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マイケル・マシを連れて来い?——フェラーリ惨敗と新星誕生のイタリアGP

「マイケル・マシを連れてこい!!」と怒り狂うイタリア人もいたに違いない。今年のインディ500のような赤旗提示を求めたフェラーリファンもいたのかも——。いずれにしても、ルクレール劣勢の終盤戦に降って湧いたセーフティーカー(SC)は彼らの助けにならず、レースは再開されぬまま、フェルスタッペン先頭の隊列走行でゴールを迎えた。そのなかには9位でチェッカーを受けた新星デ・フリースの姿もあった。

早ければ次戦シンガポールでタイトル決定

フェルスタッペンは5連勝で今シーズン11勝目。ルクレールとのポイント差を116点に開き、次戦シンガポールでフェルスタッペンがさらに22点差をつければタイトルが決定する(フェルスタッペンが優勝+ファステストラップでルクレールが8位以下、またはフェルスタッペン優勝(FLなし)でルクレールが9位以下の場合)。

鈴鹿タイトル決定マジックは「-4」と、ついにマイナス圏になり、今後2戦でルクレールが5点以上詰めなければ——逆に言えば、フェルスタッペンはルクレールの前でゴールし続けさえすれば——、日本GPでタイトルが決定する。

フェラーリがVSCでタイヤ交換に動くも不発。劣勢が明らかに

決勝は、予選の渾身のアタックでポールポジションを得たルクレールが、スタートでラッセルの攻撃を辛くもしのいで首位を守った。パワーユニット交換のグリッド降格により7位スタートのフェルスタッペンは5周目に早くも2位に上がり、ルクレールとの間隔が2秒台から1秒台前半へと詰め寄る展開で序盤戦が進んでいった。

ベッテルのエンジントラブルで12周目にバーチャルセーフティーカー(VSC)が入った際、首位のルクレールはピットに飛び込みミディアムタイヤに交換。フェルスタッペンはステイした。

あとから振り返れば、フェラーリはVSCを機にタイヤの2回交換作戦(プランC?)に切り替えたこととなる。ミディアムで最後まで走り切るつもりだったとは考えられず、タイヤ交換のロスタイムが短くなるVSC中を含む2回交換に対フェルスタッペンの活路を求めたと思われる。

フェラーリはモンツァ100周年を記念した特別カラー。リアウィングの黒地に黄色の「Ferrari」の文字がとってもイイ!(・∀・)  フェラーリのコーポレートカラーは赤ではなく黄色。街中で稀に見かける黄色いフェラーリもカッコいい。一部分だけでなく、全面黄色のフェラーリF1も見たかった。

しかしながら今のフェラーリでは、直線が速くタイヤの持ちもよいフェルスタッペンに太刀打ちできなかった。フェルスタッペンはスタート時のソフトを26周目まで引っ張り、ミディアムに交換。ルクレールは34周目の2度目のピットストップを終えると首位フェルスタッペンと20秒強の差がついていたが、ソフトタイヤで頑張っても47周目に17秒を切る程度にしか縮まらない。

レース残り6周となる47周目、コース上にリカルドのマシンがストップ。処理のために翌48周目にSCが入ったが、マシンの撤去に時間がかかり(ギアがスタックしたように見える)、結局スロー走行のまま1位フェルスタッペン、2位ルクレールの順位でゴールした。

昨年のアゼルバイジャンやアブダビで、残り1〜2周でも無理やり再開させたレースを見た者としては、今回のゴールはなんとも味気ない結末に感じた。今年のインディ500でも赤旗中断後の残り2周でレースを再開させている。

フェラーリのお膝元で、SCによるギャップの短縮が彼らに有利に働くシーン。競技進行上は規定通りかもしれないが、興行の側面を考えると、地元ファンにあまりにつれない仕打ちではないか。「マイケル・マシ、カムバーック!!!」と、前年のレースディレクターの名を叫びたい気分になった。

前回SC先導のままレース終了になったのがいつだったかも思い出せない。赤旗によるレース短縮での終了を除けば、12年のブラジルGPか。。。?

VSCとSCによるフェラーリ逆転の期待はあったが、もともとモンツァは直線の速いレッドブル優勢とされたレース。ベルギー以降はタイヤ持ちでもフェラーリは負けていることが明らかで、レース後のルクレールの表情もサバサバしたものだった。

新星デ・フリース、シューマッハやベッテルを思い出すデビュー

このグランプリ最大の注目は、虫垂炎に罹患したアルボンに替わって急遽、土曜日からウィリアムズで走り始めたデ・フリースだった。

代役でのデビューレースで9位入賞したニック・デ・フリース

予選も急な代役とは思えぬ速さで13位。上位ドライバーのペナルティで8番グリッドからスタートしたデビュー戦では、序中盤にアロンソの真後ろにピッタリ付けて隙をうかがい、後半は真後ろにつける周冠宇との10位争いが見どころだった。

一度は前方で9位を走るガスリーのDRS圏から離れ、真後ろの周が激しく追い立てた。その後、再びガスリーの1秒以内に戻ってDRSを利用可能になると、逆に周は後方へと離れていった。

これでデ・フリースは9位に入り、デビュー戦入賞をチームの今シーズン最上位タイで決めた。実は本人は金曜日はリザーブドライバーとしてアストンマーチンに乗っており、週末3日間で2台のマシンを走らせたことになる。ウィリアムズはベルギーのセクター1が速い「直線番長」で、代役が回ったサーキットがモンツァだった、という点も本人の運を感じる。レスダウンフォースでマシンの動きは危なっかしいが、隙あらばガスリーのインを伺う果敢な走りが印象に残った。

フジテレビNEXTの片山右京氏、川井一仁氏も「ガショーの代役のデビュー戦で予選7位を獲ったシューマッハを思い出す」「クラッシュしたクビサの代役で当時の最年少入賞を決めたベッテルのよう」と、口々に過去の事例になぞらえた。

歴史に残るドライバーはこういう緊急事態でお鉢が回ったときにビッグチャンスを逃さないものだ。ラッセルも2020年のサヒールGPでメルセデスの最強マシンに乗せたときに誰の目にも速さが明らかとなり、翌々年の移籍へつながった。

なぜデ・フリースほどのドライバーがF1にデビューできなかったのか不思議だ。F1のシートが20しかなく、ライセンスポイントもF2偏重で、一度F2からF1へのステップアップを逃したドライバーにチャンスが巡って来づらいことも影響しているのでは、と感じる。

来年、彼がどこに行くのか楽しみになった。シンガポールのころにはラティフィとすげ替わっているかもしれないし、アロンソやピアストリに逃げられたアルピーヌが獲得に乗り出すかもしれない。

ロシアGP中止の影響で次戦シンガポールは3週間後となる。いよいよ3年ぶりのアジアラウンドの始まりだ。

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