出国時の荷物検査で消しゴムが引っかかった話

束の間の一時帰国を楽しみ、微妙な心持ちで荷物の準備を済ませ、空港へ向かった。やや慌てて準備した荷物だったが、まあ守るべき事は守っているし、特に引っかかるようなものも持っていない。
荷物検査の場で、自分の滞在国で求められたように鞄毎にトレーを使ったり、電子機器や液体物の袋を出そうとしたら、それは必要ないのでそのままトレーに乗せるように求められる。そんなもんでいいのかと係員に従い前に進むと、待てど暮らせど自分の荷物は流れてこず、検査員が必死に画面を確認している。
そんなに変なもの入れたか?ぬいぐるみのせいで見えにくいのか?やはり液体物の袋は出した方が良かったのでは…と思っているうちに、荷物を開けていいかと聞かれる。
どうぞどうぞ。と言いながら、ああここで何かを捨てなければならないのかもしれないとぼんやり思っていたら、検査員の手に現れたのは昔近所の書店で買った巨大な消しゴム。画面と手に持っているものと鞄の中を2、3度見返す検査員。
検査員「これは…」
私「消しゴムですね」

入っていたのはこれ
ボールペンのキャップの長さと同じくらいの厚さで
長さは持っていたボールペンより長かった


話によると、どうやらこれが液体物のように見えた、らしい。
検査員が気まずそうにしていて若干の申し訳なさを覚える。

検査員「他には特に問題無さそうなので…これは戻しておきますね。もう結構ですよ」

一瞬、次は気をつけようと思いながら、またこんなに巨大な消しゴムを手にする日が来るのか?と思うと、多分次は無いだろう。

日本にいる時は基本的に鉛筆やシャープペンシルを使っていたので消しゴムを消費する機会があったが、滞在国ではもっぱらボールペンメインの国なので、正直なところ、意識して使わなければ消しゴムの出番はあまりない。
かと言ってこれを実家に置いておいたとして、使う人は誰もいないのでまあ持ってくるか、という考えだった。

鉛筆を使う機会となると、絵を描くくらいしか思い浮かばないが、こういうものを描きたいだとか、脳内は理想で溢れるばかりでそれを実行するに至らない。
まあだからこの消しゴムが10年以上経ってもこの大きさで存在しているわけだが。

この国にやって来た当初は、ボールペンをメインで使用する事にあれだけ抵抗があったにも関わらず、今では逆に鉛筆で何を書いたらいいのかわからないのだから皮肉なもんだ。
人間案外簡単に変わるんだな。

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