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新しい夜明け Mike Bloomfield Al Kooper Stephen Stills 『Super Session』

 もう10年以上前のことだが、アル・クーパーの大ファンである大学時代の友人から、アル・クーパーのサインが入った『Super Session』のレコードをもらった。アル・クーパーの来日に合わせ、タワーレコードかどこかでサイン会が行われた際に、僕の分もサインをもらってきてくれたのだ。彼は『I Stand Alone』にサインをしてもらったそうだが、非常に嬉しかった。
 東京在住の彼とはいまでも時折会って、近況や音楽の話をしたりしている。先述のように彼はアル・クーパーの大ファンで、ボブ・ディランの最高傑作は、アル・クーパーとデヴィッド・ブロムバーグという、彼の好きな2人が参加した『New Morning』だと涼しい顔で断言して憚らない。いや、いいアルバムだけどね。ビートルズをすっ飛ばして、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを聴いていたという彼は、ビートルズのことを「かぶと虫ーズ」と呼び、大学の卒業式にジーンズ姿の私服で来た強者だが、「ディランがラップの元祖」みたいな話になったとき、「いや違う、ルー・リードが『The Original Wrapper』って曲を作ってて、俺が元祖だと言ってる(笑)」と主張し、ルー・リードのすごさを懇々と説明してくれた。
 自分で言うのもなんだが、友人なんてほとんどいなかったけれど、類は友を呼ぶで、サークルにも入らず、音楽を聴くことだけに人生のすべてをかけているような何人かの友人と一緒に、延々と煙草を吹かしつつ、一日中飽きることなく音楽談義をしていた。フィルモアがどうだとか、ジェフ・ベックのギターがどうたらとか、そんなことばかり話していた。いつも新聞を3、4誌は必ずバッグに入れて読んでいた別のある友人は、当時携帯の待ち受け画面をキング・クリムゾンの「クリムゾン・キングの宮殿」、それもよく知られた表ジャケではなく、内ジャケの妙なポーズをとったキャラにしていて笑った。
『Super Session』は、とにかく1曲目の「アルバートのシャッフル」。素晴らしいね、本当に。マイク・ブルームフィールドのギターには、まだ誰も行ったことがないような場所へ連れていってくれるような力がある。マイク・ブルームフィールドについては、ディランがローリング・ストーン誌のインタビューで、「俺が今、本当にいてくれたらと常に思うのは、マイク・ブルームフィールドだ。あのまま俺と一緒にやっていれば、今でも生きていただろうに」と語っていたのが何とも切なく、印象的だった。

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