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【コラム】PISAショックで目覚めたドイツ

『PISAショック』という表現を聞いたことはありますでしょうか?文字通り、ドイツの教育業界においてはとてもショッキングな出来事でした。とはいえ、この『PISAショック』がなければ、ドイツにおけるその後の教育改革も起きなかったと言っても過言ではありません。

事の発端となったPISAとは『Programme for International Student Assessment』の略で、経済協力開発機構(OECD)が主導する国際的な学習到達度調査のことを指します。PISA調査は、OECD(非)加盟国における15歳の生徒を対象とした、①科学的能力、②読解力、③数学的能力を調査することを目的としています。当調査の特徴は、生徒の知識の量を問うのではなく、知っている知識を活用する力(問題解決力)を問う問題で構成されている点です。第一回調査は2000年に行われ、以後3年ごとに実施されています。ドイツでは、OECDの委任を受けた常習各州文部大臣会議(Kultusministerkonferenz, KMK)が運営を担っています。

PISA調査の対象となる学校及び生徒は、各国の教育制度や学校の種類を考慮した上で、無作為抽出法に基づいて選定されます。2015年を例に挙げると、計72か国における約53万人の15歳児が参加しました。ドイツでは253校が選定され、試験者数は6,504人でした。

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以上がPISA調査の概要ですが、初回(2000年)においては、ドイツは全分野において成績がOECDの平均を下回る結果となりました。これが『PISAショック』と呼ばれる所以です。この結果から、以下の問題が顕在化しました:

・ドイツ教育の質が高くないこと
・州間の格差が大きいこと
・成績の分散が大きいこと(学力中位層が少なく、低学力層が多い)
・成績に社会格差(経済的に不利な立場にある家庭、一人親で一人っ子、移民の背景を持つ子ども等)が影響していること

そこで、よりよい教育の機会を提供し、教育の機会均等を推進することによって、全体の底上げが図られるようになったのです。

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