『薔薇物語』を読む。(第三回)
Où vintiesme an de mon aage,
Où point qu'Amors prend le paage
Des jones gens, couchiez estoie
Une nuit, si cum je souloie,
Et me dormoie moult forment,
Si vi ung songe en mon dormant,
Qui moult fut biax, et moult me plot.
私が二十歳の頃——アムールが若者たちに通行税を課すころである——私は、ある夜、いつものように眠りについたのであるが、とても深い眠りについているところ、私は眠りの中である夢をみたのである。それは非常に美しく、大いに喜ばしいものであった。
* où vintiesme an de mon aage 私が二十歳の頃
* paage = péage 通行料
* des jones gens = des jeunes gens
* couchiez estoie = j' étais couché
* si cum = ainsi que, comme
* souloie 半過去 < souloir (soloir)= avoir l'habitude
* songe 単数体格。
* biax < biaus (beaus) < bellus = beau
* plot = il plut
* gens は女性名詞。現代でも先行する形容詞は女性形。
(例)Toutes ces bonnes gens sont heureux.(『クラウン仏和辞典』)
* for (fort) はラテン語の fortis に由来するため男女同形である。従って for(t)ment のような語形になる。
* beau の三重母音は bellus のエルが母音化して生じたもの。ラテン語の au は古くから o と発音されていたが、このようなケースでは eau を eaou のように発音したようである。
参考文献
・ジャック・ショーラン、『フランス語史』、川本茂雄/高橋秀雄、白水社、2001
・ギ=レノ・ド・ラージュ、『古フランス語入門』、大高順雄、朝日出版社、1981
読んでいただきありがとうございます。いただいたサポートは、より正確でより専門的な記事を書くため、関連書籍の購入に充てさせていただきます。