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#9保険の必要性をあれこれ考えてみる

保険は、統計からできている。特定のAさんが死亡し保険金を支払う場合、若くて亡くなる可能性もあるが、日本全体で考えれば、0歳時の平均寿命は男性81歳、女性87歳[*1]であり、この平均値から若いほど死亡する確率は下がる(例外として0歳~4歳の死亡率は上がる)。たとえばオリックス生命の新キュアの月額保険料[*2]は、0歳1,032円、1歳969円、2歳931円、3歳924円、4歳926円、5歳934円、6歳941円となっており、0歳をピークに保険料は少しずつ下がり、4歳から年齢を重ねるにつれ保険料が上がっている。

[*1]厚生労働省「平成29年簡易生命表」

[*2]オリックス生命公式サイトでシミュレーション

1 保険で備えるべきリスク

たとえば、高齢になるほどかかる病気があるとする。病気になるとかかる治療費は5000円である。毎月の保険料は5円として、この保険に加入するだろうか。どれだけ保険料が安くても、5000円を貯蓄しておけばいいので、契約する人はいないのではないだろうか。

基本的に、保険加入の有無は想定するリスクが発生したときの金銭的負担のインパクトと発生時期で決める。リスク発生による負担が1,000万円だとしても1年後と40年後では、1年後のリスクを優先する(40年後は貯蓄すればいい)。

一方、40年後に発生する二つのリスク負担はそれぞれ、100万円と1,000万円であれば、まず1,000万円のリスクに備える必要がある。

しかし病気やケガは高齢者ほど注意が必要だとしても、年齢に関係なく、病気になったりケガをしたりする可能性は少ないがある。

2 余裕資金があれば保険は不要

家庭には様々なリスクがある。あらゆるリスクに対応することは金銭的に不可能であり、無駄も増える。では金銭的に余裕がある人はすべてのリスクをカバーするために保険に加入するかといえば、加入しない。余裕資金があれば、使い道が限定されてしまう保険より現金で保有しておいた方が、柔軟に対応できるからだ。リスクファイナンシングの「保有」に該当する。

これに対して、保険を活用する方法はリスクファイナンシングの「転嫁」と呼ばれ、一定の保険料を支払い、リスクが発生したときの負担を保険会社に移転させる方法だ。

つまり、今は余裕がなく保険を活用するとしても、目標額に達すれば保険は不要となる。保険料を無駄な支出と考えるなら、保険料支払が不要になるための資金計画を立てておく必要があるだろう。

3 家族への負担が大きいリスクは何か

リスクは様々あるが、リスクが発生したときに金銭的負担が生ずるリスクには次のようなものがある。

・死亡リスク

 -所得者の死亡により、所得が急減するリスク

・長生きリスク

 -長生きするすればするほど増加する生活費などの負担

・疾病リスク

 -病気にかかることで働けなくなり、所得が減少するリスクと医療費負担のリスク

・介護リスク

 -介護状態になったときに、費用負担が増えるリスク

・損害賠償リスク

 -他人に損害を与えてしまった場合の金銭的リスク。子供が自転車で相手をケガさせてしまった場合など注意していても防ぐのが難しいものもある。自動車を利用した場合の交通事故リスクもある。

他にも自然災害リスクなどあり、これらに家庭や地域特有のリスクがあれば、付け加えてもいいだろう。

これらのリスクのうち、心配なのは長生きリスクと介護リスクである。いずれも必要となる資金は小さくない。そのため、できるだけ長生きリスクと介護リスクにお金を回す方法がないか、いつも考えている課題の一つだ。

4 死亡リスクに備える死亡保障の必要性を考える

死亡保障が必要だと思えば、極力保険料の安い商品を選ぶことになるが、死亡保障としてどの程度の金額が必要かを考える必要があるだろう。

(1) 20歳~50歳の子育て世代

 死亡保障は一般的に子供が生まれたら検討し、加入する人が多い。必要となる死亡保障額が増えれば、その分保険料は高くなるため、必要最低限の保障額におさえる考え方も有効だ。

簡易生命表を見ると、各年齢までの生存率(対人口10万人の生存数)がわかる。

<年齢別生存率[*3]>

20歳 99.513% / 30歳 99.025% 

40歳 98.340% / 50歳 96.846%

[*3]厚生労働省「平成29年簡易生命表」

20歳や30歳の場合、1%未満の確率で発生するリスクに保険料を支払っていることがわかる。50歳になると生存率は若干下がるが、子供独立(大学卒業など)まで間近いに迫っているため、必要保障額はかなり減少しているはずである。

(2) 死亡保障額について深く考えてみる

一般的に、銀行や保険代理店の対面で加入するより、ネット経由で加入した方が保険料は安い(検討する際には保険料を比較する必要はある)。窓口相談の場合、いくつかの質問に答えるだけで必要保障額を算出してもらえるが、それをそのまま採用して問題ないだろうか。具体的な金額は出ないが、何となくの必要保障額で加入するネット保険は問題なのだろうか。

死亡保障額は、基本生活費、教育費、住居費などが含まれる。もちろん、遺族年金など公的な保障があればその金額を差し引かなければならない。

住居費について考えてみよう。住宅取得はその時の収入に応じた規模の住宅を取得しているはずである。収入を得ていた家族が亡くなり、収入が減ればその住宅に住み続けるのは、変化した収入に見合わないかもしれない。団信により住宅ローンがなくなったとしても、維持費はかかる。

そもそも死亡する確率は低いが、それでも発生してしまった場合は、実家に戻り、自宅を売却して生活費に充当する方法があり、住居費や一定期間の基本生活費を心配する必要がなくなる。生活環境が変わることに抵抗があるかもしれないが、発生する確率は低い。どちらかというと、生存している場合の生活費の負担の方が発生確率が高く、重視すべきだ、という考え方もできる。

教育費については、返済不要の奨学金の活用を考える。奨学金は、日本学生支援機構だけでなく、大学独自の奨学金もある。また自宅を売却して得た金額を教育費にあて、普段の生活費は働いて稼ぐこともできるだろう。

親の手がかかる小さい子供のころだけ死亡保障を利用し、ある程度手が離れ、働ける状況になれば、リスクが発生したとしても、働くことができる。

大学に進学させたい気持ちはわかるが、勤め先が倒産した場合の対応はしているだろうか。死亡率より、収入が減る確率の方が高い場合もあるだろう。どちらが原因で大学に行けなくても納得してもらえるのでないだろうか。

リスクが発生したときには、これまでの住宅や自動車など維持費がかかる資産をなるべく早く手放し、収入に見合う支出にすることが重要だ。また1%のリスクが発生したとしても確率的に高い方を合理的に選択したわけだから、動揺や後悔することなく次の対応を考えたい。

このように色々考えると、決して対面相談で算出される必要保障額だけが正しいとは限らないことがわかる。

万一のときを考え、取りえる手段を挙げれば必要保障額は下げることができる。一般的な基準で算出してもらった必要保障額に従わず、それを基にさらに深く考えてみてはどうだろうか。





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