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全てトランプが悪いのか?ー語られない責任の所在ー

高まるトランプへの批判

米、ミネアポリスで起こった無防備な黒人が白人警官に過剰な暴力で殺された事件を受けて、抗議の嵐が全米に吹き荒れている。

そして、その騒動の中心にいるのが、トランプ大統領、その人である。

トランプ大統領と言えばツイッター上での過激な発言で有名だが、今回の騒動でも彼自身の火に油を注ぐ言動で、彼の批判者につけ入る隙を作ってしまった。

一部暴徒化するデモ隊を鎮静化するために、連邦軍を投入することも辞さず、射殺も厭わないと言及したのである。

これに対して、政敵である民主党のみならず、世界中のメディアで袋叩きに会っている。そして、味方の共和党から大統領の姿勢が暴力を助長していると批判している人も出てきた。

確かに、大統領の言い方に問題があったのは事実である。そして、唐突な言動で現場を困らせたのも同意である。しかし、彼のツイッター上の発言の言葉尻を捉え、彼の真意を歪曲して報道するメディアの姿勢も許容できるものではない。あまりにも事態が矮小化して伝えられている。


純粋に社会正義の実現を目指して平和裏にデモが続いている裏で何が起きてるかを理解する必要があると思う。


平和的なデモを台無しにする人たち

上記でも述べたように、一部のデモ隊が暴徒化しており、過激な行動、略奪に従事する人々が出ている。そして、その種の活動は少なくない数の州で行われている。

例えば、フェイルデルフィアでは暴徒たちが店や車に火をつけて回り、挙句の果てには高速道路を占拠し、通行止めに追い込む始末である。

また、略奪の実態を取り上げたウォールストリートジャーナル紙の記事によると、オハイオ州での略奪によって日本円に換算すると700万円相当の衣類が盗まれたという個人経営の店があり、店主が悲痛な現実を嘆いていた。

大都市では高級店が標的となり、ニューヨークシテイのタイムズスクエア付近に位置する、とあるショッピングモール街ではほとんどの店が盗難の被害にあった。


そして、事態はさらにエスカレートして、人命が失われる事態まで発生している。ミシシッピ州、セントルイスでは黒人警察官のデイビッ・ドーン氏が暴徒によって射殺され命を失い、その前の週にも黒人のガードマンがカリフォルニア州、オークランドで射殺されて亡くなっている。

さらに、トランプ氏が在住している首都ワシントンDCにあるホワイトハウス付近の公園で火の手があがり、大統領が地下室に一時避難しなければいけない状況が発生した。もはや、アメリカの統治システムを完全にマヒさせかねない域まで、暴動が悪化している。


いくらデモが平和的なものであっても、それと同時進行で社会の治安を乱す活動が横行しているのは事実であり、何らかの対処が必要である。しかし、一向に事態が沈静化せず、全米でデモが広がっていくにつれて、その数も増えている。

その責任はトランプ氏のみに帰するのだろうか?


警察の手を縛る首長たち

アメリカは王様に全ての権限が集中する、いわば独裁体制への反発から出来た国であるため、権力の分離ががとても厳しい。そのため、中央政府が自分の意向を司法や立法府、又は地方自治体に反映させることが他国と比べて、とても難しい。行政と立法、地方政治が一体化してる日本では考えられないシステムだ。

その代わり、例えば、アメリカの各州はそのおかげで高度な自治が認められており、州内で法律や税制を自由に決めることができる。その反面、今回のケースのように暴動などが起これば、連邦政府にまるっきり頼ることはできず、各州が責任を持って対処しなければならない。

しかし、暴動が発生している州の州知事や市長たちの対応などを見ていると、本当に危機感を持って事態に対処しているのかどうか疑問符がつく。

例えば、ミシシッピ州のセイントルイス市のケニー市長は治安改善を目的としてデモが発生している現場に派遣されている、警官たちの身を危なくするような発言をしている。

当初、彼は興奮するデモ隊に対して、催涙弾を放つ警官たちへの擁護を繰り返していた。だが、途端に警察官はデモ隊に対して圧力を掛けすぎだとして、警官たちを批判する姿勢に転じ、警察の行いは調査の対象になると言及した。ニューヨーク市の市長のデブラジオ氏もケニー市長と同じように、警官を擁護する立場から批判する立場への転身を見せた。


今回のデモの対応ほど警官たちにとってやりにくい仕事はないであろう。そもそも、ここまでデモが大規模なものになったのは、警官の過剰暴力によって発生した殺人が原因で起こったものであり、デモが批判している対象は警察の体制そのものである。アメリカの警官たちは、デモ隊全員から敵視されている状態である。

そんな窮屈な状況であり、時には警官たちは暴動を押されるために、催涙弾の使用など荒っぽいことをしなければいけないのにもかかわらず、自分たちの長である首長たちが、上記のような発言をすればどうなるか?

治安維持などまともにできるはずがない。うかつにデモ隊に参加している人たちを逮捕したり、圧力を加えられてしまえば、自分が処罰されてしまうと警官たちが思ってしまってもおかしくない。そのことによって、治安維持を行うための警官の手段を極端に狭めることにつながり、暴徒たちの暴走にを暗に促すことに繋がりかねない。

難しい立ち位置に居る首長たちを、一方的に批判することはアンフェアかもしれないが、暴徒による略奪が、上記で述べた市長の元で収まる気配がない状況を見ると、彼らのリーダーシップによって事態が悪化している可能性を指摘せずにはいられない。


暴動を暗に煽る民主党

それに加え、デモの暴徒化が収まらない理由として、暴動に暗に煽っている民主党に属する政治家に非があると考える。

デモが発生してから次々と民主党の政治家は支持を表明し、中にはデモに参加をしているナンシー・ペロシ下院議長やカマラ・ハリス上院議員のような人もいる。そして、暴徒を軍を用いてでも鎮圧すると言及したトランプ大統領を独裁者であると断罪し、平和裏に行われてるデモの意義を彼が損なおうとしていると批判している。

また、オバマ大統領やバイデン副大統領といった民主党の大物たちも、同じようにトランプ大統領を批判し、デモへの参加を奨励している。


しかし、これらの言動はいささか無責任なのではないのかと思う。アメリカ人にデモの意義を聞けば、99%の人が好意的な意見を表明するし、批判されているトランプ大統領も、それ自体は批判していない。

彼が批判しているは、民主党の政治家たちがデモ隊の「一部」だと表現する暴徒たちである。しかし、いくら「一部」だとしても彼らが明らかな犯罪を犯してるのは事実であり、当然法のもとで裁かれなければならない。

例え、暴徒がデモ隊の内の1%であっても批判されなければいけないし、1%であっても許容できるものでは決してない。

それにもかかわらず、ひたすらにデモへの参加を奨励し、暴徒への批判に時間を割かずに、大統領への批判により多くの時間を割く姿勢は卑怯であるとさえ感じられる。それでは、上記で述べた首長のように暴動を暗に煽っているのと同じことである。

彼らがやっていることは、治安維持という汚れ仕事をトランプ大統領に一方的に押し付けてるように見えて仕方がない。

バイデン大統領の資質に疑問符

また、最近行われたバイデン大統領の記者会見を見て、筆者は彼の危機管理の能力に大きな疑問符を着けずにはいられなかった。

彼は星条旗をバックに、分断される国家の融和を訴え、トランプ大統領の過激な言動を批判し、いかにも私が大統領としてふさわしいという雰囲気を醸し出していた。

だが、彼は暴動に関しては、たったの三秒しか言及しなかった。これはいただけない。

相次ぐ、白人警官による無防備な黒人の殺害が間違っており、断罪されるべきである。それは、トランプ大統領でさえも理解を示している。

しかし、上記で述べた惨状が広がっているのにも関わらずに、それについて彼はほとんど言及しなかった。バイデン大統領の姿勢は、黒人の人権を守る大義のためなら、そのような「一部」の暴徒たちの存在は気にしなくても良い,という風に筆者は解釈した。

この暴徒たちの存在を野放しにしてしまえば、暴動がさらに悪化し、多くの無実の人が被害を受けることにつながる。


また、連日平和裏に行われてるデモの事態を報道せずに、暴徒によって破壊された店の惨状をフォーカスしているメディアが増えていると感じる。それはアメリカ国内のメディアのみならず、日本も含めた海外メディアも同じ傾向を辿っていると思う。そして、そのせいで、今世界中を巻き込んでる、差別反対のデモは、ただの暴動として将来に伝わってしまうという懸念がある。

たとえ、デモ隊の内の1%が暴徒化する人たちであっても、その人たちの存在を許してはならないのである。

その懸念が存在するにも関わらず、デモの参加をひたすらに奨励し、暴徒への対応について一切言及しなかったバイデン氏は大統領として適格なのであろうか?

また、同じことが起きれば、大義のために、多少の暴力が発生することを彼は認めるのか?


まとめ

トランプ大統領はビジネスマンとしては1流だったかもしれないが、政治家としては2流の存在である。

オバマ大統領や、バイデン副大統領のような1流の政治家であれば、耳障りのいい言葉を国民に向けて発信し、その場を凌ぐこともできた。それをせず、怒りに任せて自らの批判者を活気づける言動を取った。

また、たとえ州知事のお尻を叩くための発言であったとしても、側近との相談なしに自国民に正規軍を仕向けるという発言を唐突にしたことは不用意であった。

しかし、トランプに対して批判の目を向けている人々の言動も大概である。

特に2021年に大統領に就任して、国民の生命、財産を守る、という大役を引き受ける可能性を持っているバイデン大統領の発言は、あまりにも無責任であった。

彼が今大統領であれば、事態は果たしてましだったのか?そう考えられずにはいられない。

まだ、トランプ大統領の方が、その役目を果たそうとしているように見える。

参考文献








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