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心理系大学院に受かるまで

 昨年9月末、心理系大学院に合格した。

 受験勉強真っ只中の当時、無料で公開されたnoteやブログの情報に救われて何とかやっていたから、恩送りとして僕も書き留めておく。

 次々に就職を決める同期に埋もれ、進路を案じて心が死にそうな中、それでも勉強しなければいけないそこのあなたに捧げたい。


僕の基本情報

 僕はX大学の教育学部生で、特別支援教育を専攻している。元から心理学には関心があったけれど、自分の専攻の授業として勉強したことはない。

 進学先は、A大学心理学専攻・いわゆる研究者養成コース。院進そのものは大学1年生の時から意識していた一方で、4年生になる直前までは志望先にも専攻にも悩んでいた。最終的にそこを受験しようと決めたのは研究室訪問がきっかけで、その時点ですでに、入試日まで残り6ヶ月になっていた。

 他大学の他専攻から受験するのは、内部生や他大学の心理学専攻の学生と比べると圧倒的に不利だと思う。僕の場合は情報もない、知識もない、勉強する仲間もいないという三重苦だったから、A大対策に精一杯で併願はしなかった。9月入試がダメなら2月入試を受けよう、2月入試がダメなら1年浪人して学費を貯めよう、と思っていた。何なら、受験までの期間の短さと経済的な苦しさを思えば1年浪人したかった、そういう受験生。


受験科目

 大学院によって千差万別なはずだから、あくまで僕の一例でしかないけれど、僕が経験したのは専門科目・外国語・口述試験の3つだった。それぞれの内容は次の通り。

【専門科目】
◆心理学研究法(4題のうち2題解答)
◆心理学専門領域(認知心理学や臨床心理学など、8領域11題のうち2領域以上から3題解答)

【外国語】
◆2年以内に受験したTOEICの成績証明を提出

【口述試験】
◆研究計画書に基づいた質疑応答(コロナ禍の影響で、面接官3人・試験時間5分)

勉強スケジュール① ~3年次3月

 僕が研究室訪問をしたのは、先述の通り4年生に進級する直前だ。それまでの間は飽きもせず延々と、大学院でも特別支援教育を学び続けるか、心理学に転向するか、それしか考えていなかった。

 でもその期間、常に心のどこかでは心理学に行きたいような気がしていて、参考書を買っては本棚の装飾へと化けさせていた。研究室訪問までの時点で持っていたのは、次の6冊だ。

・心理学(有斐閣)
・心理学辞典(有斐閣)
・よくわかる臨床心理学 改訂新版(ミネルヴァ書房)
・よくわかる心理統計(ミネルヴァ書房)
・臨床心理士指定大学院対策 鉄則10&キーワード100 心理学編(河合塾KALS)
・臨床心理士指定大学院対策 鉄則10&キーワード25 心理統計編(河合塾KALS)

 僕はたまたま教職課程の一環として発達心理学を履修していたり、特別支援教育と臨床心理学の内容に重なりがあったりしたから、『臨床心理士指定大学院対策 鉄則10&キーワード100 心理学編』と『よくわかる臨床心理学』だけは時々趣味程度に読んでいた……気がする。どうだろう、思い出の美化かな。とにかく、この時期は悩んでいて勉強を始めるにも至らなかった。

勉強スケジュール② 4年次4月~5月

 研究室訪問を機に、その研究室の院生さんともコンタクトが取れるようになった。先輩が使っていた参考書リスト、実践した勉強スケジュール、8年分の過去問を手に入れて、それに沿って猛勉強し始めたのがこの時期だ。この時、先輩の参考書リストにあった『臨床心理士 頻出キーワード&キーパーソン』(ナツメ社)と『心理学研究法』(有斐閣)を買った。当時の僕の勉強内容・方法は、次の通り。

【TOEIC】
 TOEICは2ヶ月半の短期決戦で結果を出さなければいけなかった。だから力技で何とかしようと、膨大な量の問題を解いては復習した。YouTubeにある「TOEIC○○点の裏技!」みたいな動画もよく見た。下手に独学するよりも、スゴい人の真似をするのがいちばん手っ取り早いと思う。それで2ヶ月半で135点上がったから、きっと間違ってはいない。

【専門科目】
 僕の勉強法は「試験本番で書けるものを丸暗記する」だ。心理学専攻出身でない僕に、悠長にノートをまとめて学ぶ余裕なんかない。募集要項から出題範囲を確認して、まずは当日に解く3領域をこの時点で決め、その領域の単語だけを勉強することにした。
 具体的な方法としては、1単語につきB5ルーズリーフで5行以上の分量になるまで情報を組み合わせていって、初っ端から試験用の解答を作った。解答づくりの時には、同じ単語でも参考書によって書いてある内容はまちまちなので、参考書3冊+ネット検索の情報を抽出するのが個人的オススメ。
 統計については、数学が苦手な僕に独学なんてできっこないので、大学の授業を履修した。ゴリゴリの他学科・他学年に混じっての受講は多少気まずかったけれど、事情を知った先生がすごく親身になってくれたから、本当に助かった。

勉強スケジュール③ 6月~7月

 6月末、本気を出さざるを得ない、出願用のTOEICがあった。だから6月いっぱいは、引き続きTOEICの勉強を重視していた。数年前までは、僕の受けたコースも心理英語の筆記試験が必須だったらしい。どう考えてもTOEICの方が楽だ。ありがとう入試内容を改変してくださった学務の方々。心理英語はね……まあ結局は研究に必須なのでね……卒論が終わったら頑張りますよ……うん、本当に。

 TOEICを終えてから、ようやく研究計画書を書き始めた。大変だったのは先行研究のレビューだ。僕の研究テーマは日本ではかなりニッチだから、とにかくピンポイントの論文がない。何本のPDFを開けてはがっかりしたことか。でも、ここで「俺ちゃんとこういうの計画して書けるんすよ」のアピールができなければ、待つのは不合格以外の何物でもない。死ぬ気で探したし死ぬ気で読んだ。ざっと書いたら、ゼミの指導教員、あちこちのお世話になっている先生、果ては志望先の研究室の先生(だって先生が「事前に見せて」ってメールくれたんだもん、不正なんかじゃない)にまでWordファイルを配り歩き、コメントと質問をもらった。かけられた時間はトータル3週間。受験期でいちばんキツかったのは、間違いなくこの期間だと思う。今振り返ってもあの短期間でよくやったなぁと思うけれど、いざ読み返すと恥ずかしくて破り散らかしたくなる。

 出願でTOEICの成績と研究計画書さえ送ってしまえば、もうやれることは心理学の暗記しかない。毎週必ず襲ってくる統計の課題に頭を抱えながら、とにかく論述を練習した。

勉強スケジュール④ 8月〜受験

 大学が夏休みに入った頃から、本格的に過去問を触り始めた。僕が真っ先にやったのは、問題の整理だ。8年分の傾向を見るために、年度ではなく大問や領域ごとに区切って、写真の問題文をWordに書き写し続けた。眼精疲労まっしぐらでしかないこの作業に丸1日取られたけれど、このおかげで8月の勉強効率は飛躍的に上がったと思う。縦スクロール一発だけで傾向や既出の専門用語が分かるのは、もうそれはそれは便利だった。

 模範解答はなかったから、ひたすら調べながら過去問を解いた。解いた解答はそのままWordに入力して、文字を青色に変更し、さらに同じ色で塗りつぶした。デジタル版・即席青シート。

 この時期のことはこの程度しか思い出せないから、おそらく過去問を解く・分からないことを調べる・論述を練習する、の3択くらいしかやることがなかったのだと思う。あとは時々スタバで友達と勉強してみたり、大学の先生に弱音を吐いてみたり、その繰り返しだ。8月から院試が終わるまではアルバイトも休職していたから、淡々と生活していた気がする。焦りも不安もあったけれど、たぶん「これで落ちても2月があるし、2月がダメでも学費が貯められる」と思えていたことが大きかった。


おわりに

 何やかんやで、なぜか僕は合格できた。「他学部生が、たった半年で他大を受けようなんて」と冷めた目をしていたのは、結局僕自身だけだった。もちろん大学によって試験の難易度は違うのだけれど、学部では難関大と言われる大学が意外と「どれだけ大量に暗記して、どれだけ大量に吐き出せるか」で戦わせてくれることもある(事実僕はそのタイプの院試だったから、しっかり学歴ロンダリングがなされている)。この記事が、当時の僕みたいな誰かの力になれば嬉しい。


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