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願うことは〜『青のフラッグ』をオススメしたい

神よ、
変えることができないものを受け入れる、平静さを
変えることができるものを変える、勇気を
そして この二つを見分けられる、賢明さを
私に与えてください。

『青のフラッグ』最終巻を読みました。
それからずっと『青のフラッグ』のことばかり考えているので、吐き出させてください(笑)。
なんとか致命的なネタバレなしに、どうしてこの作品がこんなにも好きなのか書いてみようと思います。
もちろん何をもってネタバレとするかは人によります。全くなしは難しいのでご容赦を。

ちなみに5話までは公式で読めます。

・知らない人がいない

いい作品を読んで、「この作品には嫌な人が出てこない!」と思うときがあります。
『青のフラッグ』もそうとも言えるのですが、どちらかというと「クラスにこういう人いたな」というのをマイルドにしました、という感じ。
脇役で主人公たちのクラスメイトの野田という女の子がいるのですが、彼女がいろいろな面を持っているのがリアルだなあと思います。

・とんでもなく絵がキレイ

一巻を開いてすぐの中表紙には、メイン三人の腕と手が描かれています。
その手がだれのものなのか、簡単に見分けられるようになっているのです。
節くれだった大きな男の子の手、華奢な女の子の手、そして小柄だけれどしっかりと男の子の手だとわかる手。
手だけでこんなに描き分けられていることに、一番最初から感動してしまいました。

本編中でも、手に注目して見ていくのもオススメです。
手をつないでいるところとか、頭を撫でているところとか……。

あるキャラクターが髪型を変えるというエピソードがあったり、複数のキャラクターの小学生や中学生時代のエピソードがあったりするのですが、どれもきっちりその人物だとわかります。

さらりと見てしまいがちなのですが、まつ毛の描き分け、手の違い、喉仏などを注目してみると、ほうっとため息をついてしまいます。

・漫画的表現

私は漫画でモノローグを読むのが大好きです。
『青のフラッグ』はモノローグが多く(特に1話のモノローグは最終回後に読むととてもいろいろなことがわかります)楽しめました。
けれど、7巻の48話でのモノローグは、読んでもはっきりとその人の考えていたことがわかるかというと、そうでもないんです。
心の声とモノローグが入り乱れているというか……。
例えば、おなかがすいたときにも、私たちが心の中で「おなかがすいた」と文字列にして考えているかというと、そうでもないと思います。
漠然と、おなかがすいたことを感じているだけというか……。
でも、漫画の中でモノローグや心の声として表すならそれを文字として表さなければいけないわけです。
48話では、言葉で表しつつもそういう、言葉での表せなさを表しているような気がしているのです。

コマ割りもすごく工夫があって、たまらなかったです。


本当は、ネタバレありの、ここはこういうことだろう、この言葉はこういうことだったんだろうということを書こうかな、と思っていました。
けれど最後まで読み終わった後に、もう一度最初から読むと、ちゃんと最終回に至るまでの答えはそこにあるんです。

一話の最初と最後のモノローグで二択を提示しているのですが、私はそれがどういうことなのか、どちらを選ぶのか、ずっと気になっていて、それがこの作品を読み続ける原動力でした。
最終話まで読んだ後だと、このモノローグの二択が、別の登場人物のものにも別の意味にも見えて感嘆しました。

記事の冒頭の文章は作品の中に出てくる「ニーバーの祈り」です。
何を変えたくないと願ったのか。
何を変えようと決めたのか。
読み終わった後に何度も考えました。

平静と勇気と賢明は、おとなでも手に入れているかわかりません。ましてや、まだ高校生である彼らならなおさら。

それでも出した答えと、なにより最後の主人公の回答に「そうだね」と頷きたくなります。

スパッと『青のフラッグ』はこういう作品です!と言うことは簡単なのですが、じゃあなんのために8巻もかけてこの漫画が描かれたのかということを台無しにしてしまう気がして長くなりました。
たくさんの人に読んでもらいたい漫画です。8巻の単行本にはしかけがあるし、あとがきもあるので、できたらコミックスか、電子書籍で見てほしいな……と。

・個人的に好きなシーンとセリフ

少しネタバレ度合いが上がるので最後に持ってきました。

一番好きなシーンはどこか考えてみたのですが、8巻(最終巻)の43ページです。
他に名シーンがいっぱいあるのは承知の上で、ネタバレに配慮しているからこのページになるというわけでもなく、このシーンが一番好きです!

外の地面に座ろうとして女の子のキャラクターがえっと……と困っていたら、バスタオルを敷くよう男の子のキャラクターが促すのですが、それを悪いからいいよ、と断って結局地面にえいっと座るという、ただそれだけのシーンです。

それだけに1ページも使うの?というシーンでもあります。

でも、このやりとりで、ふたりがお互いを「大事にしたいと思っていること」がわかるんです。

困っているなら助けたいし、逆に自分のために持ち物を汚してしまうのは悪いなと思うし、というお互いへの思いやりがとても感じられます。

ほんの少しネタバレしてしまうと、これは「けんか」の最中のシーンなんです。そのけんかの最中でも、お互いのことを思いやっている。
言葉で「この人が大事」と言うより、何倍も伝わってすごく好きです。

一番好きなセリフは、「気付きたかったのに」という言葉です。
「知りたかった」や「教えてほしかった」じゃない。
「気付きたかった」であるところが、とてもこの登場人物らしく、この作品らしいと思います。


『青のフラッグ』のタイトルの意味をいろいろいろいろ考えたのですが、そのひとつのイメージでイラストを描きました。
どの旗を取るか決めた、という感じ。

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