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本日の本請け(2022年9月・10月)

夏のようだったり秋のようだったり冬のようだったりする、9月と10月に読んだものと一緒に食べたものや飲んだもの。
本に合うものをなるべく選び、「お茶請け」ならぬ「本請け」としております。

『道ありき(青春編)』三浦綾子(新潮文庫)

春に旭川に行ったときに、三浦綾子文学記念館に行き、作者の来歴などに興味を惹かれて自伝を購入。3冊あるうちの一冊。

ゴルゴンゾーラといちじくのタルト

読もうと思いつつも積読となってたのですが、引っ張り出してきたきっかけは世間を騒がせた先日の事件でした。信仰って何なんだろう、と思ってふと読んでみようと思ったのです。

そもそも三浦綾子を読んだのは中学のときの『塩狩峠』が最初でした。
担任の英語教師が授業中に脈絡なくオススメしてきたのです。

私はその英語教師が嫌いで、英語が嫌いになった原因でもあるくらいなのですが、今思えば嫌いな人の勧めた本をなぜ読んだんでしょう(笑)?
英語教師があらすじを話した折にこの『塩狩峠』の結末のネタバレをしていたのですが、読んでみて、その結末にたどり着くまでが丁寧だと感じました。
当時の私はホラーとミステリが大好きな中学生だったため、結末だけがありきではないんだな、と思ったのと、嫌いな教師がこの本が好きだと言っていたことで、「あんな嫌なやつなのにこんな本読むんだな」と、なんとなく人間は見えている面だけが全てではないことを知った気がします。

文学館に行き、三浦綾子の来歴を知って、クリスチャンで闘病をして、というところからなんとなく「すごい人」というか、「清廉潔白な人」のようなものを感じていたのですが、
文学館で講演の様子の映像が流れていて、なんだかチャキチャキと話すおばちゃんが映っていて、「へえー?」と思ったのです。
イメージとギャップがあって、どういう人なんだろう、と興味を引かれました。

この本では戦後教師をやめて闘病し、恋人の前川正を失い、夫となる三浦と結婚するまでを描いています。
読んでみて驚いたのは、洗礼を受けるまでの間にどんなことを考えたのか、その思考の流れや感じたことがしっかりと書いてあったこと。
キリスト教に対して懐疑的な姿勢はむしろとても共感できるものばかりで、ただ神様だ!と盲目的に信じたわけでなく、自分はこう考えた、というのがよくわかりました。

どう生きるのか、ということを考え抜いたことを知れてよかったです。

ほんとうに人を愛するということは、その人が一人でいても、生きていけるようにしてあげることだと思った。
(中略)
親が子を愛することも、男が女を愛することも、相手を精神的に自立せしめるということが、ほんとうの愛なのかもしれない。「あなたなしでは生きることができない」などと言ううちは、まだ真の愛のきびしさを知らないということになるのだろうか。
「道ありき」二十八 

この部分がすごく印象に残りました。

『この土の器をも 道ありき第二部結婚編』三浦綾子(新潮文庫)

続けて三浦綾子自伝を読了。三浦との結婚生活と、小説を書き、『氷点』が賞を取るまでを描いています。

クッキーらしいクッキーが食べたくなりました。お茶はとうきび茶がブーム

文学館に行くまで『氷点』がデビュー作だと知りませんでした。
確か『塩狩峠』を読んだ後、『氷点』がドラマ化されたのでタイトルを知っていて、次に『氷点』を読んだような記憶があります。ドラマも見ていたような。

なので、こんなに完成度の高いものがデビュー作と知って驚きました。
文学館では賞を採ったこと、ブームが起きたことがどれだけたいへんな騒ぎだったかが知ることができましたが、意外とこの自伝の中ではさらりとしていました。それよりも、小説を書くまでにあった出来事や、どのような思考を経て来たかが中心。

『光あるうちに 道ありき第三部 信仰入門編』三浦綾子(新潮文庫)

これが最後の巻。文学館に言ったときに、三浦綾子を知るミニ資料集を購入したのですが、それには自伝と銘打たれては上の2冊とまた別の2冊しか記載がなく、どうしてだろうと思ったのですが、こちらは三浦綾子の聖書や信仰の解釈、といったかたちでした。

チーズケーキブームでした

自伝として読むには上二冊でも十分かも、とは思いました。
ただ、聖書をどう解釈したのか、三浦綾子が自分の周りの人の出来事やそのときの気持ちに寄り添った例が示されていて、本当にひとつひとつ考え抜いていったんだなあと思うとその理路整然さがすごい。

献金や祈りの方法など、今聞くとドキッとするワードも出てきたのですが、献金が多ければ良いというものではないことやしなくてもよいこと、こういう風に尋ねてこう返ってきたらそれはキリスト教ではないなどもあって、カルト的なもの、弱った人をだまそうとするものは昔からあったのかなという気もしました。逆に、ここに書いてあることを知っていればおかしいなと思ったときに対処できるのかも。

『黒猫ろんと暮らしたら』AKR(コミックエッセイ)

猫足のガラスコップは函館で買いました

Twitterでかわいい黒猫の漫画をよく見かけていて、猫のかわいらしさを大量に摂取したくなって4巻一気に買って読みました。

かわいい猫のイラスト、実際の写真を見ると本当にそのままでびっくり。

Twitterだと動画をあげてくださっているときもあってかわいさ倍増!

ろんがかわいい。ちょっとだけ同居することになる猫さんもとても美人!
エピソードがかわいいのと、自分の家にいた猫のことを思い出し、本当に猫もさまざまだなあと。
ろんさんの大きさにびっくりしたけれど、そういう品種もいると知ったので、大きい猫さんを見ても飼い主さんかわいさのあまり太らせているのでは!なんて思わなくなりました。

猫足コップかわいくて、アイスコーヒーを飲んで黒猫の足!とかやろうかと思ったけれどガラも見えなくなってしまうのでカフェオレに。本当は底に肉球のイラストもあるのです。

『月刊少女野崎くん』椿いずみ(ガンガンコミックスONLINE)

かわいらしいやつがいい!と思ってフルーツサンド

毎回、新刊が出るたびに付近の巻を読み直すのですが、知っているはずなのにいつも笑ってしまいます。
元気ないときに最適。

関係が進んでいない高校生組に比べ(そこが持ち味)、都さんと遼介くんの関係が前進したのが感慨深かったです。

『北欧こじらせ日記 移住決定編』週末北欧部chika(世界文化社)

移住が決定したというのをSNSで見て自分のことのように嬉しかったです!
その後もSNSを追ってはいたのですが、こうして一冊読んでみると、当たり前ですがSNSで垣間見られる以上のいろいろなことがあったんだなと思います。それに漫画に描いたことだけでもないでしょうし……。

キャロットケーキが出てくるので食べたくて

英語の勉強で毎日できない、そんな自分が情けない、そんな葛藤を抱えているところとかとても身近。
フィンランドに移住した人、と聞くと「すごい人」=自分にはとてもできないようなことを成し遂げた別世界の人、みたいな印象を持ってしまうけれど、ひとつひとつを積み重ねていったんだなというのがよくわかります。

ときどき挟み込まれる写真もかわいくて素敵!対象物に対する愛着が滲んでいる気がします。

『かもめニッキ』週末北欧部chika(講談社)

コップ北欧っぽくてお気に入り

chikaさんの本、最初の本が出版されたときに発売日に本屋さんに売っていなくて(おそらく北海道だから届かなかったのかなと)我慢できなくて電子で買ってしまって以来電子書籍で購入していたのですが、紙や留め方のこだわりなんかにもたびたび触れてらっしゃるのでやっぱり現物でほしいな、と思って今回は現物を購入。

そもそも、このchikaさんを知ったのはSNSがきっかけだったのですが、フィンランド関連ではなく、人生の中で手に入れたい探し物がある、というマンガでした。

そういえばどこの本にもあのマンガが収録されていないな、と思っていたら今回収録されていてああ、これだ!と嬉しくなりました。

私も欲しい本があって古本屋を巡るとかしてたときがあったので、なんだか勝手に親近感だったのです。結局Amazonで購入したのでそんなに情緒ないんですが(笑)。

本請けはもらいものの志津屋というところのパンでした。おしゃれ。

『追憶の烏』阿部智里(文藝春秋)

やっぱり「和」かなと思っていちご大福。

八咫烏シリーズの最新刊、でした。購入当初は。

というのも、途中まで読んで辛すぎて一旦やめました。ネタバレになるので明記できないのですが……。

さらに最新刊が10月に出ると知り、読むか……!と思い腰を上げたのですが、とんでもなく面白かったです。辛いけど、面白い……!くぅ〜!という感じ。
すごすぎて一気読みでした。

ちょうど、オーディオブックで最初から聞き直しているところなので「あっ」「あっ!」と思うところがたくさんありました。

このシリーズ、一気読みしたらさらに面白いんだろうな。

『怪盗フラヌールの巡回』西尾維新(講談社)

バームクーヘンが出てきてどうしても食べたくなった

おまけでついている西尾維新が質問に答えた折り込みのペーパーが欲しくて、久しぶりに紙で書いました。そうしたらなぜか火がついてしまって、この後の本の多くを紙で買ってしまうばかりかブックカバーも新しいのを購入してしまい、もうダメだ……となっています(笑)。

バームクーヘンの話、「西尾維新の作り話かな……」とか勝手に思って検索かけてみたら本当でびっくりしました。

新しいシリーズということで、今回は登場人物紹介編といった感じ。
父親の死により彼が怪盗だったと判明し、長男が盗品を返却していく話。
怪盗ってエンターテイメントでよく魅力的なキャラクターとして描かれてしまうけれど、盗みはいけないことだよね、でもかっこいいよね、と思ってしまうそういうちょっと後ろめたいけど甘美な気持ちを容赦なくついてくるのは実に西尾維新だなと思います。
「返してくれても許さない」という登場人物の言葉がエグい。これからの展開が楽しみ。

『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』金間大介(東洋経済新報社)

内容にコーヒーが苦く感じたよ

ネットのニュースを見て興味を惹かれ、若者心理の本、ということで読んでみました。

自分にも少し思い当たる節もあり、「最近の若者は!」というのではなく、グラデーションのその部分が濃いのだろうなと思ったり。

内容は興味深かったのですが、地の文の後に(  )でツッコミを入れているところがちょっとしつこ過ぎて胸やけ。

内容の一部はネット記事でも見られます。

『仕事でも、仕事じゃなくても 漫画とよしながふみ』よしながふみ(フィルムアート社)

ここでもチーズケーキ食べてる

本屋さんに行ったときに、何気なく手に取ったのが『西洋骨董洋菓子店』。これからドラマになるという帯がついていて興味を引かれ、既刊を購入して帰りました。3巻までだったかな?
読んでからドラマを見たら藤木直人さんのゲイのパティシエの役についてが奥歯にものがはさまったような描き方になっていてなんでだろう、と思ったのを覚えています。

一巻でどんな物語かわかるようになっていない、という反省点を本書であげてらっしゃいますが、なるほど、と思いました。
実は、一気に買って帰ったけれど、一巻だけ読んだときに「これどうなるんだろう」と思った覚えがあったからです。確か、テレビ雑誌で人物相関図とかを既に見ていて、橘の過去に何かあることを知っていたのでそれを縁に次を読めたような記憶があります。その点ではもしかしたらラッキーだったのかもしれません。

『西洋骨董洋菓子店』の結末についての感想を聞いて落ち込んだ、という話があって、驚きました。自分はこの結末が大好きで、あのとき購入してよかった!と思えたからです。

橘のようなトラウマほどのものではないけれど、自分にもしんどかった思い出や、そういう記憶をふいに思い出してうわ、となることがあります。

それが解消されなくてもまた今日も働くし幸せにだってなれる、というのが少しもやっともするけどそのもやっとがいいな、と思ったんです。もやっとが解消されきるような人生、あんまりないし、解消されたはずのもやもやがまた現れることもあるからです。

よしながふみさんの作品は他には『大奥』しか読んでないのですが、本屋でこの本を見かけて何げなく『西洋骨董洋菓子店』を買ったあのときのことを思い出して購入しました。購入してよかったです!

『はいからさんが通る』などのマンガは愛蔵版とかでなく母所蔵の元の単行本を読んでいたので、本編後に入っている読み切りの短編が好きだったんですよね。

よしながさんが短編が好きとおっしゃっていてわかるという気持ちと共に嬉しくなりました。なんか、ちょとずつ別のもの食べられるアソートみたいで楽しいんですよね。

たとえば「女の人は結婚すると働けないでしょ」とかそんなことを耳にしても、全部に反論して回れるわけではないですし、そういうことを同性である女の人が言っていたりしたときに忸怩たる思いを抱えることもあります。でも、そういうときに私が出せる結論は、私自身が一生仕事をして自分で自分を養って生きていくことで、この世の中にそういう人が一人増えることになる、それでいいとずっと思ってきました。不平等を改善するような動きが社会的なムーブメントになるのはもちろんいいことだと思いますが、まず大事な一歩は、私自身がその思想を裏切らないように生きていくことだと思って。それに尽きると考えています。
『仕事でも、仕事じゃなくても』第2章 夢に見た漫画家へ

この部分がすごく好きで、また挫けたときに読み返したい本に出会えてしまったな〜とじーんとしてしまいました。

『煙たい話 1』林史也(光文社)

無印のライム&レモンジンジャー

SNSで見かけて追いかけていたので、単行本になって嬉しいです。

上のよしながふみのインタビュー集『仕事でも、仕事じゃなくても』で、自分の作品は雑誌に合ってる合ってない、という話がよく出てくるのが気になっていました。
はっきりとジャンルに分けられるような作品ではなく、でも自分はそういう作品が好きです!このマンガもそういうところがあるなと思います。

主要人物は男性ふたりなのですが、じゃあBLかというとすっぱりそう言って分けてしまうのはどうなのかなというか、BLが悪いというわけでなく。

でも、人間ってそういうものじゃないかなと思います。

どんなに嬉しいときにも100%嬉しいのかっていうとなんだか違う気がするので。

同じ作者さんのこちらもとても好きでした。

線がやわらかくてかわいい。特別な事件は起こらない、穏やかな時間。
でも、胸の中の感情はごうごうの嵐みたいに動く。楽しさにも、嫉みにも。そういうところが大好き。

これも上のよしながふみさんの本で年齢が上の人たちが出てくる作品は担当者さんにうーんと言われてしまったり、ということが書かれていたのですが、最近は少年少女じゃない作品でも描けるようになったのかなとも思います。もっとたくさん読みたいな。

『煙たい話』は続くのでこれからの展開も楽しみです。

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