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『無敵の未来大作戦』に心の元気をもらう

今みんなに読んでほしい大好きな漫画、黒崎冬子さんの『無敵の未来大作戦』について書きました。
昔の少女漫画を思わせるうるわしい絵柄とふんだんに盛り込まれたギャグ、そして非常に令和的な価値観で描かれる、ちょっと変わったハイテンションな学園オムニバス漫画です。

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物語は同級生の良々田(いいだ)くんが「聖人」に選ばれるところから始まります。
少子化対策としてつくられた「聖婚」という制度。聖婚とは、一定以上の資産を有する富裕層に一夫多妻・一妻多夫を認めて、出産や育児の金銭的なハードルを取り払い、安定した家庭を多く生み出そうという制度。その資格を認められたもの、すなわち「聖人」が学園に現れたことで女子たちは大騒ぎ。母一人子一人の極貧生活を送っていた主人公の瑛子もまた、母に楽をさせたい…!と良々田くんとの聖婚に興味を持ち始め。。

という、一見すると癖のある設定のラブコメなのですが、その内容は
少子化・セクハラ・ルッキズム・学力格差・ジェンダーアイデンティティ・引きこもり…などなど、現代的なテーマ満載。
それでいて常にコミカルでテンポよく描かれていて、私たちの日常にあふれる生きづらさを軽快に蹴り飛ばしてくれるような、愛と希望に満ちた作品なのです。

私のお気に入りはツイッターでも公開されているコチラ。
絵柄も素敵(髪のつややかな塗りとかヘルシーな人体とかおちゃめなデフォルメとか…)なので、ぜひご一読ください~

無敵の未来ってなんだろう…?

「聖婚」は経済的な安定をよりどころとした婚姻関係。
ふと思い出したのは、家政婦と雇用主の契約結婚を描いた『逃げ恥』でした。しかし、革新的な夫婦のあり方を肯定するかに見えた逃げ恥が最終的には従来型の「幸せな家庭像」に収まるラブコメだったのに対して、本作は聖婚をめぐり登場人物一人ひとりが自分なりの幸せを見つけて歩みだす、いわば幸福追求ストーリー。自分の進みたい道を選べること、自分らしくいられることこそが「無敵の未来」、ということです。

現実だと、こうあるべき・こうするべきという世間からの圧力から逃れることはなかなか難しい。けど、実は意外と「こうしなきゃ」と自分で呪いをかけていること、ありませんか?そんな呪いをふっと解いてくれる漫画だなと思いました。
世間や周りのためじゃなく、自分自身の幸せを愛していいのだ。そして幸せの形は人ぞれぞれで、どれも平等に尊いものなのだ。最新刊まで読んで、そんなメッセージを受け取りました。きっといろんな読者の心を肯定してくれます。

ねこーず・うさーずを探して🐈🐇

この作品の大好きポイントがもうひとつ。
コマの余白を埋めるようにそこかしこに現れては癒しとプリティを提供する、猫たち・うさぎたちです。

彼らに名前はなく、話の筋ともほとんど関係なく、ただ登場人物の膝や肩に乗ったり、足元で転がったり、お魚くわえて走ったり、、とにかく自由で可愛らしい存在なのです!
この動物たちを含め、ふっと笑ってしまう小ネタが背景やちょっとした余白に無数に書き込まれていて、そういったところに注目して読むと非常に読みごたえがあって楽しいです。

また、これは黒崎先生の別のシリーズですが、「トラと陽子」という4コマ作品があり、こちらでは個性豊かなねこたちと飼い主のおねいさんとの日常が描かれています。ほのぼの可愛くてたまりません~

↓ねこ漫画は pixivでいっぱい読めます!

おわりに

この夏はなんだかしんどいニュースが多かったように思います。こんな価値観がまだまだ蔓延っているのか…とがっかりすることもありました。

そんな中、発売された『無敵の未来大作戦』の最新刊。惜しまれながら3巻で完結となりましたが、そのラストは首尾貫徹した納得のものでした。
従来の「型」を軽やかに跳ねのけ飛び越えていく瑛子ちゃんと良々田くんの爽快さ。そして、そんなふうに価値観のアップデートを明るく表現してくれる漫画家さんがいることの心強さ。令和はもっと、無敵の未来になれるんじゃないかなぁという気持ちになりました。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
気になった方はぜひ手に取ってみてください!


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