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「ダイバーシティ」について考える

「ダイバーシティ」は、職務内容や求められる資質を明確にした上で、それに合う人材を配置すること、つまり、「適所適材」が原理原則であると考えます。この、いわゆる「タスク型のダイバーシティ」においては、人材配置を考える上で性別や国籍などを判断基準にすべきではありません。なので、「男女比を再考しよう」だとか「外国人従業員をもっと増やそう」などといった、性別や国籍に基づく議論は、本来起こり得ないのです。

一方で、自分とは異なる人間がどのような立場に置かれているのかを理解する必要があるのも確かです。そこで、今回はこちらの小説をご紹介したいと思います:

『三つ編み』
レティシア・コロンバニ著
早川書房

インドで不可触民として生まれ、上位カーストの排泄物を処理することを生活の糧とするスミタ。交通事故で昏睡状態に陥った父に代わって、経営不振に陥った毛髪加工工場の立て直しを任されるイタリア人のジュリア。カナダにおける有能な弁護士で、会社のトップまであともう一歩というところで乳癌の告知を受けるサラ。

小説では、異なる世界で生きる3人の女性の人生が、「三つ編み」を通じて交錯していく中で、彼女たちが偏見や差別に負けることなく、自分の意志を貫く勇気を取り戻していく様子が、力強く描かれています。それと同時に、性別や国籍、社会的地位などに起因する偏見や差別がはびこっている現状を、改めて痛感させられます。

「三つ編み」を読んで僕は、いくら適所適材とはいえ、性別や国籍などをまったく無視するのではなく、個々の状況を十分考慮した上でのタスク型ダイバーシティが理想であり、それを実現させることが我々に与えられた課題なのだと考えた次第です。

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