「見方」に連動させた「動き方」について_見える登山への第一歩⑱
前回の記事では、地図を読む上でミクロとマクロを上手に使い分けることでスムーズに読み進めていく、ということについて書きました。
今回はそれにも連動する形で、そしてこれまでのなかでも指折りに重要なことである「動き方」について、書きたいと思います。
▲「見方」と同じくらい重要な「動き方」▲
「読図」というからには、地図上の等高線にどう着目するか、そして同じようにいま立っているその周辺の地形にどう目を配るか、ということが肝なのは言うまでもないですね。
過去記事でもさらっと触れたことですが、「見る」というアクションには実は「見たうえでどう動くか」というフェーズが隠れています。そしてこれは状況によってはかなり重要な意味を持ってきます。
以下それについて少し触れた記事です。
太い尾根上での地形読みとそのポイントについて_見える登山への第一歩⑯
そして以下で、その具体的な動き方について述べます。
▲読図に必要な動き方_事例①▲
筆者の具体的な事例から書いてみます。
先日、奥多摩のとある尾根を初見で下山に使う、という練習をしました。この尾根、道がついていないうえにかなり幅が広いので、うっかりすると見当違いのところへ流れて行ってしまう可能性があります。
なので慎重に目印を見立てて、その上でそれをたどりつつ現在地を確認するという、どこをどう歩いたらいいのかを自分でデザインすることが求められました。
下図がその尾根です。
この尾根に入っていく前によくよく地形図を読み込んでみると、自分の立っている位置(通常の登山道との合流点)から見える等高線の尾根の張り出しは、予定している進行方向から途中でズレていることが分かりました。
↑その場に立った時に見えている尾根の輪郭
↑その筋をたどると途中で急に方向を転換して崖のようになって終わっています。
このような状態でさてどうするか...私はまずコンパスの向きを素直にその目の前の方向へ向けてセットし、それに従って歩きました。
そして図を見て分かる通り途中で折れ曲がるので、コンパスをかざしながら進んでいくと、ある時点で尾根筋の向きがコンパスからずれていくのをはっきり見て取ることが出来ます。
その時点で、コンパスの方角を東北東にセットし直し、その指示に従って歩きます。
その際は上図のように、コンパスの向きに従いつつ向かって右手は急斜面を見ていられるように歩けば、道を外さずにいられることがはっきりしています。実はこの尾根にはあちこちに鹿用の防護ネットが張り巡らせてあるので、通り抜けできる箇所を探すためにいくらか前後左右をウロウロしましたが、大筋そのように歩くことで無事ゴールすることが出来ました。
上記は、何を目印にするかという選定とそれをどうたどるかという動き方としていい具体例だと思い取り上げました。
▲読図に必要な動き方_事例②▲
次の事例は、雪が積もってどこを進むべきか、というシチュエーションです。
3月初旬で、今年はかなり雪が降り沢筋にはどっさりと雪が残っていて、トレースをありがたく使わせてもらうという状況でしたが、その途中で紛らわしい状況が出てきました。
以下がそのポイントです。
この、沢筋の集結点から北西の稜線へ登り上げていくポイントですが、トレースがあっちこっちとてんでバラバラな方へ走っていました。
その段階で私はまず、
・周囲をよく眺める
ということをしました。そして
・実際に各トレースラインに入って、それがどこへ向かっているかを確認
しました。すると、地図上のルートをなぞるトレースは途中で途切れていました。よくよく見ると、確かにその先には正規ルートと思しきものがはっきり見えましたが、そのすぐ先で斜面が崩れていたので、つまり
・どこかに迂回路が設けられているだろうという仮定
を立てました。
さらに周囲を見ると、真西の谷に向かって伸びているトレースがありました。これが一番よく伸びているラインでした。しかしそこは、私の見立てが間違っていなければ地図上の正規ルート一つ手前の道がついていない谷でした。
この段階では、まず
・「ここで間違いない」と決めつけず、試しに少し入ってみる
という程度に留めました。実際に歩いてみると10mちょっとの急斜面を上がった先のなだらかなところから右手(北)に方向を変えて、その先樹林帯の中をピンクリボンをたどるようにラインが伸びていました。
ただこの段階では、最初に書いた「崩れた正規ルート」というのもまだそうだと確証を持てていなかったので、谷を少し進んだ後はまた
・最初の沢筋の集結点まで引き返す
ことをしました。そして
・さらに手前のところまでもどり、本当にそれらしい別の道を見逃していなかったかを確認
しました。結果として見落としはなかったので改めて集結点へ戻ります。
ここへきてようやく、私は確かにその集結点に立っていて、トレースがついている谷も確かに正規ルートひとつ手前だろうと、少し確信を持つことが出来ました。
ここまで確認した状況をひっくるめてようやく
・とりあえずその谷についているトレースをたどってみて、違っていれば引き返せばいいし、仮に山頂まで行けなくてもOK
という心づもりを作って再度たどりました。そしてたどりながら手持ちの地形図に足取りをボールペンでなぞっていったんですが、それで途中まできてようやく、このトレースの意味を理解しました。
上図がそのラインの概略です。ざっくり言って、手前の谷から尾根に乗り上げ、反対側の斜面に回りつつ本筋に合流するというつくりでした。
事例①とは違いますが、地図と地形を読んだうえで、必要なプロセスを確実に踏むことが大事という意味で取り上げてみました。
▲最後に▲
動き方というのは、見方と同じくらい、状況に応じてやりかたのパターンはありますが、今回は事例を取り上げて書きました。また今後の山行で新しいバージョンに気づいたりしたら、その都度書いて行ければと思います。
読図で遊ぶ場合は、どう動くかにも楽しみがあるということを感じてもらえたら嬉しいです。
(^O^)