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ジェットコースターはダメよ

生徒会室に向かう道すがら紺野は廊下で彼女を遊園地に誘った。

「……お断りします。私、ずっと我慢してきたんです。温水プールのウォータースライダーですら吐き気がするのに何でジェットコースターに乗っているんだって。これからはルカくんか不二山くんと乗ってきてください。二人には私からお願いしておきます。」

何故?だって君はいつも笑顔だった。いや、とにかく深刻なのは理解した。僕はどちらかを選ぶしかない。

「ちょっと待って。」思わず彼は歩き出す彼女へ腕を伸ばした。
「……本当に申し訳ないことをしてきた。」青ざめて頭を下げた。抵抗が少ない乗り物はなんだっただろうか。
「そ、そうだ…観覧車に乗ろう。」泣きそうだった彼女は僅かに微笑んだ。彼は安堵と共に息を呑んだ。
「……つっ……言いにくいことを打ち明けてくれてありがとう。」

ここは学校の廊下だ。しかも生徒会室前である。生徒会長は同じ執行部員の彼女を抱きしめたくなる気持ちを抑え込んだ。