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「そもそも、“価値”とは何であろうか。」

たいした事ない失敗でも、すぐに自分を責め、結局私は何も出来ないという無気力な気持ちになってしまう。


この思いを辿った人生。

スイスの方
名前はケイン。17歳。

傭兵で、闘技場に出たりして金を稼ぐ。
我流であったが、まぁまぁ腕のたつ方だった。

貧しい村出身で金を稼いでそれを持って家に帰るのが楽しみの一つ。
父も母も帰るととても喜んでくれる。
貧しいがとても愛されて育っている。

よく笑い、気の合う仲間もいて、それなりに毎日楽しく過ごしていた。


肌は白くて、金髪で背が高い。
腰には剣があり、鎧みたいなのをつけている時もある。
足は皮で作ってる靴。
皮っぽいものを巻いているズボン。


~~~~~~~~~

危険はないと思っていた今回の傭兵としての仕事。
日が沈み薄暗くなってきていた頃…仲間たちと教会の前で休憩していた所を敵に囲まれた。


気付くのが遅かった。


一瞬の静けさ…。

“土を踏み締める音”
“キリキリ…と弓を引く気配”
“息づかい”
“近づいてくる微かな金属音”

数が違う…すぐに分かった。


最初に矢が放たれる。

物陰に転がり込んで応戦の機会をさぐる。
何人か仲間がやられた。

身構えていた所に矢が飛んできて肩を撃ち抜かれた。
そして怯んだ瞬間、敵の男が間合いに入ってきた。

避けるにも間に合わない。

男の振り上げられた剣を見て死を覚悟した。

その時、目の前に踏み込んできた親友“ウィル”。
傭兵になりたての頃からの仲だった。

ウィルは目の前の敵は斬ったものの、また次の瞬間矢が飛んでくる。


「っ!!」
避けられない。

そこにウィルが覆い被さってきた。


これではウィルに矢が当たる。
「どけっ!!!」
引き剥がそうと背中を掴んだが、なぜか手が滑った。


その感触に青ざめる。


俺は…この感触を知っている。
血だ…!!


見ると覆い被さってるウィルから生温かい血が滴ってきていた。
ウィルの血が自分の体を赤く染めていく…。


ウィルはすでに怪我をしていた。

そこに降り注ぐ矢。

「どけっ!!!」

叫んでもがいたが、びくともしない。

このままじゃ友を亡くす…!!

何とかしなければ…!!


そう思った時、ウィルにこめかみの辺りを剣の柄の部分で殴られ、気を失った。


目覚めた時、辺りは静まり返っていて…何が起きたか分からなかった。


しかし現実はそれを許してくれない。

人の感触…。

ウィルだ!!

覆い被さったままウィルは…死んでいた。

ウィルだけじゃない。月明かりだけでよくは見えないが、あちこちに転がっている共に過ごしていた仲間も。


夜明け前だった。

何時間このままだったんだ?

何時間やりあってたんだ…?

明るくなれば危なくなる。


そして…

「助けられた…?」

よろよろと立ち上がり、歩きだした…。

周りに息をしている者は誰もいなかった。

もう、息のある者は脱出したのか…。

それとも…?

暗くて現場は分からない。
ただ、人の気配は無かった。


怪我は矢を受けた肩だけ。

だが、全身が痛かった。

体もひどく重かった。


頭も痛い…。


その中で思考を巡らせる…。

「なぜだ」

「怪我をしていたなら言えよ」

「何で俺を庇った」

「何で俺を守ろうとした」

「なんでだ!!!」


~~~~~~~~~~~~~

ケインの…
その映像を見ていると…

ウィルが私の側に現れた。

そして…


「人の心は考えるよりも早く動くもの」

「“守りたい”“死なせたくない”“命を懸ける”って、結構簡単にしてしまうんだよな。人間って。」

「それに、すでに俺はあの怪我じゃ助からなかった。だからせめて今までよくしてくれたケインを守りたかったんだ。」

そう言って笑っていた。

~~~~~~~~~~~~

ケインはその後傭兵を辞め、村に帰って結婚して、子どもにも恵まれた。

息子の名前に親友の名“ウィル”を貰った。

庇われて、仲間も殺され皆いなくなって、自分だけ生き延びてしまった…。
それがいつも頭をよぎる。

「ウィルはいい奴だったのに。」

「ウィルが生きるべきだったんだ。」


“自分にはそんなに価値がないのに”って思い続けてた。

ただ…。

生き延びてしまったからその分生きなければ。
奥さんも子ども…親も…家族は宝物だった。


親友が…ウィルが…どうして庇ったのか。
それはケインの生涯では分からなかった。

しかし、時空を越えて…

側に来た彼(ウィル)が教えてくれた。


「傭兵になりたての頃、俺は知り合いが誰もいなくて。そんな時足を怪我をしていて食事の配給に行けなかったんだ。ケインはそれに気付いて何も言わず顔見知りでもない俺の分まで貰いに行ってくれて渡してくれた。
その頃戦況の悪化で誰も他の奴に感心なんか持つ余裕なんかなかったのに。
そこから友になった。あの時のケインの優しさが…それがとても嬉しかった。」

その言葉を受け取ったケインは…

「そんな事で…?」

って泣いていた。



ケインの言葉。
「自分自身の“価値”って意外と自分だけで決めるものじゃないのかもな。」

大した事ない失敗で無気力になる必要はない。

“無気力”になるという事は“自分に価値がない”と思うことなんだということもケインの人生で知る事ができた。

自分の価値は自分だけで決めない方がいいのかもしれない。


そもそも、“価値”とは何であろうか。

“ただ、生きてる”

それだけでも十分なのかもしれない…。

それだけでも誰かに喜ばれてるのかもしれない…。

この人生を知ってから、自分を責めて無気力になる事が減った。

いや、失敗しても改善するためにどうするか。
という思考に変わってきた。

“知ること”

そして、

“受け入れること”

そして…

“どんな自分でも抱き締めてあげること”

少しずつではあるが、繰り返していきたいと思う。






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