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これからどうなる?気になる酒税の話

大手ビール会社4社が、今年10月からビール類を値上げするとの発表がありました。
麦などの原材料価格、アルミニウムなどの資材価格の高騰、また原油などのエネルギー価格の上昇が販売価格に反映されることになります。
各社値上げ幅は異なりますが、概ね5~13%程度の値上げになる模様です。

これらはロシアのウクライナ侵攻による価格ショックの一環と言えますが、実は酒類は今、また別な側面で値上げ(もしくは値下げ)移行期間の真っ最中であることをご存じでしょうか。

酒税法の改正

そう、いま酒類の税額が見直されているところなのです。
酒税法改正に伴い、2020年10月1日から酒税の税率が変わりました。とは言っても急激な変更は業界に与える影響が大きいとのことで、2020年10月、2023年10月、2026年10月と3段階に分けて変更されます。
ではどのお酒がどう変わるのでしょうか。

【出所:財務省ウェブサイトより】

全ての税金が上がるわけではなく、ビール、清酒(日本酒)は減税、その他が増税となっています。
ワインなどの果実酒は段階的に増税され、いずれは清酒と一本化される予定です。

驚くのはビール系飲料。
発泡酒と新ジャンル(第3のビール)は、いずれビールと同じ税率になることが決まっています。
(2023年10月1日からは、新ジャンルはすべて発泡酒に分類されます。)

段階的に税率が上がる新ジャンルは、少し前までは「安いから」「しかたなく」といった理由で選ばれていましたが、今やビールと肩を並べるくらいのクオリティです。
またカロリーオフや糖質ゼロを謳うものも多く、全体的に売れ行きは好調。増税の対象となりました。

高い日本のビール

一方でビールは減税。「安くなる」と喜びたいところですが、世界的にみると実は日本は「世界一ビールが高い国」なのです。
ビールの酒税は、日本では350mLあたり約54円ですが、アメリカでは約9円、ドイツでは約4円。税額が比較的高めのイギリスでも約46円です。
減税になったとしても、日本のビールの小売価格は相変わらず高いのです。

減税はビール復活の狼煙となるか

新型コロナ渦において、飲食店でのビール需要は低迷し、ビールはさらにシェアを落としています。一方でビール系、チューハイ系の新ジャンルは伸びています。

出所:国税庁ウェブサイトより

今回の酒税法改正は、もちろん取れるところから取る、という側面もありますが、ビールの衰退を防ぎたいという国と業界の想いを反映している気もします。

かつて日本の税収入の3割を占めていた酒税(明治32年には国税に占める割合が35.5%)。現在は2%弱に留まりますが、額にすれば1.2兆円。業界の振興も踏まえれば重要なカテゴリーであることは変わりません。

また、今回の税制改正は新型コロナ渦や、冒頭のウクライナショックなどを反映していない頃に決まった施策です。2026年の税率改正の頃は、酒類を取り巻く環境はコロナ前、そして今ともまた違った環境になっていることでしょう。

価格はどうあれ、また笑顔を見せあいながら乾杯できる日が来ることを祈りつつ、今後の動向に注目したいと思います。

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