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パッシブデザインとプランニング ~2階→1階リビングの選択 その2~

1985月刊コラム

こんにちは。1985理事の米谷です。
前回に引き続き、「2階リビング⇒1階リビングの選択」のつづきです。
今回のテーマは、この選択をする際に配慮しておきたい点についてお話します。

■前回のおさらい


前回は図のような南側に建物がある宅地Cにおいて、
プランを考える話題でした。
ネコちゃんのように、
素直に気持ちのいい場所を探して、
長時間暮らせるような建築のカタチにしてはどうか?
というひとつの提案です。
オーソドックスに1階にリビングを設け、
2階の吹き抜けから日射を得るプランニングの他に
もともと陽当たりがよい2階に「居場所」を設ける選択肢を
提案してみました。


■2階リビングの短所


さて、つくり手が2階リビングを提案するにあたって
躊躇してしまう短所を挙げてみましょう。
短所1.上下階移動の頻度の多さ。
短所2.将来(加齢などの影響)の階段の昇り降りに対する不安。
短所3.接地性(外部~居間、居間~庭)が低い。
短所4.設備配管の長さが増えることによるイニシャルコスト増。

LDKが近接してあり、寝室が他の階にある場合。
外で仕事や学校に行く住人が夕食と朝食を摂るには、
1階リビングなら上下階移動は最小で1回ですが、
2階リビングでは2回は必要になります。

この他、最近はリビング階段が流行っているので、
個室にいる子供の様子を親がわかりにくくなるといったことも
短所になるかも知れませんね。
短所4以外は、上下階と内外の移動や連続性がポイントのようです。

■2階リビングを提案するときに配慮したいこと


私が2階リビングを提案するときは、
日照のほかに、
2階の眺望の良さ、
前面道路の車や人通りの多さ、
プライバシーの確保の難しさなどの
条件を確認してからです。





短所1や2の上下階移動の難点に対しては、以下のように考えています。
ひとつ目は、
リビングがある階に浴室を含む水廻りと一寝室をまとめ設けることです。
つまり、一旦2階に上がってしまえば、
一通りの生活が完結できるようにしています。
寝室は4帖半程度でもよいと思います。
親と就学前の子供さんと一緒に寝ることができる広さがあれば
よいと思います。
2つ目は、
階段は勾配を緩やかにし、
幅は十分にとり、
踊り場をできるだけ広くとるようにしています。
当たり前のことですが、階段の移動をしやすくしておくことです。
確か?吉村順三さんが
「踏み面と蹴上の寸法合計が尺五寸(455mm)が登りやすい」と
おっしゃっていたように思います。
私はこれを目安に、踏み面250mm程度、蹴上200mm未満にしています。
3つ目は、
夫婦だけの生活になった時に1階に浴室などの水廻りを設けるリフォームができるような構造にしておくことです。
具体的には、1階に一間巾(1820mm)の2~3坪分を
納戸や書斎として設けておくと容易にリフォームができると思います。
単に「2階リビングしましょう!」というと抵抗感があると思いますが、
随分と提案しやすくなったのではないでしょうか?
リビングの掃き出し窓の外に、少し余裕のあるバルコニーを設けたり、
2階の設備配管のつなぎ目を確認できるように、点検口も準備しておきたいものですね。


■提案するアイデアの1つとして


南側に建物がある敷地条件、
建て主の年齢、
将来希望される暮らし方などの
さまざまな設計条件を読み解き、
それに応える最適解をカタチにするのが私たちの仕事だとすると、
オーソドックスな2階吹き抜け案も一案ですが、
2階リビングの提案も一案だと思います。
パッシブデザインにとって、
断熱・気密、日射利用暖房、日射遮蔽、通風、昼光利用といった
設計要素を整えることは大事なのですが、
その多くは「部分の技術」であるので、
部分に関心が向く傾向にあると思います。
しかし、私たちは様々な固有条件を鳥瞰的にみて、
様々な住まい手の暮らしに向き合い、
そこから最適解となる配置や間取り、
部屋の構成をカタチづくっていきます。
部分の優劣に一喜一憂しないように、
カタチのアイデアの数は多い方がよいと思います。
 
 


高須賀晋さん設計の大北邸、永田昌民さんの吉祥寺の家など
2階リビングの名作住宅が数多くあります。
私が学生から社会人になりたての頃、雑誌を見て釘付けになりました。
パッシブデザインの視点からみれば不十分に見えても、
そのカタチや構成をポケットに入れておいて、損はないと思います。






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