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ひとりでも多くの子どもたちに「七五三」を〜「七五三応援プロジェクト」誕生秘話〜

 七五三の年齢になったら、家族みんなで晴れ着を着て御参りに行き、記念写真を撮る。

 多くのご家庭で当たり前のように行われているこのお祝いも、児童養護施設などで暮らす子どもたちには難しいこともあります。

 そこで、わたしたちが始めたのが、児童養護施設で暮らす子どもたちに出張撮影「fotowa」の七五三撮影をプレゼントする「七五三応援プロジェクト」です。2021年から開始し、今年で3年目を迎えています。

「七五三応援プロジェクト」は毎年秋に募集開始し、抽選で最大5施設様に贈呈しています

 今回は、fotowaがなぜこのプロジェクトをはじめたのか、その理由と開催までの舞台裏についてお話します。

きっかけはコロナ禍の「思い出不足」

 fotowaがこのプロジェクトを始めたきっかけは、コロナ禍でした。

 マスク生活に黙食、行動制限。
 運動会や遠足などの学校行事も、お祭りなどの地域イベントも軒並み中止になり、人との交流や思い出づくりが難しくなっていました。

 様々な体験の機会が奪われるなか、各家庭では、それでもなんとか様々な工夫を凝らして生活しているという話が聞こえてきた一方で、児童養護施設では地域社会との交流やボランティア活動も減少していると耳にしました。
 もちろん、職員の方々も様々な努力や工夫をされていることでしょう。
 それでも、難しいことや限界もきっとある。

 じゃあ、この子たちはどうやって思い出をつくればいいんだろう、と思いました。
 fotowaに、何かできることはないだろうか、と。

 幸い、fotowaは「出張撮影」というスタイルの撮影をしています。
 ご指定の場所にうかがって撮影ができるのが特徴です。
 屋外での撮影もできるので、密を避けることも可能です。
 これなら、受け入れてくれる施設があるかもしれません。

 せめて、七五三を迎える子どもたちにfotowaの撮影をプレゼントしたい。
 晴れ着姿をプロのフォトグラファーに撮ってもらう、この歳ならではの思い出を残してあげたい。
 そう思ったのがはじまりでした。

繁忙期ゆえの不安と葛藤

 一方で、不安や葛藤もありました。
「晴れ着姿の思い出をプロの手で残す七五三」を届けたいと思っても、fotowaが提供できるのは、撮影のみ。
 通常、衣装はご自身で用意してもらっています。

 でも、児童養護施設で着物を用意するのは難しいところもあるかもしれません。だからといって、七五三の思い出づくりに、衣装なしでは味気ない。
 「晴れ着と記念写真」
 これを叶えるには、このプロジェクトに共感して、衣装を無償で提供してくれる協力企業の力が必要です。
 でも、10月・11月は七五三の繁忙期。
 衣装レンタル事業社にとって、一年で最も忙しく、衣装の在庫も厳しくなることは容易に想像できます。
 そんな時期に、このプロジェクトの為に衣装を確保してもらうことなどできるのか。

 初めての試みで、どのくらいの施設から応募があるのか、何人分の衣装が必要になるのかもわかりません。

 プロジェクト概要資料をつくり、衣装レンタル業者を周り、オンラインミーティングの場を設けてもらって地道に説明を重ねました。

 ありがたいことに、各衣装レンタル業者さんたちもプロジェクトに賛同の意を示してくださいましたが、やはり繁忙期。なかなか衣装の確保が難しいのが現実でした。

 そんな中、「私たちにできる限りのことを」と、心強いお言葉をかけてくださったのが株式会社RENCA様でした。開始から今日に至るまで、多大なるご厚意で多くの衣装をご提供くださっています。
 きめ細やかな対応と心配りには、何度感謝を申し上げても足りません。

 fotowaには、もうひとつ不安がありました。
 それは、fotowaのフォトグラファーたちの気持ちとスケジュールです。

 フォトグラファーにとっても七五三は繁忙期です。
 fotowaとしても、フォトグラファーの目の回るような忙しさは重々承知しています。
 そんな心身ともに余裕を持ちづらい中で、プロジェクトに賛同してもらえるのか。負担にならないのか。そう思いながら、おそるおそるプロジェクト実施を告知しました。

 すると、「以前から自分になにかできないか考えていた」「無報酬でいいから施設の子どもたちの七五三を撮ってあげたい」など、多くのフォトグラファーから涙が出るほどの温かい反応をもらったのです。

 こうして、各方面からの優しい気持ちに背中を押され、このプロジェクトは動き出しました。

子どもたちの心に残る体験を

 fotowaが常々願うのは、撮影そのものが「楽しい思い出」になることです。
 自分が子どもだった頃を思い返してみても、子どもにとって、七五三はさほど楽しいものではないように思います。
 ご祈祷も静かに座ってないといけなくて退屈だったし、写真撮影でも「そこに立って」「笑って」などと言われて、笑えやしませんでした。
 言われるがままに、写真を撮りたがる大人たちに付き合ってあげてるような感覚だったように記憶しています。
(おかげで、自分の七五三の写真は、どこか退屈そうな顔をしています……苦笑)

 だから、大人に仕方なく付き合うような撮影じゃなくて、みんなで一緒に楽しめるような撮影時間を届けたい。畏まったポーズや作り笑いじゃなくて、リラックスして自然体でいながら、溢れ出た笑顔を残したい。そうして「楽しかったね」と言い合えるような素敵な時間にしたい。

 今は七五三の意味も何もわからなくても、いつか七五三がどういう行事なのか、わかる日も来るでしょう。
 その時、写真の中の楽しそうな自分の笑顔と、一緒に写る大人たちの柔らかな眼差しを見て、当時はわからなかった大人たちの想いに、ふと気づいて、励みになればと、そう思うからです。

あらゆる子どもたちに、大切に育てられた記憶を残したい

 fotowaは写真の力を信じています。
 楽しかった記憶をいつでも思い出せる写真は、きっと子どもたちの未来を支える力になるはずです。

 これから先、子どもたちの成長に伴い、さまざまなことに悩んだり、落ち込むこともあるでしょう。

 そんなときには、fotowaで撮影した七五三の写真を見て、自分の成長を祝い、温かい眼差しを向けていた、たくさんの人々がいたことを思い出してもらえたらと思います。
 あなたが、たくさんの人たちに想われた大切な存在だということ。
 そして、健やかな成長としあわせな未来を願われた存在だということを。

 はじめて、七五三応援プロジェクトで撮影した児童養護施設の職員の方々からは、後日、心温まるお手紙をいただきました。

 素敵な企画をありがとうございました。
 緊張している子も多かったですが、撮影の後はみんな「かわいくしてもらった!」「かっこいい写真取ってもらった!」と嬉しそうに話してくれました。
 また出来上がりの写真も「見せて、見せて!」とみんな、何度も何度も嬉しそうに見返していました。
 子どもたちが大人になった時、見返して、今回の経験を思い返してもらえると良いなと思っています。

児童養護施設の職員からの手紙より

 この度は、七五三の写真撮影の機会を与えてくださり、誠にありがとうございます!
園でも七五三祝はしていましたが、なかなか着物を着せてまではあげられず「施設だから……」と半ば諦めてしまっている部分がありました。
 ですが、今回こうやって、かわいい着物やカッコイイ袴を着ての写真撮影の機会をいただき、温かい支援の気持ちに心強さを感じ、また「できるんだ」と気づかせていただきました。
 子どもたちも「大切にしてもらったな」と実感できる思い出になること、間違いありません。
 わたしも、あれこれ思い出しながら、時に「ふふ……♡」と笑いながら見返しています。
 本当に本当に、ありがとうございました。

児童養護施設の職員からの手紙より

「コロナ禍だから……」と考えたプロジェクトでしたが、お手紙をいただいて、これは継続するべきプロジェクトだと思いました。

 いつか、この日の写真が子どもたちの力になることを願って。

 fotowaは、これからも続けられる限り、一人でも多くの子どもが七五三の思い出づくりができるよう、活動を続けたいと考えています。

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