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航海日誌

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読書とは、本という無数の寄港地にしばし停泊するようなもの。その場合、海とは人生である。そして読書そのものもまた、凪があれば、嵐もある、難所を越えることもあれば、座礁することもある…
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#物語りの構造

航海日誌♯2「井伏鱒二『普門院さん』試論、あるいは縁の下の神様」前編

航海日誌♯2「井伏鱒二『普門院さん』試論、あるいは縁の下の神様」前編

 岩波新書から出ている大江健三郎の『あいまいな日本の私』を読んでおりましたところが、それに収録された井伏鱒二についての講演が出色でございまして。触発されて久しぶりに井伏鱒二の短編を二、三読むうちに、これが止まらなくなった。なるほど、大した作家だと改めて痛感させられた次第なんです。
 新潮文庫の『かきつばた・無心状』をまずは書棚から引っ張り出してきて読んだんですけど、我ながら驚いたことに、これが初読

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