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障がいのある子どもの親として未来に向き合う

生後半年で受けた衝撃から感じたこと

 二人目の娘が生まれたとき、その半年後に、夫婦で思い悩むことが起こるなんて想像すらしていませんでした。それはそうですよね、誰もが子供の健やかな成長をイメージし、親として「こんなことをさせてみたい」「こんな成長をして欲しい」と思うことが、親の「普通のお仕事」だからです。

 下の娘が6か月になったころ、なんとなく娘の様子がおかしいことに嫁が気付きました。動きが止まってしまうのです。丁度いま、外国ドラマの「ヒーローズ」を見ているのですが、ヒロ・ナカムラの「時間を止める」能力を使った瞬間みたいに、動きが止まるのです。この症状が「てんかん」の症状の一つと気付くのには、それから数週間が経っていました。

 娘を大学病院の先生に診てもらい、今後のことを聞いたのですが、その時に先生から言われたことは、親として深く深く胸に刻まれることになりました。それは「娘さんには、発達に遅れが出るかもしれません」という告知でした。

 その説明に使われた資料の一つに「一般的な子供の発達曲線」が書かれていたのですが、うちの娘の「予想される発達曲線」は、ある年齢から上昇曲線を描くことなく、なだらかな円を描いていき、一般的な子供の曲線から大きく下方に描かれていたのです。

 ショックでした。何ということになってしまうのだろう、と茫然としました。まだそうと決まったわけではない、という気持ちもありましたが、「きっとそうなるんだろうな」という「諦め」にも似た気持ちにも支配されていました。

 「親として子供に申し訳ない」とも思いましたし、まだ一歳にもならない子供の将来に不安を感じ始めてもいました。「前途洋々」みたいなポジティブな言葉にアレルギーも感じていたのかもしれません。

 今となっては、当時のそのネガティブさにウンザリします(苦笑)が、障がいや病気を抱えることになった子供の親とは、そういう気持ちになるものです。そしてそれは当然でもあります。何せ、それは「親がなんとかできるような類のこと」ではないからです。無責任な表現かもしれませんが、親としてできることは極めて限られているからです。

 ただ、そのような思考から抜け出すには、親として「障がいや病気」のことを学び、理解し、受け入れ、そこから支援するものとして「何ができるか?」を考えられるようになる必要がある、と経験的に感じます。

 そこにまで到達しないと、子供のこれからに失望ばかりし、こうなったのは自分のせいだと自分を責め続けてしまうだけになります。この気持ちも当然理解しますが、それだけでは子供の未来に「いかなる変化」も生み出すことはできないでしょう。親として「変化」を望んでいたのに、です。

親として一体何ができるだろうか?

 障がいがあろうとなかろうと確かなことは、「親は決して子供の人生は歩めない」ということです。いくら自分を責めても、毎晩泣きつくしても、それだけでは、何も変わりません。

 もしあなたが「変化」を望むならば、あなたは「どんな準備」をするでしょうか?

 失敗ばかりしてきたあなたが、恋愛での成功を望むならば、あなたはどんなことをするでしょうか?どんな準備をするでしょうか?恋愛を例に考えると、答えは意外に見つかりやすいですね。

 障がいのある子供の未来は、確かに「前途洋々」とはいかないかもしれません。しかし「今日より少しでもいい状態」にはできる可能性があります。それを毎日積み重ねていけば、お子さんが18歳を迎えるころには、落ち込んで、嘆いていた自分からは想像もつかないほど、親としても「変わって」いるかもしれません。

 では、どんな準備を、どのようにすれば良いのでしょうか?これに対する、ひな型になりそうな「マニュアル的な」答えは、ありません。

 まずは「子供のこれからを、一緒に、考え続ける」ことがスタートになります。「できそうにないことを考えてもなあ」とか「いやいやそれは無理ではないか」というあなたの価値観はまず捨ててください。あなたの人生ではなく、子供の人生だからです。

 どんなことでもいいので、子供の話を黙って聞いてあげてください。うちの娘もこの前まで「プリキュアになる!」と言ってました(苦笑)が、それをそのまま受け止めましょう。

 次に「それはどうすればできるか?」を真剣に考えましょう。ここで大事なのは「できるかどうかの答えは気にしない」ということです。できないかも、ではなく、いったいどうすればできるかだけを考えるのです。

 この考え方のベースには「誰にでも、その人なりの良さや強みがある」と言う、ストレングスの考え方があるのは言うまでもありません。

 そして、ここから導き出した課題を、親として、本人として、どう取り組むかを考えます。一人ではできそうになければ、福祉、行政などで協力してくれる支援者を探します。子供のライフプラン実現のお手伝いをしてくれる人を探し出す。これこそが親に課された唯一の大事なミッションです。

 そしてあとは、成功するためにできることを、ひたすら探し続けます。もうあなたは悲しんだり、悩んだりしている場合ではありません。忙しいですから、きっと。

 そうして動き続けているあなたは、もう、「障がい児の親」ではなく、単なる「〇〇君の親」になっているはずです。頑張り続けてくださいね、きっと大丈夫。

 どいでしょう、あなたは気付く事があるはずです。それは「親ができる事」は確かに限られていますが、親が「できない・たぶん無理だ」という前提に立ってしまうと、子供はそこから逃れるのは極めて難しい、という事実です。

 この例を、僕は地域福祉の現場で沢山見てきました。そしてこの呪縛は、簡単に解くことができず、長くこの呪縛に囚われてきた子供も当然に解けない事が多いのです。

 子供に障がいがあるから、子供が不幸になるのではありません。親や支援者がそう導いてしまったり、不可能しかないのではと言う答えを準備してしまうから、子供が不幸になるのです。

 もう、親であるあなたの役割はおわかり頂けた筈です。ストレングスを信じて、未来を切り開くサポートをしようではありませんか。

 これは皆さんへのメッセージであると同時に、てんかん発作の不安の中で我が子を見守る僕自身に向けたメッセージでもあります。



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