道鏡を肯定する? 喜田貞吉『日本歴史物語』における「日本民族」観と皇位窺窬者の間接的肯定
昨今、放置に放置された皇位継承問題がようやく危機感をもって議論されるようになり、「女系天皇は易姓革命だ」「いや、臣籍にある皇裔が即位することこそが王朝交代だ」などという主張を目にする機会が増えた。それらの議論に立ち入るのは、本記事の目的ではない。ある戦前の歴史学者の歴史叙述が、たまたまこの問題に結びつく(無理やり結び付けられる)ため、その議論を紹介したい。
はじめに 日本の歴史上、臣下の身でありながら、皇位を窺ったり、新皇を自称する不届き者が現れたのは周知の通りである。そ