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デス・レター(3rdアルバム制作日誌)


ここのところ、(音楽のことであっても)俺からちょいと離れた事象についてばっかり書いていた。であるからここで、俺自身の身近なことを書いてみたい。とはいえ、これがひょんな拍子に世の中と繋がることがあるかもしれないけれど。

題にあるように、現在3rdアルバム制作が大詰めである。是非、多くの人々に聴いてもらいたい。「これが作りたかった」と思える出来になっていると思う。3代目ドラマーのkumeがパーマネントメンバーとなって初の作品であり、これが本作の大きな特徴になっている。彼女の、重く揺らぐドラムが存分に堪能できるからだ。貢献は計り知れない。

もうひとつの特徴は、アコースティックの大幅導入である。俺は、元はと言えば、Skip JamesやR.L.Burnsideのような土臭いブルースを聴いてきた。だから、この成り行きは当然、むしろ導入が遅すぎたとも言えるが、まあそこは商売戦略上致し方なかった。いまここでアコギを炸裂させてもまあよかろう。Icing on a cake と海の向こうではよく言うが、ゲストに色を飾ってもらった。Hodieという2ピースバンドのギタリスト兼ヴォーカリスト、Mami Moriguchiである。彼女の貢献もまた大きい。憂を湛えながらも、決然とした彼女の声に、慄きつつ泣いてもらいたい。

録音関係は全て、知る人ぞ知るカフェオレーベルの原さんにお願いした。1stからずっとのお付き合いである。彼は言う。「今回は前回と違ったミックスにしてみました」どう言う違いかは言わぬが、現状維持は退歩と同じ、と、お互い思っているのでこれは大歓迎だ。その上でまたもや、俺の拙い曲に魔法をかけ続けている。彼の貢献もまた、計り知れない。

ツイッター界隈ではAIによる大衆芸術作品制作が、驚きと慄きを持って紹介されている。であるから、俺たちについても「→風に、Kume風ドラム、原さん風音処理、Mami風の声を入れてBPMなんちゃらの…」と入力したら、俺たちと見紛うロックができるのか?と言われれば、否である。なぜなら、このプロジェクトに関わったすべての人が、録音で起こった間違いやハプニングを、全て是認し、それを完成形としているからだ。それは一回性のものであり、あるものについては、再現不可能である。また俺たちも、再現しようと思っていない。AIは偶然を掌握できない。なぜなら、AIを作った人間が持つ思想(即ち現存する思想全て)は、偶然を取り込み、制度化できていないからだ。打ち込みの音楽はいずれAIに負ける。ポップミュージックも負ける。自曲の完成形を想定している限り、つまり、曲が体系的である限りそれは負けるのだ。

と言うわけで我々→は、AIを軽々と撃破するわけだが、もとより目標をそこに想定してはいない。俺はかねがね言ってきた。「そんならストーンズに勝てるのか?」と。俺たちアーティストは、作品を世に出す瞬間に、世界中の優れたアーティストの作品の大海に船を出すのである。「いや、日本には日本の音楽がある」と、捕食者に睨まれてヒュルルルと貝の中に閉じこもるヤドカリが、J-ROCKなのである。俺たちは、だから、これが嫌いだ。勝負の相手はズバリ、Led Zepoelin Ⅲ。当然、負ける。負けるが、勝負した、という事実(というか気概)は、デカい。尤も、勝負するとわざわざ言わなければならないほど、日本で音楽を作る事は煩わしいのだが(ARCTIC MONKEYSの最新作には、勝ったな)

タイトルは、
BROUGHT BACK WITHOUT SOUVENIRS。「土産なしの帰還」とでも訳せられるか。全13曲。爆笑必至のアートワークである。すぐに見分けもつこう。全国のレコード店、インターネットおよびNARROW GAUGE RECORDSで発売予定である。

以後、発売にあたっては、NARROW GAUGE RECORDSの頭目であり、感動の夫婦バンド、tableの中村夫妻にご厄介になる。また、シングルカット2曲をほぼ同時にPV発表する。ディレクターのミケラ/リョーヘー両氏にも多大な尽力をいただいている。
→もまた、多くの善き人々によって支えられているのである。

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