我が家のシーズーの思い出
ある日、会社から帰ると、父が保護施設から引き取って来た、薄汚れたモコモコの犬が玄関にいました。驚きながらも「よく来たねえ」と撫でまわしていたら、なんだか涙が出てきたのを覚えています。毛が伸び放題で爆発していて、痛々しくはげてしまっている尻尾を一生懸命に振っていました。私にとっては人生で初めて迎えたワンコでした。
迷い犬だったので、名前も正確な年齢も分からずじまい。新しい名前をつけて呼び始めると、最初は「?」という感じでしたが、割とすぐに反応するようになり感動しました。獣医さんによれば、4歳ぐらいということで、もう活発に遊ぶ年齢は過ぎていると聞きましたが、少し教えたら、ボールを取ってきたり、私が隠したぬいぐるみを探して持ってきたりして一緒に遊べるようになりました。問題行動がない穏やかな子で、最初の飼い主さんは躾が上手だったに違いないと家族で話したことがあります。
しばらくすると尻尾の毛がきれいに生え揃ってきて少し安心しました。2年ぐらい経つと、家族が食べているものを横からおねだりしたり、どいてほしい時にどいてくれなくなったり、色んな自己主張もするようになりました。こちらの理解度が深まったこともあるし、うちの躾がだらしなかった事もあるだろうし、そしてワンコがすっかり安心できるまで時間もかかった気もしました。
散歩はあまり好きじゃなくて、立ち止まって長いこと風に吹かれていたり、20メートルぐらい歩いただけで引き返したり、雨でカッパを着せて出ても家の前でおしっこしたら終わりということも。他のワンコさんとはあまり交流しない子でした。ただ、ある背格好の男性とすれ違うと、じっと見て動かなくなることがあり、前の飼い主さんを探していたのかもしれません。
車や自転車に乗せられて出かけるのは大好きで、連れて行ってもらえない時の玄関での攻防では、急に機敏な犬になるのでした。お出かけを感知した途端に、玄関へ行って待っていて、「今日はお留守番」と言ってどけても、サッと玄関のたたきに降りて、ドアが少しでも開いたら外に出られる位置でスタンバイ、「行く!」と訴えかける顔も凛々しかったです。
ホットケーキを作っていると必ず横にやってきて、すごい熱量で私のことを見てずっと待っているので、ある時から椅子に座らせて作業がよく見えるようにしたら、私の一挙手一投足を観察していました。私はワンコと一緒にホットケーキを焼く、絵本の世界にいるような気分になったものです。焼きあがったら少しだけ分けていましたが、好物を食べる時の表情と勢いは、絵本とは程遠い形相でした。
以前は、時間もお金もほぼ自分のためという生活だった私が、両親と相談して外出を調整し、ワンコ貯金もするようになりました。ある日、会社で辛いことがあった時、「ワンコのために頑張らなきゃ」と思った事に驚きました。ワンコはかけがえのない家族の一員になり、家族にかける愛情について意識するようにもなりました。
私が渡仏する三カ月前に、ワンコは天国へ旅立ちましたが、いい思い出をたくさん残してくれ、大事なことを学ばせてくれたことに感謝、そして、今は天国のお花畑で、シャイな性格だったけれど、それなりに友達もできて楽しくやっているだろうと、彼の幸せに思いを馳せています。
今日も読んで下さり有難うございました!
emicaさん、お写真お借りしました。有難うございます!
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