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イギリス映画ならノッティングヒルの恋人がおすすめ!

「イギリス英語を勉強するなら、どんな映画を見るのが良いですか?」



英会話教室に来てくださる大人の生徒さんに聞かれることがあります。



ザ・イギリス英語!としておすすめするのはハリーポッターや、ブリジットジョーンズ、ラブアクチュアリーも面白くておすすめです。

ちょっと考えさせられるものならカズオイシグロ原作の「わたしを離さないで」Never Let Me Goや、さざなみ..45years.




けれど個人的には、「ノッティングヒルの恋人」に勝てるイギリス映画には、まだ出会ってないのです。



ノッティングヒルの恋人は、イギリス人俳優ヒューグラント演じる冴えないバツイチの男ウィリアムと、有名ハリウッド女優アナ(ジュリアロバーツ)のラブストーリー。



恋に落ちるにはあまりにも違う二人ですが、お互いに強く惹かれあっていきます。



この映画が素晴らしいと思うのは、登場人物たちが「イギリス人すぎる!」ということです。



アメリカ人のアナと、ウィリアムを取り囲むイギリス人すぎる友人たち。このコントラストが本当に面白くて楽しい!


友人たちは派手なタイプではないけれど、時々集まって議論を交わしたり、アドバイスしあったりするのが大好きです。とくに、イギリス人ならではのジョークを言い合ったり、周りの目を気にするからこそ出てくる悩みなど。(島国根性)


ウィリアムは決して成功したお金持ちではないけれど、思慮深く優しい男です。周囲の友人たちは、繊細な彼がアナと恋に落ちていく様子を心底心配し、できるだけサポートしたいと考え協力します。


かなり風変わりなウィリアムの妹も、兄とは全く違う性格だけど、とても仲が良いのです。



イギリス人らしいと言えば、他の英語圏やラテン系の人たちに比べて、イギリス人の男性というのはわりとリアクションが小さかったり、仏頂面をしているのがクセになっている人も多い気がします。マナーや礼儀はとても大切にするので、マナーとしての笑顔は常にあるのですが。


ウィリアムの友人の一人Bernieが有名なハリウッド女優であるアナが友人の誕生日パーティーにいるわけないと思い、色々と質問するのがナチュラルに失礼なシーンがあります。


「女優っていってもなかなか稼げないよね。いくら稼いでる?」とアナに聞いたところ、桁違いの額を言われてボーゼン。必死で平静をよそおっていたのが、なんともイギリス人らしいなあと思いました。

そこであわてて謝ったり、大げさに褒めたりしないんですね。



イギリス人のモットー

Keep Calm and Carry On


"Keep Calm and Carry On" のポスター
Keep Calm and Carry On (キープ・カーム・アンド・キャリー・オン、平静を保ち、普段の生活を続けよ)とは、イギリス政府が第二次世界大戦の直前に、開戦した場合のパニックや戦局が悪化した場合の混乱に備えて作成した、国民の士気を維持するための宣伝ポスターである。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』



冷静さ[平常心]を保つ、冷静でいる、落ち着く、うろたえない、焦らない、カッとならない、慌てない、短気を起こさない。

イギリス人たるものどんな時にも、冷静さを失ってはならない。(慌てるのはカッコ悪いゾ)これ今でもイギリス人のモットーです。

私の夫も、慌てて走るとか嫌いみたいです。





私がとにかくこの映画で一番好きなのは、ウィリアムのルームメイトのスパイクです。


中年男なのにルームメイト?と不思議に思う方がいるかもしれないので一応ご説明させていただくと、ロンドンのような都市部ではルームシェアすることはけっこう普通です。

家賃がべらぼうに高い上、どこも物件はいっぱい。ですからルームメイトだからと言ってとても仲が良いとかそういうことではなく、本当に「ルームメイト」なのです。



そんなルームメイトのスパイクですが、もう見た目からおバカがあふれ出ています。


登場シーンでは「全部服が汚れてたから」という理由で、いきなりぴったりしたダイビングスーツを着ています。


「このヨーグルト腐ってるわ、変な味がする」とスパイクがウィリアムに言うと、ウィリアムが「それヨーグルトじゃないよ。マヨネーズだ」と真顔でスパイクに言うのです。

スパイクはそれを聞いて「あ、なるほどね」と納得し、その後も食べ続けます。

spike




とにかく素で本当に悪気なくおバカなので、ウィリアムはとっくの昔にスパイクに関してはあきらめたように見えます。


イギリス人の夫も、Spike is brilliant. と言って一緒に観る時はいつもスパイクのシーンで笑っています。

イギリスでは面白い人をbrilliantと言うことがよくあるのです。




そんなスパイクですが、おバカだからこそ、真理をついたことを予想外に言ったり、ピュアな心で物事を判断することができます。


私たち視聴者は「そうか。スパイクのことを笑っていたけど、これが本来正しいことなのかも」と映画が進むにつれて思わされます。



ラストになってくると、感動が徐々に押し寄せてきます。


当然のシナリオとして、冴えない中年男とハリウッド女優が釣り合うわけない、これ以上傷つきたくないとウィリアムはもうアナに会わないことを決意します。


それを友人達に報告し、意見を求めると、みんな「それで良いんだよ」と彼を励まします。



けれどアナが自分に言ってくれたセリフを思い起こすうち、「自分は間違いを犯した?」と気がつきます。


そこでスパイクが無言で、自信満々にうなずくのです。


スパイクは余計なことを考えない、というか考えるだけの頭を持ち合わせていません。

だからこそウィリアムを含め他の人たちが考えすぎて行動しなかったり、心配しすぎて臆病になる感覚が心底分からないのではないかと思うのです。

いちおう服を着て外を歩いていますが、暑い日には裸で買い物に行きそうなスパイクです。


事実、映画の中で上半身裸は日常茶飯事。


たぶんお腹が空いたらそのへんのシリアルやパンを食べますが、すかないなら食べずに過ごしそうです。

だけど、そんな風に生きることができたら気持ちが良いかもしれない。本能のまま感覚のまま。

シンプルイズベスト、なんて言うけれど、スパイクのようにシンプルに毎日を過ごしたら、全く違う世界が見えてくるのかもしれない。



何度もこの映画を観ているうち、そんな思いが強くなっていきました。




とは言え、この映画の1番のお気に入りシーンはスパイクとは全く関係ありません。


二人がついに両思い(なんとなくその言葉がしっくりくる気がします)になる、ラストシーンです。


アナのインタビューの場なのですが、



indefinitely

無期限に、無制限に、いつまでも、永久に


このセリフ、「いつまでも。」



最初日本語訳を見て、「Foreverじゃないんだ!」と英語初心者だった時は素朴にびっくりしました。


英語を理解した今では、このシチュエーションでは「期限はとくにありません」というような、いかにも事務的な感じでアナは言ったのではないかと思います。


他のインタビュアーには理解されなくて良い。ただ一人の人に伝われば良いのだから。


その事務的な感じで言ってもウィリアムには言いたいことは全て伝わる。そのセリフが究極にロマンチックに思えてきます。


同じ英語圏の国の人たちは、言葉が同じだからお互い理解できるでしょう?と思われがちですが、やはり文化や考え方の違いは一緒にいれば随所に出てきます。


アナとウィリアムも、アメリカ人とイギリス人だからこその価値観の違いを感じさせるシーンが映画にも出てきます。


この二人の場合、住む世界が違いすぎて共通項が少ない、というさらなる壁もあります。


私もイギリス人の夫と国際結婚をしているので、価値観がそもそも違う二人が話し合っても平行線になる場面、とても共感します。



けれど、それは話し合いでステップをふみ、妥協によって解決策を探すしかないし、そもそもスパイクに対するウィリアムの行動のように、この件に関しては諦める、というような思い切った対応も必要です。



この映画を観て毎回思うのは、この二人とその周囲の人たちが幸せになって、本当によかった!ということです。

この映画に出てくるキャラクターが大好きだし、今でもずっとロンドンで幸せに過ごしていてほしいと、そんな風に思わせてくれます。

ちなみにウィリアムとスパイクが住んでいたブルーのドアは、ロンドン、ノッティングヒルの有名な観光スポット。

あまりに有名なのでドアをブルーに塗る人がロンドンに増えちゃったとか。

ノッティングヒルのブルーのドア


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