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「信頼できるお金の話」について考えてみた

今日から、マネー記事の執筆を専門としているFP加藤梨里が、「信頼できるお金の話」についての考えをお話します。お金のことを知りたい、でもお金のことは怖い、誰を信用すればいいのか?といった疑問や不安のある方や、マネーコンテンツに関わる方に読んでいただけたら嬉しいです。


■お金のことを知りたいニーズは普遍的

私はこれまで15年間、FPとしてマネーに関する記事執筆に携わってきました。家計管理、節約、貯金、保険、資産運用、住宅、税金、相続など、ひとくちに「お金の話」といっても幅広いテーマを扱っています。

書籍、新聞や雑誌、インターネットと数多くの媒体へ寄稿する機会をいただき、記事の長短はありますが本数にすると累計1万本以上の読み物を世の中に送り出してきました。

これだけ多くの経験をさせていただけたのは、私の技量というよりも、それだけ多くの人々が「お金のことってよくわからない」「もっとよく知りたい」と思っているからにほかなりません。

いつの時代もお金は生活に欠かせないもので、私たちは常に「お金を上手に管理し、上手に使うにはどうすればいいか?」をどこかで意識しながら暮らしているのではないでしょうか。

お金のことをわかりやすく知りたいというニーズは、普遍的に存在することを肌身で感じてきました。

■マネー記事の質や信頼性は玉石混交

インターネットでの情報発信が急速に普及拡大し、マネー分野でも記事やニュースが大量に生産されるようになりました。オンライン版の新聞や雑誌が創設され、ネット専業メディアが次々と誕生し、情報発信を専業としない一般企業や個人のメディアも増えました。

ブログやSNSも含めれば、その数は数え切れません。

近年はクラウドソーシングによる記事作成の外注サービスや、生成系AIなど記事を量産するテクノロジーも発達し、マネー分野に限らず効率的に大量の情報発信が可能になりつつもあります。

しかし、とりわけ一部のネットやSNS上の記事は粗製乱造されたものも散見され、質や信頼性の面で玉石混交です。

■消費者がお金の情報を取捨選択するハードルは高くなった

情報の質や信頼性を高めるために、専門家の名前や顔写真が掲載される記事もあります。その道の権威ある有識者の方が自身で記事内容を精査したうえで掲載されているものが大半ではありますが、なかには実績が十分とは言えない方が専門家として登場していたり、専門家であっても本人の意図しない内容や文章とともにいわば名義貸しのように名前と顔写真が用いられるケースもあります。

このようなケースはほとんどの場合、インターネット検索のSEOを目的に行われています。検索エンジンの改善によりたびたび見直しはあるものの、巧妙なSEOによって内容が十分でない記事が、信頼性や権威性の高い記事よりも上位に表示されることもまま起こります。

消費者が何かを知りたいとインターネットやSNSで情報を探したとき、目立つ場所に表示されたものを読めばすぐに答えにたどり着けると思うでしょう。

また、なんとなく信頼できそうとも感じるのではないでしょうか。本当に質の高いものが最も目立つ場所にあれば問題ないでしょうが、実は裏に仕掛けがあるのだとしたら、意図せぬ取捨選択をしてしまいかねません。

また、記事には純粋に情報発信を目的とするものと、自社の商品やサービスの販促を主目的とするものがありますが、インターネット広告やステマ(ステルスマーケティング)記事、一般企業などによるオウンドメディアの増加などにより、その区別はつけにくくなってきています。

いずれにも良質な情報を提供しているウェブサイトや記事はありますが、情報発信者の目的は何なのか? 真意が、消費者側からわかりづらいものも少なくありません。

そういったことから、いま、出回る情報量は増えているにもかかわらず、消費者がマネーに関する情報を取捨選択し、自分の生活に役立てるハードルは高くなったのではないかと感じています。

Photo AC

■マネーの専門家として記事を執筆する責任

ありがたいことに私は今までにさまざまなメディアや情報媒体でマネー関連の書籍、記事の執筆や監修の仕事をしてきました。名前や顔写真を掲載いただく機会にも恵まれました。

しかし同時に、不特定多数の読者に自分の文章を通して情報をお届けすること、そして自分の名前や顔が信頼性の担保として人の目に触れることの責任について、たびたび深く考えさせられてきました。

お金の情報は、ときに受け取った人の家計や人生を左右します。インターネットコンテンツの業界では「YMYL(Your Money Your Life)」ともいわれ、医療や健康にかかわる情報とともに、特に信頼性が重要です。

そんな責任重大なジャンルを取り扱う私は、自分が書いた記事を読んでくださる人々と本当に誠実に関われているのだろうか。執筆の仕事をするたびに、そんな疑問と対峙しています。

当然ながら、信頼性の高い一次情報を確認し、内容に誤りがないよう正確に書くこと、読んだ方の誤解を招かないわかりやすい表現で説明することは大前提として、細心の注意を払っています。

編集者や校閲者の方々の多大なご協力のおかげで、これまでほとんど誤報を出さずに続けています。また、私が書いたものを読んだ方から「難しい内容だけどよくわかった」というお声をいただくこともあります。

しかしそれだけで、読者にとって本当に「信頼できるお金の話」ができていると言い切れるのか? それが私の問題意識です。

■信頼できるお金の話とはなにか?の答えを探して

この問いに向き合うには、今までのようにメディアや企業からいただく仕事としての執筆だけではなく、自ら発信する場所が必要だ。そう思ったのが、noteでの投稿を始めた理由です。

依頼をいただいて書く文章は、「読まれるか?」が重要です。紙媒体でもインターネット媒体でも、基本的には読まれなければ売上につながりませんから、「読まれるテーマ」でしか書けません。また「読ませる」タイトルや見出し、見栄え、文章にすることが、ときとして中身以上に重視されることもありえます。

つまらない本や記事より、読みたくなるものの方が、多くの人に情報を届けることができるでしょう。それは結果的に人々のニーズを満たし、誰かの役に立つことにもなるはずです。世の中で求められることに応えていくために、「読まれるか?」は不可欠な思考です。

なにより、書く「場」をいただけることはこの上なくありがたいことです。ですからこういった形の執筆活動は、これからも続けていくつもりです。

一方で、読まれるかどうかはさておき、発信者個人として伝えるべき大事なことも現実として存在します。その存在に真摯に向き合い、自分の言葉で発信することが、私の書いたものにどこかで出逢う人に信頼をお届けするために欠かせない。そこにいま取り組むべきだと感じています。

どんなジャンルでも、信頼できる情報を紡ぎ、発信するのは手間も時間も力量も、人手も要します。

そして「信頼できるかどうか」の定義や形は受け取る方の立場や環境、背景などによって異なる場合もあります。私個人の発信するコンテンツが、そのまま、お読みくださる方の信頼を常に保証できるほど、自分の信頼性が絶対だとは思っていません。

ですからこのマガジンは、私が読者の皆さんに信頼できる情報をお届けするというよりは、「信頼できるお金の話とは?」を、皆さんと一緒に模索していくものです。

筆者としてどんな思いで執筆しているか、を皆さんにお伝えすることで、「信頼性」と向き合う過程を共有できればと思っています。

また、「そんなにニーズがないテーマだから」「出しても売れないだろうから」「スポンサーの意向と合わないから」といった理由で、他者媒体では書けなかったことや十分にお伝えしきれなかったことにも向き合い、取り上げていきたいと思います。

この思いが1人ひとりに届くよう、これからも発信を続けていきたいと思います。

加藤梨里(ファイナンシャルプランナー)


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