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オーストラリアの子どもがスポーツを楽しめる5つの理由

こんにちは。大家族フォーサイス家のJoeです。

僕は小学校3年生から大学まで、日本とオーストラリアで計14年間ラグビーをプレーしました。レスタータイガーズというイギリスのプロラグビーチームが日本で実施した子ども向けラグビー教室にコーチや通訳として携わったこともあります。

選手&コーチの立場で気づいた日豪のコーチングの違いについて綴ります。
*子ども=大学生までと定義して使っています

1)練習時間の短さ


オーストラリアは練習と試合の割合が2:1。平日に2日(例:火・木)それぞれ2時間の練習があり、土曜日に試合をするというのが一般的です。日本と比較すると、圧倒的に試合の割合が多いです。

【練習メニュー】
火曜日 19:00-21:00 
フィットネスを1時間程度、残りはポジション毎に分かれてのスキルトレーニング。

木曜日 19:00-21:00
軽いフィットネスをした後、試合のメンバーが発表されて、試合に向けた実践的な練習を行う。

練習時間が長くないので、試合前にヘトヘトになることはないですし、練習を嫌だと思ったことはないです。むしろ、練習後にクラブハウスでみんなで食べるBBQが楽しみでした。

2) シーズン制

日本だと年中同じスポーツをしますよね。35度を超える真夏日にひたすら走らされていた高校時代が思い出されます。

一方でオーストラリアにはスポーツごとに季節性があります。例えば、ラグビーは冬のスポーツで、一年のうち4〜5ヶ月しかプレーしません。それ以外の時間は、夏のスポーツであるクリケットなど、別のプレーする人が大半です。

そのため、u20オーストラリア代表には、クリケットとラグビーの両方に同じ選手が選ばれることが時々あります。色々なスポーツをプレーすることで、何が自分に一番あっているか知ることもできますし、別のスポーツで学んだことが活きることも大いにあります。

東京オリンピック・パラピンピックを見ても、オーストラリアの人口あたりのメダル数が異常に多いのは、スポーツにシーズン制があることが一つの要因かもしれません。

3)1軍以外の扱い

日本の部活動は練習が中心で、1軍に入れない人は試合経験が積めません。野球では、永遠と球拾いをさせられ公式戦に一度も出ずに引退したという話も聞きます。

僕が所属していた、創部130年を超えるWestern Sydney Two Blues (旧Parramatta Two Blues)では、1-4軍までチームがありました。毎週土曜日には、同じグラウンドで1~4軍の試合がありました。

早朝に行われる4軍の試合では、1-3軍の選手がアーチを作って選手を送り出してくれます。また、「1軍だから偉い」という空気はなく、同じチームという一体感さえ感じます。上のチームに上がるためには、4軍の選手が試合後に3軍のベンチに座って出番を待ち、活躍すれば次週3軍での出場の可能性が高まります。流動性が結構あるので、4軍から1軍まで登り詰める選手も出てきます。

余談ですが、2014年に僕はu20の2軍チームのキャプテンを務めました。(クラブ史上日本出身選手で初と言われました)。オーストラリア、フィジー、トンガ、ニュージーランド、サモア、ナイジェリアなど、様々な国の仲間たちとプレーをした経験は宝物です。

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2軍のメンバーを送り出してくれる1, 3, 4軍の選手たち


4)コーチの位置づけ

2017年にレスタータイガーズが日本人の子ども向けに実施した3日間のラグビー合宿が印象的でした。

イングランドのプロチーム所属のコーチたちは、日本の子どもたちを2チームに分け、ボールを与えます。「GO!」の合図とともにプレーが始まりますが、子どもたちは外にいる日本人のコーチたちの顔色を窺っています。プレーが中断すると、レスターのコーチは一人ひとりの子どもに「今何が良かった?」「何をすればもっと良くなる?」「もっと楽しくするために新しいルールを作って」と訊くのです。

すると、3日目には、子どもたちが自分の頭で考え、仲間と意思疎通をはかり、伸び伸びとプレーをしていました。

レスターのコーチにコーチの役割について尋ねると「私たちは何も教えません。あくまで選手の自主性を引き出すのがコーチ。選手に答えはないことを伝え、挑戦させる。考えさせる。それを繰り返すことで、自分の頭で考え、仲間と話し合って試合を作れるようになる。日本の子どもたちは素直でこの好循環を作り出せました」

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振り返ると、日本でラグビーをしていた時、コーチに怒られないようにビクビクしていたし、コーチや監督の指示に従うことが多かった。レスターの合宿で一番勉強になったのは、実は参加していた日本人のコーチたちで「指導方法を考えさせられた。コーチのエゴはだめだね」と口にしていました。

レスターのコーチも資格を持っているとは言え、プロやセミプロ以外を教えているのはボランティアだそうです。ボランティアのコーチでもしっかり勉強して子ども第一の指導法を貫いていることに感動しました。

5) 文武別道

日本では文武両道が重んじられていますが、オーストラリアはスポーツと勉強を切り離す傾向にあると感じます。特に大学ではそれが顕著です。

オーストラリアでは、ラグビーの代表選手が医学部に通っていたり、弁護士だったり、MBAを取得したりということにあまり注目が集まりません。それは、大学は勉強をする場所であり、部活は特にないためスポーツは大学外のクラブチームで行うものというように分けられているからだと思います。

僕のクラブチームは、大学に行かず肉体労働系の仕事に就いている選手が多かったのですが、中には歯学部や工学部の学生もいました。ラグビーと学業を切り分けてどちらも全力で頑張れる(逆を言えばサボれる)環境があります。

以上が僕の経験をもとに考えた、オーストラリアの子どもがスポーツを楽しめる5つの理由です。一部イングランドの例も入っていましたが、オーストラリアと状況はほぼ同じだと思います。根底には学校教育の方針の違いがあると思います。どちらが良い・悪いという視点ではなく、お互いから学べると良いですね!


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