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【PKSHA 山本氏】「なぜ」を突き詰め、本質に辿り着く。海外起業を経て選ぶ日本の開発環境とは

フォースタートアップス株式会社(以下、フォースタ)では、エンジニアに特化した専門チーム「エンジニアプロデュースチーム」を開設。スタートアップに対してキーマンとなりうるCTO・VPoE・エンジニアの採用支援をしております。
今回ご紹介する株式会社PKSHA Technology(以下、PKSHA)は、「未来のソフトウエアを形にする」をミッションに掲げ、自然言語処理、画像認識、機械学習/深層学習技術に関わるアルゴリズムソリューションを展開しています。
お話を伺うのは、グループ会社である「PKSHA Workplace」にて「AIヘルプデスク for Microsoft Teams」のプロダクトマネージャー(以下、PdM)を務める山本健介氏。同プロダクトをはじめ、国内シェアNO.1のAIチャットボット等のAI SaaSプロダクトの開発に従事している山本氏に、PKSHAの魅力、スタートアップキャリアを歩むエンジニアとしての心構えや、今後の展望についてお話を伺いました。

※Microsoft Teamsは、米国 Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。


山本 健介氏
新卒でWeb制作会社に入職後、コーダーとしてキャリアをスタート。その後、フルスタックエンジニア/テックリードとして、SaaSや機械学習プロダクト開発を経験し、CTOとしてサンフランシスコを拠点としたスタートアップの立ち上げに参画し、世界向けに対話向けアプリケーションの開発を経験。2018年12月より、株式会社PKSHA Technologyに入社。現在は株式会社PKSHA Workplaceに所属し、『AIヘルプデスク for Microsoft Teams』や国内シェアNO.1のAIチャットボット『PKSHA Chatbot』等のAI SaaSプロダクトの開発に従事している。


リソースが豊富だからこそできる。顧客とともにプロダクトを作り上げる感覚

ーーこれまでの経歴を教えてください。

山本:新卒でWeb制作会社に入社し、HTMLやFlashなどを取り扱うコーダーを4年間経験後、テックリードとしてソーシャルゲーム事業の立ち上げを経験しました。

その後、スタートアップ界隈が盛り上がっていたことや海外でエンジニアとして働きたいという気持ちから、知人を通じてサンフランシスコを拠点としたスタートアップ企業の立ち上げに参画。数十万ダウンロードされた対話型アプリケーションの開発を経験後、2018年にPKSHAへ入社しました。

ーーPKSHAはいくつかの会社に分かれていますが、山本さんが所属する会社で担う事業と現在のポジションをお聞かせください。

山本:PKSHA Technologyという全体を包括する親会社のなかに、PKSHA WorkplaceとPKSHA Communicationという2つの会社が存在します。

PKSHA Communicationは、製品やサービスのユーザーサポートをする業態を担っており、カスタマーサクセスの領域です。私は、PKSHA Workplaceに所属しており、主にエンプロイーエクスペリエンス(従業員体験)向上に向けた社内コミュニケーションの最適化や改善に向けたソフトウェア開発を行っています。

現在は、AIチャットボットを内包した社内問い合わせコミュニケーションサービスを開発しており、PdMを担当しています。

ーーPKSHAさんに入社を決められた理由はなんですか。
山本:PKSHAの他に15社ほどカジュアル面談を実施したのですが、どの会社もプロダクトが完成されていて、新たに模索する余地がないように感じていました。

一方、PKSHAは、明確なビジョンを持つ経営者のほか、アルゴリズムエンジニアやソフトウエアエンジニアなど事業展開していくための必要なリソースが揃った上で、0→1への挑戦を実現する場が用意されている。その点に魅力を感じ、入社を決めました。

ーー入社以降、感じられているPKSHAの魅力を教えてください。

山本:上場企業でもあるので、安定しているイメージを持たれやすいのですが、自由度がかなり高く、与えられる裁量権が大きいです。

現在PKSHA Workplaceには、エンジニア・ビジネス側も含めて組織全体で約80名程の人数がいるのですが、今から約3年前のプロダクト開発初期は、Workplace領域を担当するチームのエンジニアが私1人の状況だったため、PdMの役割を担う人はいませんでした。

コードを書きながらユーザーやビジネスサイドと要件定義のすり合わせを行うといった働き方をしつつ、徐々にメンバーが増えていくのに合わせ、エンジニアリングマネージャーやテックリードを任せていき、現在ではPdM業に専念しています。

私たちの動き方が臨機応変に変化していく状況を会社側が認めて吸収し、それに合うような形で、メンバーそれぞれに土台を提供してくれるため、自律的かつ主体的に物事に取り組める環境だと感じています。

ーー非常に自由度が高い環境で活躍されるエンジニアとは、どういう方なのでしょうか。

山本:エンジニアとして技術力が高いプロフェッショナルが活躍できるのはもちろんですが、その点を除くと「なぜ開発をするのかを理解して、自律的に開発を行えるか」が重要だと感じています。

なぜこのプロダクトを開発するのかを明確に理解していれば、指示を仰ぐ前に主体的に質問をしたり考えたりして、自律的に物事に取り組める。

ーーリモートでの業務が多いそうですが、その「なぜ」をどうやってチームで共有しているのですか。

山本:私のチームでは開発を始める前に、Design Docを書いています。なぜ作るかをコミュニケーションの基点にしていれば、コミュニケーションコストをかけなくても判断できます。その状態で、開発者自身が高解像度で見えている最も良い選択肢を考えて進めてほしいと思っているんです。

PdMとしては、そのクライアントの希望も加味して指示を出すべきですが、管掌が曖昧な部分は、ベストな方法を議論しながら進めた方がいいものができる感覚があるんですよね。

ーーPKSHAさんのように事業基盤が整っていて、リソースが豊富にある会社だからこそできる0→1の面白みはありますか。

山本:開発に集中できる環境があることだと思います。

0→1を展開するスタートアップは、本当に何もない状態で事業構築がはじまります。ゼロから生み出す楽しさはもちろんあるのですが、新規プロダクトを進める際には、どうしても投資が必要になります。エンジニア自身で投資を得るための活動を行いながら、プロダクト開発も担うとなると開発に集中できないのも事実です。

一方、既に資産が揃っている状況で行うプロダクト開発は、これらの動きもなく、プロダクト開発に集中できるため、やりたいことを実現できる速度が早い点が魅力です。

また、インパクトの大きいプロダクトを作りにいけるというのも魅力ですね。やはりスタートアップは、まずSMBに使用してもらい、プロダクトを磨いていきますが、PKSHAはすでに大企業に導入が進んでいるので、大規模にテストを行うという挑戦もできる。解像度が違うマーケットでチャレンジできるような実感があります。

――toC向けサービスの開発のご経験が長い山本さんから見て、toB向けサービスを開発される面白さなどはありますか。

山本:再現性には、大きく違いが出ると思っています。

toCは開発していて面白いのですが、例えば100個プロダクトを作って、やっと1個が受け入れられる感覚なんです。toBだとそれが5個作ると1個受け入れられるくらい差があります。

プロダクト開発の目的は、やはりエンドユーザーに価値を届けられるかだと私は思っているのですが、toBは使用いただくクライアントもお金を払い、一緒に課題を解決しながら開発している感覚がある。クライアントと一緒にプロジェクトを育てるという観点ではtoBも面白いと思っています。


本質とはなにか。Whyを問い続け、PMFを感じた瞬間

ーーここからは、山本さんが開発において大切にされている姿勢について伺います。
コーダーからPdMへとキャリアを構築されていますが、元々PdMを目指されていたのですか。

山本:元々「PdMになりたい」といった意識はあまりなく、事業フェーズに必要なことを都度取り入れていったことで、今のキャリアに行きつきました。

新卒当時は、ずっとHTMLを書く仕事をしていましたが、コードを書くなかで「このボタンを動かさないといけない」と相談をもらいJavaScriptを取り入れたり、ソーシャルゲーム事業を立ち上げるからPHPを勉強したり…。その時々で必要なことを取り入れていったことで、フルスタックになっていたという形です。

PKSHAに入社してからは、メンバーの評価される場を用意するために自分がやっていた部分を明け渡していくことをしていたら、気付けばPdMになっていたという状況でした。

必要に駆られて今の状態にはなっていますが、深層心理的に自分がやりたい方向性を選んでいたかもしれません。

ーー山本さんは、0→1、1→10のフェーズの経験をされていますが、それぞれの良さはどんなところなのでしょうか。

山本:0→1は、まさに本質的な部分を理解しながら納得感を持って進められることが魅力に感じます。0から事業構築をしていくため学びとして知的好奇心もくすぐられますが、苦しいと感じる部分もあります。
プロダクトがマーケットにフィットすると、物事の本質を知った感覚になれるので、その点は0→1だからこそ体験できることだと感じています。

1→10ですと、開発の仕方や組織の在り方を仕組み化していくフェーズになります。すべて自分自身で行うのではなく、「こういった形で運用しましょう」というように自立的に動いていく仕組み作りを楽しめるのは1→10ならではの良さですね。

――本質を知った感覚を味わった具体的な経験はありますか?

山本:今作っているプロダクトでちょうど感じました。

AIヘルプデスクという製品なのですが、カスタマーサポートで活用されているPKSHA Chatbotを社内の問い合わせ向けにマーケットフィットできないかというところからプロジェクトは始まりました。

いざ、社内で試作をしてみたのですが、チャットボットをSlackの中に導入してみても全く使われない。自然に回答できないんです。
なかなかうまくいかないので、回答できなかったら、その場で情報システム部の方をメンションするようにしてみたんですね。
そうすると、チャットボットは回答できてないものの、社員が質問を投げるというコミュニケーションの集約ができたんです。
そうやって対話履歴が蓄積するにつれて、段々と学習データも溜まってチャットボット自体の回答の精度も高まっていったんです。

これをエンタープライズをターゲットとするために、SlackではなくTeamsに、公開チャンネルでメンションするのではなくプライベートなチャットで有人から回答を返せるように機能を用意しました。
問い合わせ件数が1週間に1000件を超えた段階で、プロダクトマーケットフィットした感覚がありました。

この経験では本質にたどり着いた感覚が強かったですね。0→1をやらないと、プロダクトマーケットフィットの体験はなかなかできないので、めちゃくちゃ楽しかったです。


シリコンバレーと日本、スキルの差はない。目覚めるきっかけは、「自分の」プロダクトを作ること

ーー日本とアメリカでの開発事情についてもお伺いします。アメリカでは、ゼロからの起業も経験された中、日本とアメリカでエンジニアリングのレベルに違いは感じましたか?

山本:エンジニアのレベルは、全然差はないです。アジャイル開発の文化なども、考え方も使っているツールも同じものです。アメリカで働くのが難しい理由はビザと言語が大きいと感じましたね。

ーーでは、逆に違いを感じられたのはどんな点なんでしょう。

山本:1つは製品開発の文化ですかね。日本ではSIerなどの受託開発も多い印象ですが、アメリカでは自社でエンジニアを雇用しているか、SaaSを利用することが多いと聞きます。そう言った開発現場では、なぜ作るのか、ということを念頭に入れながら開発を行えるのだと思います。

あとは、コミュニケーションですね。世界から夢を持っている人が集まってきていて、
カフェに行ったら絶対パソコン叩いてコーディングしてる人がいるし、声をかけられて食事をともにした方がFacebookで働いていたり、そういうコミュニケーションが発生する場だったのは面白かったです。

――山本さんも元々受託開発に従事されていました。「何を」作るかに思考が変わったきっかけはありますか。

山本:思考が変わったのは、やはり起業した時ですね。

直接ユーザーの声を聞くために、DMでユーザーインタビューを依頼してイランやブルガリアのユーザーと話しました。それまでやっていた開発と明らかに解像度が変わったので、自分でプロダクトを作るのが一番早いと思います。

ーー誰に、なぜを磨きづづけることが大事ということですね。最後にスタートアップに関心があるエンジニアの方に向けてメッセージをお願いします。

山本:エンジニアとしてスキルアップできる環境に身を置くことが重要だと感じています。

日本の現状は変化していて、終身雇用制度は崩壊してきていますよね。企業も早期退職者を求めるようになり、転職はもはや当たり前になってきていますし、ひとつの会社で定年まで働く人の方が少ない。

だからこそ、自分の能力を拡張できる方向性を選択し、自分の能力を資産として積み上げていくほうがリスクヘッジになると感じています。どの会社を選択するかよりも、自分にとって学習できる場が用意されていたり、トライアンドエラーができる環境に身を置くことを選択したほうが、エンジニアとしても飛躍できますしリスクヘッジができるのではと感じていますね。

ーー自分が成長できる環境に身を置き、主体的に仕事に取り組む重要性を感じました。今後のPKSHAさんと山本さんのご活躍を応援しています。


インタビューご協力: 株式会社PKSHA Technology

執筆:矢野 桃

取材・編集:for Startups エンジニアプロデュースチーム



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