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イスラエルでの一日。

「イスラエル」と聞いて皆さん何を思い浮かべるだろうか?

軍事国?ユダヤ?パレスチナ問題?はたまた美人大量輸出国?

一番最後なんか引かれる議題ではあるけれど、ぼくはただただ世界史的な興味を抱いてこの国に赴いたのだ。つまりはユダヤ教のメッカである「嘆きの壁」を見るために。

イスラエルに入って一番最初に気づくことは、非常に洗練されているということだ。どこもかしこも西洋と言っても通じるばかりか東側に比べるとかなりまとまな印象を受ける。道路にはつやつやのトラムが走り、歩道には日本にいれば確実にスカウトが飛び込むであろう美男美女がベンチに腰を下ろして談笑している。

そして超正統派ユダヤ教。上下完全なるスーツに頭にはシルクハット。頬には気弱なイワシほどあるもみあげ垂らして、横断歩道の前、青になるのを行儀よく待っている。

外国人の目には、日本のサラリーマンもこんな風に見えるのだろうかと思いつつ、目的の嘆きの壁が控える旧市街に脚を踏み入れる。

やっぱり世界的に有名な土地なのだろう。薄いバックパックを背負った半袖西欧人ら何千人がなみなみ路上を満たしている。西欧人9割に、アジア勢1割。たぶんここにはよほどの意欲と、数か月は生活に困らないほどには貯蓄のある人しかこれないのだ。そんな中にも本物の市井の人もいて、観光客たちの喧噪などいざ知らず、てくてくと目的の壁へと進んで行く。そこ専用のシャンプーでもしているんじゃないかと疑いたくなる貴重なもみあげを縦に揺らして小道を何食わぬ顔で突き進んでいく。

そしてこの日は日曜。いつもこうなのかは知れないがみんながみんな何かしらを念頭に着飾っている。大人は何もしなくても絵になる格好だが、子供たちも皆着飾っている。ほっぺに線を描いた簡単なものから、着ぐるみをすっぽりとかぶった本格的なものまで、めいめいが装いを凝らしている。

そういうものを見ただけでなんだか嬉しくなってしまうのはぼくだけだろうか。ぼくはただ彼らの日常を垣間見ているだけだけど、その一部に爪先が触れただけで、何かをおすそ分けしてもらった気さえしてしまうのだ。そしてそのおすそ分けは年初めの雪よりも柔らかく心の奥底に降り積もっていくように感じるのである。

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