見出し画像

気ままにクリエイティブ観察"おいしいトーストが食べたい"編

観察が日課のFRACTA AD(アートディレクター)宮崎です。「気ままにクリエイティブ観察」第2回は"美味しいトーストが食べたい"です。

バルミューダのサイトは、様々なブランドさんがECサイトを作る上で参考になさることが多いです。その主な理由は、おしゃれ、使いやすいという点です。
でも本当に心が動かされるのは、そういった表面的に見える部分だけではないと思うのです。決して安くない家電を、ECでの購入につなげるにはある工夫が必要です。
それは「今までにない革新的な新しい体験を想像させられるかどうか」だと私は思っています。バルミューダのサイトはこのワクワクする新体験を、ごく自然に想像させる工夫が随所に施されています。
今回はバルミューダのトースターのサイトにおける魅力について、考察していきたいと思います。


簡潔な概要

スクリーンショット 2020-10-14 17.36.07

商品のスペックでもおしゃれさでもない、どんな体験(未来)が待っているか、簡潔で誰が読んでもわかるような言葉選びをして伝えています。
よくあるのが、おしゃれで雰囲気のある写真を前面に使って情緒的なコピーをレイアウトしたようなファーストビュー。情緒を重んじる嗜好性の強い商材ならそれは適応されるかもしれませんが、日用品はそれでは難しい。エビデンスが明確でないと、そもそも購入する候補にすら入らないこともあります。
体験がごく自然に想像されるというのは、研ぎ澄まされた簡潔なコピーとそれを補佐するミニマムなプロダクトビジュアル。それ以外の雑音が多ければ多いほど、コミュニケーションは遅くなります。

程よくコーディネートされたインテリア

スクリーンショット 2020-10-14 17.36.25
スクリーンショット 2020-10-14 17.36.38


あくまでプロダクトが主役の構成というのがポイントです。プロダクトを引き立てる演出のさじ加減にセンスが光ります。過度な演出は一見華やかで見栄えはするのですが、消費者のライフスタイルとのズレが生じ、肝心の「何を売りたいのか」がわからなくなってしまうのです。かと言って何もない背景にプロダクトを置いてあっても、それを使う自分が想像しにくいですよね。そのギリギリのバランスを攻めているところが、自然に使う自分を想像させ、購入につながっていると考えます。

画期的な新しい体験の詳細

スクリーンショット 2020-10-14 17.36.58
スクリーンショット 2020-10-14 17.37.07


水を入れるという新しい行為によって、どれほどおいしいトーストが食べられるのかをロジカルかつ感性に響くように構成しています。当時はこのバランスが新しかったのだと思います。
バルミューダの考えるど真ん中の美味しさとは何かを、ポイントを絞ってシズル写真と図説で解説しています。伝統や雰囲気ではなく、身近で少しマニアックな視点。かつそれを簡潔に訴求している点が、実は美味しさの本質を捉えていて、容易に味を想像させていると思うのです。これは開発者の日常の観察と体験をもとに作られたものだから、実現できていることだと思います。
これまでの大手メーカーの訴求アプローチは、スペックがいかに優れているかといった機能面にフォーカスするものが多く、それゆえに技術勝負でどんどん要素や機能がプラスされていきました。しかし今では、家電屋さんに行けばライフスタイルに溶け込むような、おしゃれでシンプルなデザインと機能をもつプロダクトが増え、ライフスタイルやシズル写真を多用するようになりました。バルミューダの影響は本当に大きいものであると実感します。

新しい体験は日常に潜む

ど真ん中の美味しさとそれを実現する機能を”素直”に伝えることが、新しい体験を想像させ、購入につながるのだと思います。この“素直”な表現とは、消費者と共感できる本質をしっかり掴んでいないとできないことです。表現を判断する軸が曖昧だと、要素を増やして表現が抽象化していきます。それは一見ハズレにはならないのですが、アタリにもなりません。見た目はいいけど、体験が想像できないとはこういうことなのだと考えます。

そもそも新しい体験は、日常に転がっていて誰でもいつでも感じていることです。ただ、日常を自分の目で観察し、感じようとしないとそれが本質だと気づくことができないのです。誰かがそう言ったから、今までこの方法だったから、という理由で自分の心と向き合う時間を作らなければ、体験を想像させるクリエイティブは一生実現できないでしょう。


————————
ここまで読んでくださったみなさまありがとうございます。ぜひスキ、フォローしていただけたら幸いです。

▼FRACTAについて



▼Twitterもやってます!
https://twitter.com/fracta_pr

Twitternoteリンク用