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キャリア志向の妻との育児奮闘記 in オーストラリア

息子が生まれて11ヶ月が過ぎた。今でも、「これが本当に自分の息子か」と神秘的な気持ちになることがある。

大好きな公園での一枚

生まれる前は、ワクワクとともに、「これからやっていけるだろうか」という漠然とした不安もあった。まだまだ新米だが、実際に親になって初めて分かること、感じることは多くある。寝不足な上、自由に時間が使えず、大変すぎて「自分もこうやって育てられたのか」と、子を持つ全ての親に敬意を表したくなることがある。他方で、他の親の話を聞いていると、家庭によって子育ての状況が異なることにも気づく。

ママ友で持ちきりの話題「夫の愚痴」

妻の伊織が参加しているママ友会では、夫の愚痴で盛り上がることが多いという。その内容は、新生児の頃は、「一人でご飯も炊けない」「夜絶対に起きてくれない」から、離乳食が始まると「作ってと頼んだのにヨーグルトを食べさせていてテキトウ」など、子供の成長と共に変化していくから面白い。

ただ、伊織は全く共感できないと言う。

日本には「スーパーウーマン」が少ない?

伊織とは2019年に東京で出会った。その1年後に付き合い始めたが、当時の伊織は「子供が欲しいか分からない」と口にしていた。理由は、出産をするとキャリアに大きな影響が出るから。仕事が大好きで、東京でのキャリアも上り調子だったが、伊織の周りには、子育てと仕事を両立させている、いわゆる「スーパーウーマン」は殆どいなかった。

2021年、伊織は東京からシドニーに移住した。理由は、オーストラリアなら、子供を育てながらキャリアを積めると考えたから。転職先のオーストラリアの連邦政府の職場の上司は、3児の母でありながらバリバリ働いていた。

お互いのキャリアのタイミングを尊重し、僕は東京に留まり、1年間の遠距離をした。コロナ禍のせいで1年間会えず寂しかったが、期限付きだったので、乗り越えられた。1年の遠距離を経て、僕は東京で勤めていた会社を退職し、後を追ってシドニーに移住した。

シドニーで一緒に住み始めて1年後の2023年、伊織の妊娠が発覚した。嬉しい反面、仕事が大好きな伊織は、「仕事を休んでいる間に産後うつにならないか」と心配していた。僕は「全面的にサポートするよ」と伝えた。2023年7月、30時間の陣痛を経て、緊急帝王切開で息子は産まれてきた。帝王切開なので、僕が最初に息子を抱いた。出産の壮絶さを目の当たりにし、痛みに耐えた伊織に感謝した。また、産まれ新しい命に対して何とも言えない感情が込み上げてきた。そして、自分もこうして生まれてきたのかと思い、僕の母親に感謝のメッセージを送った。

産まれた直後の一枚

新米パパ、生後3ヶ月の息子と6日間のワンオペ

伊織は、産後6ヶ月間本業のフルタイムの仕事を離れている間に、キャリアアップに繋がる活動を多くこなし、非常にアクティブに過ごした。中でもハイライトが、息子が生後3ヶ月の時に、カンファレンスに参加するために、6日間メルボルンに出張に出たことだ。僕にとって6日間という長期間のワンオペは初の試みだったが、それまでずっと二人三脚で子育てをしてきたため、不安はなかった。

生後3ヶ月の息子に読み聞かせをする筆者

僕は一人暮らしをしていた経験から、家事全般は一通りできる。息子が生まれてからも、伊織が仕事に復帰するまでの6ヶ月間、家事もしてきたし、息子の面倒は仕事の時間以外はほぼ全ての時間を注いできた。特に夜は、息子のお世話をシフト制にして、平日は就寝から午前3時まで伊織、午前3時から出社する午前7時半までは僕が対応をして、夫婦で共に寝不足と戦いながら、息子の成長を見届けてきた。そのため、6日間のワンオペは、毎日コツコツと試験勉強をして迎えた中間テストのような感覚で、大変だったが、問題なくこなせた。

出張先のメルボルンのカンファレンスで発表する伊織

カンファレンスに現れた産後3ヶ月の伊織の姿を見た友人や仕事仲間の反応が興味深かった。伊織は、ビジネスウーマンを支援する団体に入っているが、同団体のイベントに参加した男性からは、「子供を産んで3ヶ月でカンファレンスに参加するなんて、働く女性の鑑だ」と絶賛されたという。一方で、女性陣は、「誰が家で子供の面倒を見ているんですか?」と驚いていたそうだ。子育てに対する男女の認識の違いと、「子育ては女性の仕事」という固定観念が詰まったエピソードだと思った。

一人で仕事と育児の両立はムリゲー


僕はこの11ヶ月間、仕事と子育てと両立に全力を注いできた。これに対して、自分を褒めてあげたい。また、出産と育業(「育休」が持つ「仕事を休む」というイメージを一新するために、東京都が育児休暇の愛称を育業に決めた。)を経て職場復帰を果たし、今も子育てと家事を分担しながら仕事で成果を上げている伊織はもっと凄い。二人で力を合わせてきたからこそ、ここまで来れた。

また、息子が生後6ヶ月になってからは、住み込みでオーペア(ベビーシッター)を雇っている。伊織の職場復帰のタイミングで、保育園に入れるという選択肢もあったが、最初の1年は風邪をひきまくると聞いていたので、縁もあり半年間限定でオーペアを雇う選択をした(このオーペアさんが、助産師歴7年という最強の経歴の持ち主で、最良の選択だった。周囲に助けを求めるのは大事だと思う。)

家庭の状況によって子育ての在り方は様々だ。ただ、女性だけが子育てとキャリアの二者択一に迫られたり、周りのサポートがないために、キャリア志向の女性が出産を機にキャリアを断念したりするというのは、どうにかならないものかと思う。

日本では、乳幼児がいる共働き夫婦の家事・育児の時間は、妻の育児・介護・家事の合計時間は1日あたり6時間54分であるのに対して、夫は1時間8分と7倍近い差があると言う(総務省 平成28年)。共働き世帯でこの差はびっくりだ。オーストラリアでも、このほど夫婦間の家事の時間の差は2倍であると報道されていた。

まだ親になって11ヶ月だが、ワンオペは本当に大変で、パートナーの支援なしに仕事と育児・家事の両立は無理である。子供がいると家事もなかなか進まないし、在宅勤務なんてできない。お互いの得手不得手を考慮して無理のない分担を決めるか、可能であれば外部の助けを借りた方が良いと思う。

「スーパーウーマン」はいない!?

先日、とあるイベントである夫婦と対談した。奥様は、世界的な法律事務所のパートナーまで上り詰めた日系オーストラリア人女性だ。2児の母でもあり、周囲から「スーパーウーマン」と呼ばれることも多いそうだが、本人は「旦那が専業主夫になってくれたから今の私があり、後ろめたい気持ちがある」と言う。その想いから、現在多くの働く女性を支援しているという。

僕も伊織も「スーパマン」でも「スーパーウーマン」でもない。共働きである以上、お互い助け合いながら、時には恥をお忍んで周囲の助けを借りながら、育業に励み、キャリアも充実させたい。

それはさておき、これから二人で息子の一歳の誕生日の準備をしなければ。

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