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Black Cross, New Mexico (Georgia O'Keeffe)

(調べが甘い部分もあるので面白半分で読んでくれたら幸いです。)

The Art Institute of Chicago 所蔵のアメリカ・ウィスコンシン州出身の画家、Georgia O'Keeffe(1887-1986)の作品。この作品は1929年に描かれており、アメリカ近代美術史において重要な人物であるAlfred Stieglitz と結婚した5年後の作品となっている。

O'Keeffe は、The School of the Art Institute of Chicago で絵画を習ったのちに、アメリカの近代美術界の中心とも言えるニューヨークにあるThe Art Students Leagueで絵画を習った。このニューヨーク進出でO'Keeffe にとって大きな転機が訪れた。

まず、画家のArther Dove との出会いである。当時のアメリカの美術業界はヨーロッパの影響で、キュビズムやGerman Expressionism の影響が強かった。その中でArther Doveはアメリカの豊かな大自然を基とした、抽象的な絵画を描いていた。O'Keeffe の花と骨を抽象的に抽象的に描く作風はArther Dove の影響と言える。

そしてもう一つに、Alfred Stieglitz との結婚である。Alfred Stieglitz は写真家として知られるが同時にGallery 291を開いた人物としてアメリカ近代美術史に名前を残している。このGallery 291は、Arther Dove、O'Keeffe も参加していたアートギャラリーで、ヨーロッパの前衛アートを紹介する場所でもあった。この美術を幅広く紹介するスタイルや多くの前衛アートを取り扱う形態は、後にマルセルデュシャンが芸術界に大きな変化を与えた事件が起きた場所でもあるニューヨーク・アーモリーショーに繋がっていく。

O'Keeffe はニューヨークに移り、Arther Doveとの出会いを経て自身の絵画様式を開拓し、Alfred Stieglitz と結婚し、自身の個展も行えるようになり、芸術家としてまた一人の女性としても充実していたと思われた。しかし、ある個展で思うような結果が得られず、しかも夫のAlfred Stieglitzの不倫も重なり、大都会ニューヨークから抜け出したいと感じる様になった。

1929年から毎年夏の期間は、ニューメキシコ州で過ごすようになった。この絵は、その最初の夏に描かれたものである。O'Keeffe は、「この黒いクロスは良く見るようになり、まるでカトリック教会の暗いベールがNew Mexico の大地を覆っているよう。」と記録している。ニューヨークでの経験がいかに彼女にとって辛いものであったかということをこの黒い十字架が物語っている。そしてその黒い像が十字架であることから、彼女の人生の辛い経験からの救済をNew Mexico の大自然に求める気持ちの表れだとも感じられる。

個人的にこの絵を見た時に私は、この強く黒い十字架に引き込まれそうな感覚になった。そして勝手ながらO'Keeffeの経験と自分の経験を重ね合わた。そういえば、以前大学の授業内でニーチェについて学んだ時に、ニーチェは人生においてどうしようもないことに対して諦めてしまうルサンチマンの状態に陥ることを批判していた。もちろん、全員が強き人間でいられるのが理想だろう。しかし、なかには自分の弱さに押し潰される人もいる。そんな弱さを肯定してくれ、その弱さに寄り添ってくれる様な作品だとも思う。


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