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フードロスの解決へ、「農園パティスリー」を今冬オープン! 川崎市イチゴ農園の挑戦の日々(1)
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フードロスの解決へ、「農園パティスリー」を今冬オープン! 川崎市イチゴ農園の挑戦の日々(1)

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神奈川県川崎市麻生区。ここにサラリーマンから都市農業の経営者へと、華麗な転身を遂げた人物がいる。安藤 圭太さん、34歳(写真右)だ。

彼が昨年オープンしたイチゴ農園“Slow Farm”は新宿から最寄り駅まで電車で約30分と、都心からのアクセスは抜群。遠方地を訪れることなく、”完熟イチゴ”を購入でき、収穫時期にはイチゴ狩りも楽しめるとあって、多くのメディアの注目を集めた。

そんな“Slow Farm”では現在、昨年仲間入りした某有名菓子店での勤務経験を持つパティシエ、関根 夏子さん(写真左)が牽引役となり、農園パティスリーのオープン準備を進めているという。

なぜ、イチゴ農園がパティスリーを開くのか? 一体、どんな事業ビジョンを思い描いているのか?

二人への取材を通して、そのベールを紐解いていく。

■人生の一大決心

安藤さんは大学卒業後、某大手旅行代理店で10年の勤務経験があるという。そもそもなぜ、旅行代理店の仕事に興味を持ったのだろうか?

「大学時代、これをやりたい!といった強い志がなくて…。ただ、漠然と世界を股にかけて働きたいという気持ちだけはあったんですよね。それで国際的なスキルを磨くために、旅行代理店で働くことにしたんです。国内の法人向けセールスからはじまって、海外の支店で働いていたこともあります」

元々、独立志向が強かった安藤さん。結婚を機に「自分のキャリアは、このままでいいのだろうか」といった疑問を持ちはじめ、勤務10年の節目で会社を辞めることに。そして、独立のための事業としてさまざまな候補を検討する中、辿り着いた答えが“農業”だったのだそう。

「農業にしたのは、実家が農家を営んでいるのが大きかったですね。ある程度の農機具は揃っていましたし。あと、自分なら前の仕事の経験や知識を活かして、ここ川崎市麻生区で、新しい形の都市農業にチャレンジできるかもしれないと感じたのも魅力的でした

2018年、当時31歳で人生の一大決心をした安藤さん。その船出は順調ではなく、農園のオープンに際し、二つの大きな課題に直面することになった。

■イチゴに決めたきっかけ

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「はじめに時間をかけて取り組んだのは、”なにを栽培するべきか“という課題でした。それが決まらないことには事業計画書も作成できないので。イチゴかトマトか胡蝶蘭か、どれにするか悩みに悩み、選んだのがイチゴでした」

決断の決め手には、東北のとある大規模農家さんとの出会いがあったのだそう。

「その農家さんは一粒千円のブランドイチゴを販売していて、農業界では知らない人がいないほどの有名人。彼の農園を視察する機会があり、貴重な話をたくさん聞かせてもらいました。中でも印象的だったのが、“なぜイチゴが一粒千円で売れるのか”についての理由です。その方曰く、『完熟ギリギリでイチゴを収穫して、東北から東京まで揺れないトラックを探し、輸送方法を工夫することで、美味しいイチゴを潰すことなく消費者に届けることができる。それがイチゴの高付加価値化につながっているのだ』と」

安藤さんその話に衝撃を受ける。と同時に、新しい都市農業の着想を得る転換点にもなった。

「未完熟のイチゴと完熟のイチゴでは、味や香り、重さに大きな差が出るんです。スーパーなどで一般的に流通しているのは前者です。東北の農家さんは、都心から離れていながらにして、完熟品を届けることに成功し、イチゴの高付加価値化を実現している。であれば、より都心に近い川崎で、完熟イチゴを収穫して消費者に提供することができたら、それだけで相当な優位性があるんじゃないか。そんな考えが、ぱっと頭に浮かんできたんです」

こうして安藤さんは、イチゴの栽培を決意。2018年夏から、農地確保に向け、地主さんとの交渉がはじまった。

■都市農業で利益を出すために

「二つ目の課題は農地確保です。農業は規模も重要なんです。小規模で栽培すれば付加価値の高いイチゴを提供しやすいですけど、それだとやっぱり利益が限られてしまう。ある程度の規模がないと、効率も上がっていかないので、規模を出したいと思ったんですよね。私は、『小規模生産×高付加価値』と『大規模生産×薄利』の良いところ取り、ちょうど真ん中を狙える「中規模×高付加価値化による厚利」を実現し、都市農業をより発展させたいと考えました。そのためにも、実家の農地とは別に、新しい農地を確保する必要があったんです」

“地主さんとの交渉は、順調に進んだのか?”

「いやー、紆余曲折でしたね。やっぱり見ず知らずの人には誰も貸したがらないんですよ。ただ、毎週のように縁のあった地主さんと話合いを重ねたところ、半年ほどで交渉が上手くまとまり、1ヘクタールの農地を借り上げできることになりました。私の新しい都市農業にかける思いが地主さんに伝わり、ホッとしたのを覚えています。イチゴの栽培は、2019年4月からスタートしました」

■初年度の成功の裏には

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“初年度の栽培は、思い通りにならない苦労も多かったのでは?”

「それがそうでもなくて(笑)。元々、実家が農家なのは大きいですね。こうすれば野菜は育つという原理原則は祖父や両親からある程度教わっていましたので。あとは周りのサポートにも助けられました。川崎市内には他にも何軒かイチゴ農家さんがいて、LINEグループに入れてもらったりして。“いまこんな作業しているよ”みたいな情報共有は、ものすごい参考になりました。ただ、水やりだけは、想像を遥かに超えて大変でしたね」

イチゴと同時並行で、夏野菜も栽培していた安藤さん。朝5時半に起床し、イチゴ畑に水やりを行い、夏野菜を出荷して、また水やり。「いまは機械で自動化しているんですけど、最初の年は1日3時間以上は水やりで。このマニュアル作業、えげつないなと感じていました(笑)」

そんな安藤さんの苦労と情熱が実を結び、イチゴの栽培に成功。2020年1月、川崎市麻生区早野に、完熟いちごの直売といちご狩りを楽しめる農園、“Slow Farm”がオープンした。

「オープン後はたくさんのお客さまにお越しいただけました。完熟イチゴの感想をSNSにアップいただいたり、家族でいちご狩りを楽しんでいる姿を見ることができたのは、本当に嬉しかったです。もちろん売り上げが伸びると、やりがいもありますよね。大きな失敗は今のところありませんが、ひとつ想定外の問題が起こりまして…。それが、イチゴのフードロスです

■農園パティスリー、オープンのきっかけ

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「1年目のシーズンが終わったときに、結構な量のロスが出たんです。病気になってしまったイチゴや、傷がついて販売できないイチゴが大量に。ゴミ袋3つ分ぐらいの量のロスが出た月もあって、ユンボで畑に穴を掘って埋めていたんです。毎日のように。“これは改善できたとしても、相当なロスが出るな”と頭を抱えました。その問題を解決するために考えたのが、ロス品を原料にしたジャムなどの加工品作りです。

加工品は、子育てで現役を退いたパティシエの方を中心に採用し、1日に2~3時間程度のシフト制で作ってもらい、販売できたら良いなと、最初は軽い気持ちで考えていました」

その後、パティシエ募集をインスタグラムのストーリーで告知したところ、最初の応募者が現在農園パティスリー”Slow Sweets”でChefを務める関根さんだったのだそう。

面接時に、安藤さんは度肝を抜かれることになる。関根さんの経歴が、某有名パティスリーで20年の経験を持つ一流のパティシエだったからだ。

(2)関根さんへのインタビューに続く。

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Slow Farm 早野圃場 
住所:〒215-0016 神奈川県川崎市麻生区早野246 
電話:080-9665-3656 (営業時間10時~17時) 

■公式HP
https://www.slowfarm.jp/

■Facebook
https://www.facebook.com/Slowfarm.Strawberry/

■Instagram
https://www.instagram.com/slowfarm_strawberry/
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