見出し画像

「風の谷のルルー」全7巻+α その2

 この「その2」では、「風の谷のルルー」シリーズの第5巻から最後の第7巻までを紹介します。さらにその後で、後に村山先生が書かれた「その本の物語」上下巻を紹介します。

「風の丘のルルー⑤ 魔女のルルーと赤い星の杖」

 きびしい冬が風の丘やってきて、退屈なルルー。そこで、ちょっとお休みをとることにして、水晶の街まで遠出をしてお祭りを見てくることにしました。彼女が人々を癒やしてくれる魔女とは知られていないので、ルルーは普通の少女として振る舞います。でも、千年前にルルーリアらによって封印された、世界を凍られる死の龍が復活しようとしていることを知ることに。そこで、その強大な龍を再び封印しようと決意し、魔法使いの少年カイオンと共に「赤い星の杖」を使って文字通り死力を尽くします。彼女は、自分の生き方を自覚して、一歩一歩進んでいきます。

「魔女のルルー⑥ 魔女のルルーと魔法使いの塔」

 風の丘にルルーが住んでから、もう20年がたちました。魔女への偏見が減ったのは、魔法の薬で人々の病を癒やしてきた彼女の行いによるところも大きかったのです。
 そのルルーが病を治しに行った帰りのことです。だれかの歌声とともに、ぼんやりと古い屋敷が見えてきて、そこでルルーはある出会いをします。更に、滅びた国にある「魔法使いの塔」などでの出会いが続きます。怖がられてしまっている優しい存在。同じ魔法使いなのに心根が真逆の二人。彼らに対して、ルルーはどのように振る舞うのでしょうか。

「風の丘のルルー⑦ 魔女のルルーと楽園の島」

 更に10年がたちました。科学も発達して、動力で降海する大きな船も造られるようになりました。そんな大型客船で旅に出たルルーは、不思議な手紙で呼ばれた人達と一緒に、更に小船で人魚の呪いが船を沈めるという「人魚の海」海を、ある島目指して進みます。嵐に巻き込まれても、何とか島に流れ着いたルルー達。そこでの時を超えた願いと、それによる出会いをルルーは目の当たりにします。幸せを祈る心、一人一人のその力は小さくても、それは限りなく広がっていきます。

「その本の物語」について

 「風の谷のルルー」は、全7巻で2004年に終了しました。ただ、ルルーの物語はまだまだ続いていくようでした。すると10年後の2014年、「その本の物語」(上下巻)が出版されました。これは、とても素敵なアイデアによる「風の丘のルルー」の総集編であり、ルルーの物語のまとめをしてくれるものでした。

「その本の物語」 上

 南波の親友、沙綾はあることがもとで昏睡状態が続いていました。でも、一縷の望みを信じて、南波は2人が大好きだった児童文学「風の谷のルルー」シリーズを、沙綾が横たわるベッドの脇で読み聞かせをしていきます。つまりこの上巻では、彼女が読み聞かせをした第1話「魔女の友だちになりませんか?」と第3話「魔女のルルーと時の魔法」がそのまま収録されてされているのです。こんな総集編、見た事がありません。南波と沙綾の事が描かれる幕間劇で、ふたりはルルーの話にだんだんとシンクロしていきます。

「その本の物語」 下

 上巻に続いて、南波が読み聞かせしていく第4話「魔女のルルーと風の少女」と第5話「魔女のルルーと赤い星の杖」がそのまま収録されています。幕間劇では、沙綾と「風の丘のルルー」シリーズとの関わりが、少しずつで見えてきます。そして、南波がずっとずっと続けてきたルルーの物語の「読み聞かせ」の声は、願いが込った呪文にまで昇華していき、2つの物語に架け橋を渡します。そしてわかる、「この物語」と「ルルーの物語」の関係。このふたつの二つの物語は共に大団円を迎えます。ルルーのその後も、これからも。それが、この下巻の装画で示されています。
 このような形で「風の丘のルルー」の物語を再び体験し、更に彼女のその後のことまでわかるとは。作者の村山早紀先生に感謝の想いしかありません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?