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Wegscheideでの共同生活

僕が通っていたギムナジウムでは7年生になると、全クラスがWegscheide(ヴィークシャイデ)で一週間の共同生活を送るのが、学校行事の一環となっていました。

Wegscheideとは、フランクフルトから車で約1時間離れた小さな町、Bad Orbの郊外にある、35ヘクタール(サッカー場およそ50面分)の広さを誇る学校田園寮(Schullandheim)です。もともとは軍事施設として設立されましたが、1920年代に入ると、フランクフルトの学校に在籍する生徒を対象とした教育施設として使用されるように。大戦中、捕虜収容所やドイツ人追放者の避難所など、その用途を変えた施設は、戦後は再び子供たちの教育目的に使用されるようになりました。現在、Wegscheideはフランクフルトの学校のみならず、ドイツ全国の学校に対して門戸を開いています。

一週間にわたる合宿においては、各クラスに一つの宿舎が割り当てられ、基本的にはクラス別に活動します。一日の流れですが、午前中は授業が行われました。僕がいたクラスでは、同行した担任・副担任の担当教科である英語と数学を学びました。『授業』とはいえ、内容は普段の学校でのそれとは違って、グループワークなどの遊び的要素が強かったと記憶しています。午後はサッカーのクラス対抗試合や森散策、オリエンテーリングなどの課外活動を実施し、夕食後は、全7学年でディスコや肝だめしを開催したりしました。

ユースホステルでの合宿などと違って、Wegscheideでは宿舎の掃除や食事のピックアップなどについて、基本的に生徒達が責任を負います。全生徒がすべての作業を担当するように役割分担がなされたと記憶しています。

6年生から7年生に進学する際にクラス替えが行われたほか、他の学校からの転入生もいたため、特に7年生の前期には生徒の間でぎごちなさがまだ残っていました。そうした中、Wegscheideでの共同生活は、僕たちの間に立ちはだかる壁を取っ払うまたとない機会でした。

一週間も生活を共にすれば、嫌でもお互いの距離が縮むものです。今まであまり接したことのない生徒を「コイツ、喋ってみると意外と面白いじゃん」と見直したり、もともと仲のよかった友達と仲がよすぎてケンカしたり、ちょっとした恋愛事もあったり・・・Wegscheideを通じて、僕たちは青春の第一歩を歩み始めたといっても過言ではないかもしれません。

また、僕にとってWegscheideは、個人的に大きな影響をもたらしました。ギムナジウムに馴染むのに時間がかかっただけに、そこでの共同生活は、「自分の居場所があるんだ」ということを僕に改めて気づかせてくれたのです。

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