土に還らないで、動きます。
森の中に、暮らしています。
ものすごく背の高いドングリの樹の下にお家があって、
他にも、ヤマザクラ、カラマツ、スギにヒノキ、
ものすごく背の高い樹に囲まれて、暮らしています。
これからの季節は、落ち葉にお家が沈没します。
お日様は、ほんのり木漏れ日が射すくらいだから、花壇にお花を植えても、育ちませんよ。
日陰に強い山野草だけが、ぽつりぽつりと生き伸びるだけで、後はコケだけが領地をゆっくり拡大している。
こんな森の中では、とにかく【土に還る】という力があまりにも強い。
がんばって建てた薪小屋も、ウッドデッキも、
あっという間に朽ちて、土に還ろうとします。
落ち葉を集めて積んだコンポストボックスには、カブトムシの幼虫がギャーというくらいお住まいになっていて、
そこへ生ゴミを埋めると、あっという間に形もにおいも無くなっている。
土は、生物の死骸です。
この森に暮らしていると、土に還らずにここにいるというだけで、少し誇らしく感じます。
ドングリの樹も、カラマツの樹も、
土に還る作用に抵抗して、今日も精一杯、形を残しています。
(僕の作った粗末なベンチも、まだがんばっています)
僕も同じで、このお店も同じで、
風前の灯だろうと、まだ朽ちず、腐らず、ふてくされず、
今日も形を保ちました。
腐らずにいるコツは、【動くこと】です。
水だって、止まったら、腐る。
だから動き続ける。
他人から見たら、大した動きではない。
コケの上を、優しく箒で撫でるくらいです。
社会とか、世の中とか、そういうものへ影響のある働きというものは、皆無です。
それでも、動き続ける。
ふてくされないために。