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“CREATURES” 出演アーティスト紹介 (2): Tha HEALs

大谷貴広(g/vo),タナダリュウ(b/vo),田川マサカズ(ds/vo)の3人組である。シンプルな3ピース。シンプルな楽曲。60-70年代のオールドロックの香り。だが、彼らの魅力はそこではない。

それは「艶」だ。俺は、彼らの演奏を生で観て、いい女に目が行くのと全く同じ意味で、うっとりした。普通、いい歳の野郎3人がバンドをやったら、「男臭い」とか、「豪速球」とかになる。だが彼らはそうならない。松田優作。風吹ジュン。そんな、昭和の性を上品に匂わす佇まいが蘇る。だが、彼らは決してレトロに陥ってはいない。誠に不思議な、珍しいバンドである。昭和の佇まいと現在性の同居。なぜか。


それは彼らが卓越した技術の持ち主だからである。

ベースのタナダのフレーズとその切り方(専門用語でデュレーションという)は、セクシーという形容以外、見当たらない。田川のドラムのシンプルとスネアのタイミングは、奥ゆかしくて、慎ましい。それでいてドライブ感がたまらない。2人に乗っかる大谷のギターは、フレーズにしろ弾き方にしろ、奔放だ。そんな3人のアンサンブルは、時に凛々しく、時にヌメっと、時にしなだれかかるように。色気という以外、なんの形容があろう?俺は3人とも面識があるが、皆ひじょーに真面目で誠実な方で、エロなんてカケラも感じない(いや、カケラは感じるか(笑)つまり、技術がセクシーを醸し出しているのだ。

恐らく、吉田栄作辺りから、日本の芸能から性の香りが消えた。歌謡界は軒並み、男も女も、カワイイかカッコイイに集約されている。そのかわり、そのカワイイだかカッコイイだかが歌ったり演じたりするのは(是枝裕和と北野武を除いて)軒並み、道徳的スローガンである。無味乾燥なことこの上ない。恐らくこれは、一連の言葉狩りと軌を一にしている。

これは、日本のイデオロギーのせいでもあろうが、なんのことはない、カワイイやカッコイイが、性を演じたり歌ったりする技術を持っていないだけだ。

いけないいけない。話が逸れた。ともあれTha HEALsの、さらりと見せる本物の技術、職人の艶は、森の奥にこそふさわしい。分け入った先に、木々の間から、日本の芸能が失った最も大切な物を、覗き見してほしい。Tha HEALsは、そんなバンドである。

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