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ショートショート #9 『戦力で押したいお洒落』

「大佐。たとえばボクのこの髪型とか、服のチョイスだよね。世界中でネタにされてるけど、イメージ戦略、間違ってない?」
「いえ、閣下。閣下のセンスは他の追随を許しません」
「それって、浮いてるってことだよね」

 すると突然、大佐の足元の床が開いて、椅子ごと落下した。奈落には、無数のイリエワニの放たれた生簀が控えている。
「もっと後押ししてくれないと! ボクの才能が埋もれちゃう!」

 かくて閣下の軍隊は、電撃的に国境を越えた。捕虜は悉く閣下と同じ髪型同じ服装を強制され、それがさる人権団体を通じて世界中に報じられたもので、国連で激しく糾弾された。

「なんか、おかしくね?」
「忠誠を誓わせるためです、閣下」
「いや、そうじゃなくて…。ちょっとボク、恥ずかしい人みたいになってない?」
「そのボタンは…」
「うるさい!」

 すると閣下の椅子が火を吹いて、空高く舞い上がった。同時刻、核ミサイルが発射されたとして隣国の迎撃システムが即座に作動した。

(410字)

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