投資デビューは保険勧誘がきっかけ|投資ブロガー・虫とり小僧 第1話
スマホの普及により、主たる情報源はネットを通じて得ることが当たり前となった昨今、投資の際に参考とする情報源としていわゆる「投資ブログ」の存在感や影響力は年々増しています。
今回のインタビューでは、著名な投資ブロガーである虫とり小僧さん(以下、虫とりさん)にお話を伺いました。何ともユニークなお名前ですが、幼少期に虫とりが大好きでこのハンドルネームにしたとのこと(笑)。デイトレードをバリバリやるセミプロ投資家/専業投資家ではなく、サラリーマンをやりながら地道に投資を15年近く実践されてきた経験は、投資初心者の方には大いに参考になる内容だと思います。
虫とりさんがどのように今のような投資スタイルに行き着いたのか?インデックス投資のポイントとは何か?ということを中心にインデックス投資のエッセンスに迫っていきたいと思います。全4話ですので、ぜひお付き合いください。
虫とり小僧
「いつか子供に伝えたいお金の話」を運営する著名な投資ブロガ―。
インデックス投資(投資信託を使った国際分散投資)による資産運用・各種保険・クレジットカード・節約方法など学校では教えてくれない「お金」に関することを書き綴っている。
【今回のポイント】
✓疑問に思ったことはとにかく徹底的に調べることが癖。情報をそのまま鵜吞みにせず、ちゃんと自分で考えるようにしている。
✓人間は感情的な生き物とつくづく実感。すべて完璧に勉強してから投資をはじめようとして、そもそもはじめる前に疲れてしまう人も多い。
✓北村慶氏の『貧乏人のデイトレ 金持ちのインベストメント―ノーベル賞学者とスイス人富豪に学ぶ智恵』は非常に参考になった。
―まずはじめに、どういうきっかけで投資をはじめたか教えてもらえますか?
2005年頃に結婚を考えていたんですが、結婚するなら男たる者、男の責任として「保険」に入らないといけないと漠然と思っていました(笑)。そんな時、その時の上司にちょうど保険の営業マンを紹介されました。
会ってみると、終身保険というものを勧められました。毎月5万円弱の保険料を30年払うと、30年で元本が120%増えるという保険だったと記憶しています。
当時は金融知識が全くなかったので、お金が増えて、しかも死亡保障までつけてくれるならとても良い商品だなと素直に思いました。でも、ふと、「そもそも、なぜ支払った以上に保険会社はお金を返してくれるのか?」と疑問に思い、色々調べることにしました。
―疑問に思ったことをちゃんと徹底的に調べる姿勢を尊敬します!どんなことが分かったんですか?
どうやら保険会社も「資産運用」というものをしているらしいということが分かりました。保険会社が具体的にどういう資産運用をしているかは分からなかったのですが、世界全体の株式市場が30年でなんと約10倍になっているという衝撃のデータを発見してしまいました。
なるほど、30年で10倍にできる方法があるわけだから、保険会社は私にお金を120%に増やして返してくれて、それでもビジネスとして成り立つわけだと納得しました。一方で、「だったら保険を買うよりも、自分で投資をやったほうがお得なのでは?」と思いはじめ、投資の世界に足を踏み入れることになったんです。
―なるほど、投資デビューは保険勧誘がきっかけだったんですね。その保険の営業マンがいなければ、虫とりさんのブログは誕生しなかったんですね!ブログ「いつか子供に伝えたいお金の話」はいつからはじめたのですか?
ブログを書き始めたのは、投資をはじめて8年経過した2013年です。
2013年頃には、すでに著名ないわゆる「インデックス投資ブロガー」(※)がたくさんいて競争率が激しく、やろうか正直少し迷ったんです。
(※)インデックス投資ブロガー:主にインデックス投資で国際分散投資を行っている投資ブロガー。インデックス投資とは、市場全体の平均的な運用成果を求めて投資する手法のこと。反対に市場平均を上回る運用成果を求める投資手法をアクティブ投資と呼ぶ。運用コストは一般的にはインデックス投資のほうが安い。
でも、とにかく自分の記録のため、そして家族に自分の考えが分かるようにしておこうと書き続けることにしました。
―2013年からずっと継続しているのはすごいことだと思います。ところで、ブログには読者からどんな反応が返ってくるんですか?
質問やコメントは週に数個くるのですが、その内容にトレンドがあって興味深いです。相場の上下と連動しているのですよね。
株式市場が良くなってくると「平均点を狙うインデックス投資こそ最も効率的で最高の投資手法だ!」というトーンになるのですが、さらに株式市場の調子が良くなると、「インデックス投資なんかよりもっと良い方法があるのに、なぜインデックス投資なんかやるの?」という風に変化します。
そして、株式市場が下落すると、「そもそも投資なんかしている奴は情弱(情報弱者)だ!」と批判されるんです。なんというか、つくづく人間は感情的な生き物だなって思いますね(笑)。
一方で、合理的になろうと、すべて完璧に勉強してから投資をはじめようとして、はじめる前に疲れてしまう人もいるので、人間ってなんかよくわからないのが面白いですよね(笑)。
―そうやって非合理的なのが人間らしさって感じはしますよね(笑)。虫とりさんご自身は、合理的なほうなのでしょうか?
私自身は、お金については合理的に考えるほうだと思います。疑問に思ったことはとにかく徹底的に調べることが癖なんですよね。情報をそのまま鵜吞みにせず、ちゃんと自分で考えるようにもしています。
あと、数字的な裏付け(データ)も重視します。データから何か傾向が読み取れたとしても、その根拠となるデータ期間が、5~10年だと景気の一循環に過ぎないのであまり信じず、少なくても20~30年は欲しいところですね。データ期間が長すぎても意味はないと思いますが。
性格的に少しオタクなところがあるんですよ(笑)。ハンドルネームにしている虫とりは子供の頃にハマりましたし、温泉が大好きで温泉ソムリエの資格をとったり、学生の頃はプロになろうかと思うほど筋トレにハマったり、小説を書くことにもハマりました。ハマると徹底的にやるタイプなんだと思います(笑)。
―ストイックなまでに超合理的じゃないですか!(笑)。データなどの根拠を重視する虫とりさんの情報収集源は何ですか?
まずは本ですね。投資をはじめた頃は、図書館で経済や金融に関連する本を徹底的に読みました。マクロ経済学、ミクロ経済学、金融論など手当たり次第勉強しましたが、具体的な投資手法には直接結びつかない内容も多かったので、正直ちょっと遠回りしたなと思いますね。
あの頃は、個人が投資について簡単に勉強できる本は少なかったんですよ。ただ、この時の経済や金融の学問的な部分のインプットで、資本主義の本質的な仕組みや、大きな景気循環に関する理解が深まったので結果的には良かったんですけどね。人生に無駄はないですね。
―本当に勉強家ですね!特に影響を受けた本はありますか?
1つあげるとすると、北村慶氏の『貧乏人のデイトレ 金持ちのインベストメント―ノーベル賞学者とスイス人富豪に学ぶ智恵』です。
確か2006年の本だったと思うんですが、この本で、短期志向のデイトレではない投資手法を学びました。インデックス投資、現代ポートフォリオ理論、アセットアロケーションとリバランスの重要性などを徹底的に叩き込みました。
あとは、『ウォール街のランダムウォーカー―株式投資の不滅の真理』と『敗者のゲーム』からも大きな影響を受けました。これらの本は本当に名著だと思います。
【編集者の感想】
保険勧誘がなければ、投資ブロガー「虫とり小僧」は誕生しなかったかと思うと感慨深いものがありました。虫とりさんの分からないことはとことん追求する姿勢は本当に尊敬しますし、個人投資家の鏡だなと思いました。虫とりさんほどストイックにできる人はなかなかいないと思いますが、投資をするに際して、そういう姿勢は持っていることが重要なのかもしれません。次回は虫とりさんの投資手法について深く聞いていきます。(つづく)
投資ブロガー・虫とり小僧
【第1話】投資デビューは保険勧誘がきっかけ
【第2話】時間をかけない”高コスパ”の投資手法を重視
【第3話】継続のコツは短期的な成果は見ないこと
【第4話】投資普及の鍵は"強制的"成功体験を積ませる仕組み
取材・文・編集/野水瑛介(FOUND編集部)、写真/荻原美津雄
株式会社FOLIO
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2983号
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