大人になろうぜ、大人のオレたち!
新聞報道によると、フランクフルトでは2019年に4年生から5年生に進学した約5,900人のうち、約530人が志望校に入れなかったそうです。その場合、別の学校が指定されるのですが、指定先が気に入らない場合は、志望校のウェイティングリストに載せてもらうことが可能です。もしくは、異議申し立てをすることができますが、勝てる見込みは低いとか。
第一・第二志望として最も多かったのは、ギムナジウムだったようです。
希望が叶わなかった親は、そこからが大変です。第一・第二志望のギムナジウムに入れない場合に備えて、第三の選択として『家から近い学校』を選択した人は、指定された学校が家から確かに近いものの、望んでいた学校種(ギムナジウム)とは違うことに憤慨。逆に、あくまで第一・第二志望と同じ学校種(ギムナジウム)であることにこだわった人は、第三の選択としてギムナジウムを指定されたものの、その学校が家から1時間も離れていることに不満爆発。
「ギムナジウムだったらよかったのに」、「ギムナジウムではあるけど、こんなに遠いんじゃ」・・・不満のすべてはギムナジウムを中心に展開していると言っても過言ではありません。
思えば、30年前も、ギムナジウム一辺倒の傾向はありました。親は「将来のことを考えれば考えるほど、ギムナジウム以外の選択肢はない」という主張を貫き、子どもたちの間でさえも、「オレたちはギムナジウムだけど、アイツは違うらしいぜ」という蔑視的な捉え方が散見されました。
さらに、ドイツに住む日本人に関しては、次のような神話があります:ドイツを含む外国に進出する日系企業はいわゆる『一流企業』であり、外国に派遣される社員は選び抜かれた『エリート』。『一流企業』の『エリート』を親として持つ子どもは、自身が置かれた環境が手伝って『優等生』に育つ。その『優等生』が、ドイツ中等・高等教育の最高峰であるギムナジウムに進学することは、あってしかるべき・・・仮に親が駐在員でなかったとしても、日本人である以上は同様に考える、もしくはこのような神話に翻弄されているのが現実なのではないでしょうか。
しかし、です。「ギムナジウムとしても、志望する全生徒を受け入れたいが、それを可能とするための財源を確保できない」、「ギムナジウム以外の学校種の拡充を優先する」等、あくまで行政上の理由によって、生徒が志望するギムナジウムに入れないのも確かです。子どもが優等生だろうが何だろうが、志望するギムナジウムに入れないことも、もはや当たり前の時代なのです。
そのような状況を踏まえ、例えば総合学校(Gesamtschule)でギムナジウムと同等の教育方針をとり、生徒にアビトゥアをとらせる環境を今まで以上に整備するなど、ギムナジウム一辺倒という状況からの脱却を図っているのが、今のドイツであるといえます。
第一・第二志望校に入れなかったとしても、仲のいい友達と同じ学校に通えるなど、ちょっとしたサプライズで気持ちをすぐにリセットできる子どもたち。進学先を考える上で、冷静さを保つべきは、実はわれわれ大人なのかもしれませんね。
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