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知っておいてほしい「お金の知識」 Vol.7-2 ~住宅ローン~(後編)

 前回の続きになります。

 前回のまとめでも書いたように、ここではローンの「返し方」そしてローンが持つ「別の意味」などについて書いていこうと思います。


★返し方も知り、考えよう

 住宅ローンにも「返し方」がいくつかあります。大まかに分ければ、「分割返済」と「一括返済」です。
 ですが、「一括返済」ができるなら、そもそもローンなんか・・・と思われるでしょうが、ここにはいわゆる「借り換え」が入るのではないかと思います。
 そして「分割返済」には、その返済金がどちらに重点が置かれているかで「元利均等」と「元金均等」とに分かれます。あとは「繰り上げ返済」も「分割返済」の内の一つになりますかね?
 それでは、それぞれを掘り下げていきましょう。

 まずは通常「返済」といえば「分割返済」になります。これにはさらに先ほど触れた「元利均等」と「元金均等」そして「繰り上げ返済」があります。
さらに、「繰り上げ返済」には「返済額軽減型」と「期間短縮型」の2通りがあります。

 では、「元利均等」と「元金均等」の違いと特徴ですが、

このような感じになります。これもどちらが良いとかはないので、ご自身の返済計画にあった方式を採られるのが良いかと思います。ちなみに、金融機関で用意しているものは「元利均等」の場合が多いようで、特に要望として伝えないでいると「元金均等」型のローンについては触れないようです。もし「元金均等」を希望している場合は、しっかりと借入先にその旨を伝えましょう。

 そして、「繰り上げ返済」による「返済額軽減型」と「期間短縮型」についてですが、

SBI新生銀行「住宅ローンの繰り上げ返済はした方がいい?得するためのコツを解説」より
SBI新生銀行「住宅ローンの繰り上げ返済はした方がいい?得するためのコツを解説」より

 こんな感じになります。「繰り上げ返済」については、

「どうしたら今の負担をより効果的に軽減できるか?」

で考えるべきだと思います。どちらを選ぶかは、その時の状況と今後の収支見通し、何が負担なのかを見極めて判断していただきたいです。詳細は上図を参考にしていただければと思います。

 そして、「借り換え」ですが、これは借入残額分をより利率の低いローンで一括返済し、借りなおした利率の低いローンを新たに返済していくものになります。こうすることで、前のローンの残期間と同じ期間で借りなおせば、利率が低くなった分毎月の返済額を軽減することが出来ます(返済額軽減型)し、返済額を同額に設定すれば返済期間を短縮することが出来るので(期間短縮型)、「繰り上げ返済」と同様の効果が見込めます。

 一般的に「借り換え」の目安として、今のローンの

  • 残額が1,000万円以上

  • 残期間が10年以上

  • 借り換え後のローンとの金利差が1%以上

の場合は、検討してみるのが良いと言われています。

 ですが、これもあくまで一般論ですし、借り換えるとなると税金や費用、手数料などの諸費用が新たに発生しますし、審査もあります。また、けっこう手続きが複雑だったり元々が変動金利の場合、金利水準が低いので借り換えの効果がみこめなかったりもしますので、その辺も踏まえて検討し、軽減効果が確実に見込めるのなら実行するのも良いと思います。

 そして、「繰り上げ返済」も「借り換え」も早ければ早いほど利息軽減効果は高く見込めますが、あまり早すぎるとこの後に出てくる「控除」の恩恵を自ら少なくしてしまう場合もありますので、その辺も確認しながら実行してください。

★ローンが持つ「別の意味」

 「何だ、それ?」と思われた方、有難うございます!
ローンを組むことで得られる”利益”は何でしょう? 前編でも述べましたが、

手元に必要額が用意できていなくても、高額のモノを購入できる

ということでした。

 これを金額ではなく、「時間」という観点から見るとこう言えないでしょうか?

本来なら資金を用意できるまで手に入れられない
(=その間、モノから受ける利益を享受できない)
モノをすぐに手に入れられる(=すぐにモノの利益を享受できる)

 つまり、「時間を短縮することができる」ということです。

 時間を短縮することが出来るので、本来なら購入するまでひたすら貯蓄に回すべきお金の一部であっても、不測の事態に備えたり、別の使いみちに使ったりすることが出来るようになります。つまり、「手元には現金を残せる」ということになります。もちろん、ローンですので返済がつきものですが、必要な貯蓄額より低い返済額で済むのであれば、時間の利益を享受できていると言えないでしょうか?

 また、家に関して言うなら、やっとの思いで貯蓄をして現金で購入したとしても、その時点で高齢となっていたらその家から受けられる「利益」を果たしてどの程度受けることが出来るでしょうか?そう考えると、ローンを組んで購入し、若いうちから家の「利益」を享受するのも一つの選択肢になると思います。
もちろん、そもそも住宅自体が高額ですので、「時間の利益」を考えてローンを選ぶという方はごく稀でしょうが、そういう側面もあることを知っておくのも、ローンと向き合うには必要なんじゃないかと思います。

★忘れちゃいけない「住宅ローン控除」の存在

 最後に、住宅購入後で一番なじみがある仕組みが「住宅借入金等特別控除」いわゆる「住宅ローン控除」について書いていきます。

 これは、その年の末時点のローン残高の0.7%(2022年から居住の場合、それ以前は1%)分の税額を13年間(2019年10月から新築へ居住の場合、中古とそれ以前の入居の場合は10年間)控除を出来る制度です。
*この辺の基準については、近年税制改正でよく変更になっているので、購入する際は現状と今後の見通しをよく確認するようにして下さい。

 なぜ、”税額”を太字にしたか? それは、節税効果がとても高いことを意味しているからです。
 なじみ深い”控除”である「生命保険料控除」や「扶養控除」などは「所得控除」のため、所得税の基となる”所得額を控除”するものです。対してこの「住宅ローン控除」は「税額控除」のため、算出した”税額を控除”してくれるのです。しかもそもそもの控除額算出の対象が住宅ローンの残額のため、非常に額が大きくなりやすいです。仮に残額が2,000万円だったとすると控除額は14万円となり、大体の方は源泉徴収分がまるまる戻ってくるのではないでしょうか?

 そんな「住宅ローン控除」には、控除が受けられる住宅の条件や借入金の条件などがあるのですが、今回は触れません。極端に狭かったり相当古い中古物件だったり、借り入れが身内や知人からでなければだいたい適用できます。
ただ覚えておいていただきたいのが

  1. 償還期間(返しきるまでの期間)が10年以上あること

  2. 入居後最初の年末時は、給与所得者でも確定申告を行わなければ、その後の適用も出来ない

という点です。特に1.は先に触れた「繰り上げ返済」や「借り換えをの期間短縮型で実行した際、残期間が10年を下回ってしまうとその時点で適用できなくなってしまうので、その点も実行時は注意が必要です。
 また、2.はハウスメーカーなどが引き渡し時やローン契約時に伝えてくれるところが多いようですが、これを忘れるとその後の控除は受けられなくなりますし、給与所得者の方は翌年の年末調整に反映されなくなってしまうので、これも注意が必要です。

★まとめ

 いかがでしたでしょうか?

 前編でも書きましたが、「住宅ローン」は住宅購入時には避けて通れない大きな「試練」のようなものだと思います。額が大きい分、慎重に考えた上で行動しないと、幸せを掴むための家が負担にしかならなくなってしまうことも考えられます。そうならないためにも「住宅ローン」のことを良く知り、考え、分からないことは専門家(FPや住宅ローンアドバイザーなど)に聞いたり確認して、ご自身の中でしっかりとした道筋をつけた上で臨みましょう。
 確かに家は欲しいです! ですが、無理な条件や無茶な返済計画でのローンは自らの首を絞めてしまうことになりかねません。だからこそ、事前の準備をこれでもかというほどした上で考えていきましょう。

 それと、今回は触れませんでしたが住宅購入資金には「財形住宅貯蓄」や「財形住宅融資」の活用、自治体独自の融資制度、親などからの贈与(贈与税の非課税制度あり)や自己資金などもあり、それを組み合わせて利用することができる場合もあります。特に自己資金に関しては、目安として住宅購入額の2~3割はあった方が良いという意見もあります。ですが、これも一般論ですし、返済の見通しが立つのであれば”必ず”とまでは言わなくても良いと自分は思います。(もちろん、用意できるならそれに越したことはありません!)よく、

家と株は、「買いたい」と思った時が「買い時」

などとも言います。(売る側の都合の良い売り文句かもしれませんが・・・)ですが、まんざら外れてもいないと自分は思います。待ったからと言ってより良い条件で買えるとも限りませんし、待っている間に何が起こるかは分かりません。「必ず買え!」とは口が裂けても言えませんが、「買いたい」と思った時に条件が揃っているならば、買うことに前向きになってもらう一つのきっかけになるのではないかと思います。その上で迷ったり分からないなら専門家に相談するのは、とても有効な手段の一つだと思います。

 そんな風に活用してもらえれば、専門家冥利に尽きます。

 今回も長文となり、失礼いたしました。

 最後までお読みいただき、誠に有難うございました。


 

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