる。目配りもちゃんとしてくれてる。

完璧な「結果」を残し続けてくれる。

なのにわたしは不満とまではいかないけれどうっすらさみしい気持ちを抱えてしまう。どうしてなのかな。あなたが尽くしてくれているのは分かっているのに。毎回お金にも余裕を持ってデートを組んでくれているのに。

ごめんなさいの気持ちが先立ってしまって、わたしは自分の本心が見えにくくなってしまっているみたい。もうちょっと落ち着いて考えてみる。

なんだろう……?

触れられたときになんとなく「冷たい」感じがしてしまうような気がする。手だけではなくて眼差しや言葉にも。もちろん「優しい」のだけれど、そこに差す影みたいなものがあってひんやりとする。

うん、わたしはそんなに贅沢は望んでいないんだ。定番でキラキラしたデートスポットでなくても近所のよくあるショッピングモールでお手頃なランチを一緒に食べるだけでもあなたといられたら楽しいんだ。

もしかしたら仕事と同じようにわたしとの交際についてあなたは考えているのかもしれない。高い労力を払って高い成果という「結果」を最後に残すということを最優先にしているような。それがきっとあなたなりのベストなやり方なんだろうね。

公認会計士のあなたは常駐先の大手企業でも若手ながら頼りにされているみたい。年度末や忙しい時は少しだけグチのようなものをあっさりと話してはくれる。わたしは仕事のことはよくわからないからちゃんと聞けているのかなと不安になる。たぶんそういうのも顔に出ていて、あなたはグチを早めに切り上げてしまう。そうした気遣いも実はちょっとさみしかったりする。

わたしはどんなふうに扱われたいのだろう?

たとえ安上がりだったとしても、はたから見て地味で大したことがなかったとしても気にならないのは本当。あなたが誠実で優しいのは分かっているから、それをそのままわたしに触れさせてほしい。たとえばもっと瞳を見つめ合う時間を増やしたいし、ベッドを共にするまではいかないスキンシップみたいな小さなこともお互いに重ね合えたらいいな。

真面目なあなたはどうしても、わたしを大切に思うからこそ「結果」を重視するのは理解しているつもり。だからこうしたわたしのわがままを完全に分かってもらうのは難しいと思う。

だけど、半分くらいの確率だったら「当たる」かもしれない。今度のデートではわたしから指を絡めて手をつないでみようかな。こうされるのも嬉しいってことを少しずつでもあなたに伝えてみる。

お金では買えないこういうことも「おねだり」っていうのかもしれないね。