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消えた7兆円はどこへいった?

フォレスト出版編集部の寺崎翼です。

リモートワークがふつうになった昨今、企業としては社員の交通費や出張費、交際費などの経費が激減しています。

これらの経費節減のトータル金額はいくらだと思いますか?

80億円?
200億円?
1兆円?

答えは・・・・・

【7兆円】です。


2021年3月16日の日本経済新聞朝刊1面の記事「コロナ禍、経費7兆円減」という記事によれば、上場企業の2021年3月期の関連経費は前期比で約7兆円減る見通しとのことです。

対面での営業、会議、イベントが少なくなったことで、経費(固定費)がなくなる。これまでかかっていた経費にはさまざまなコストなどが含まれますが、その中でも特に大きく減るのが出張費のようです。

製造業のコマツは、海外子会社の幹部を日本に集めていた会議をオンラインに切り替えたことで、固定費を252億円削減したそうです。

これ、まさに我々も身近な事例としてありまして、数字としてはしょぼいのですが、通常は国際ブックフェアの開催時期に合わせて、毎年、台北、ソウル、北京、ベトナムに編集者が持ち回りで版権を売りに出向いていました。

これまではそれなりの出張費用がかかっていたわけですが、これが現地に赴けないということになり、昨年はすべてがオンライン商談になりました。

しかしながら、結果は・・・

売上が前年比UP


しかも、経費がかかっていない分、すべてが【売上=すべて粗利】です。

ちなみに中国本土はZOOMが不安定で動かず、動画チャットツールはテンセントのVOOVというものがポピュラーでした(VOOVはZOOMのパクリ?いやそもそもZOOMの社長は中国人だし、あれ?あれ?)。

まぁ、いいや。とにかく、なにはともあれ「いままでなんだったの?」という感じですね。

もちろん、現地の出版社やエージェントと交流して人間関係を構築するには実際に会わないとできません(ここ重要!)。

でも、単純に営業成績を挙げるためには、必ずしも対面ではなく、むしろオンラインのほうが成果が出ることがあるということがわかりました。

で、振り返って。

冒頭の【失われた7兆円】はどこに消えたのでしょう?

もちろん内部留保に回した会社が多いはずですが、世の中のお金の流れ的にどこに向かったのかは、さまざまなファクトからして明快です。

それは・・・オンラインで売って利益を上げていく商売。

これこそがいまウナギのぼりのビジネスではないでしょうか。おこもり需要の最たるものが「ネットでポチる」です。

そんななか、ものすごい業績を挙げているのが、新しい売り方を構築しているD2Cブランドです。

今日は『顧客をつかんで離さないD2Cの教科書』で成功事例として取り上げた企業の事例を抜粋してご紹介します。

今回はまずCOHINAさんの事例です。

小柄女子の救世主ブランド「COHINA」

小柄女子にも「選択肢」を。
大学生インターンが立ち上げた“ 自分ごと”ブランド。


株式会社newn
COHINA 共同創業者・ディレクター
田中絢子( たなか・あやこ)

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角間 COHINAは創業わずか1年半で月商5000万円を達成したブランドとして話題になりましたが、まずはCOHINAがどのようなブランドか教えてください。

田中 COHINAは身長155センチ以下の小柄女性のためのアパレルブランドです。InstagramなどのSNSを使った販売が特徴で、1年間365日毎日インスタライブを続けています。それをきっかけに購入したというお客さまが多く、いわゆるお客さまと販売者の距離が近いD2Cという形を取りながら、オンラインのみで販売をしています。

角間 〈155センチ以下〉にされた理由を教えてください。

田中 市場的な意味と私の個人的なストーリーの2つがあります。
 まず市場としては、意外と小柄女性は多く、日本人の平均身長が女性で157センチですから、155センチ以下だと20 パーセントくらいはいる計算になります。このようにすごく明確なパイがあるにもかかわらず、これまでこの層をターゲットにしたプロダクトが全くなかったのです。
 一方の個人的な話としては、私自身の身長が148センチで、本当に洋服で困っていました。ユニクロのSサイズすら大き過ぎ。丈直しだけで2000円や3000円もかかるという切実な悩みがあったのです。

角間 インスタライブを1年365日、毎日続けているそうですが、どういうきっかけで始めたのですか?

田中 最初は自分たちでパターンも全部手で切って、梱包もしてという状態だったのですが、何かができあがるワクワク感を皆と一緒に楽しみたい、知ってもらいたいという気持ちが強かったです。
 うちのような小規模なブランドとなると、他に手段がなく、まさかいきなりテレビで取り上げてもらえるわけでもありませんし、ブログを書くのも相当な時間がかかる。本にまとめるのも当然難しいということで、たまたま手軽にとれる告知の手段として目の前にあったのがインスタライブだったというわけです。

角間 初日はどれくらいのお客さまが観たのですか?

田中 実は初期は1人だけしか観てくれない日もありました。

角間 1人ですか?

田中 お客様1人に対して配信側が2人という、効率の悪すぎる発信でした(笑)

角間 それが今は何人ですか?

田中 多い時で500人(アーカイブだと1〜2万人)です。

角間 そういう状況からここまで成長できたというのは、ある意味同じことが誰にでも可能であるということですから夢が広がります。

いまこうして書いているnoteもそうだし、「土日除いて毎日放送」を決めたVoicyのフォレスト出版チャンネルもしかり、やはり「毎日やる」がポイントなのは共通点です。おかげさまで、Voicyはもうすぐフォロワーが1000人を超えそうです。

フォロワーが500人でも「密度」さえ濃ければ売れる

角間 商品の販売前から熱烈なファンを作るというのが、D2C成功の一つのキーなのですが、インスタライブの開始から3ヵ月後の正式オープンというのは、何か目安があってのことですか?

田中 いえ、本当に結果論です。3ヵ月と決めていたわけではなく、単純に商品を増やすのにそれくらいかかったということです。ですから、お客さまの基盤ができたからというより、私たちのオペレーションが整ったという理由にすぎません。

角間 逆にこれくらいファンができたらスタートしようという始め方は、あまりおすすめしないですか?

田中 おすすめしないというか、そうした目標数はなくてもよいと思っています。ただし、参考として私たちの実例を挙げますと、幸いなことに発売した初日から購入者がいました。当時はフォロワーが1000〜2000人ぐらいでした。
 フォロワー1000人って、ある意味、そんなに難しい数字ではないとは思うのですが、それでもその1000人の密度が濃ければ、ちゃんと売れるんだというのは実感しました。

角間 密度ですね。やはり。

田中 仮にフォロワーが500人でも「密度」さえ濃ければ初日から売れると思います。

最近、いろんな企画の取材や打ち合わせをするときによく見聞きするのが、「量より質」という点です。単純にフォロワー数が多いから売れるというのは過去のケースであり、ここ数年はいかに「濃いお客さん」をきちんと抱えているかが肝になってきている気がします。

「フォロワー○○万人」「チャンネル登録者数○○万人」の人が必ずしも稼げていない。そんな実例がゴロゴロ出てきている感じです。

ブランドの「ファン」をつくろうとしてはいけない

角間 ちょっと漠然とした質問をさせてください。D2Cにおいては、「共感」ということがキーワードなるのですが、そのために心がけていることは何かありますか?

田中 「ファンを作ろう」と思いすぎないほうがよいとは思っています。

角間 スターとファンのような上下関係ではなく、友達を作る感覚に近いということですか?

田中 それに近いです。気軽に話しかけて、相手が何が好きなのかを理解して、悩みがあれば相談も受けて、こちらも近況報告して……という。

角間 完全に友達ですね。夜中に電話している友人みたいな感覚かな。

田中 「いつでも声かけてね」みたいな関係をオンラインでいかに築いていくかが重要だと思います。

なるほどー!これって、オンラインになったことで、かえって「商いの原点」に戻っていますよね。昔の商店街の八百屋や酒屋の世界。

コミュニティが自然発生で生まれた

角間 さらにファンを増やしていくための施策や仕組みはありますか?

田中 私たちが仕掛けたわけではないのですが、お客さま同士の非公式LINEグループがあります。お客さま同士がすごく深くつながっている状況です。

角間 自然発生的なコミュニティですか。

田中 本当に自然発生で、私たちもびっくりしたんですが、インスタライブを観ているうちにお客さま同士が連絡を取り合うようになって、最初はInstagramのDMなんですが、徐々に仲良くなるとLINEの交換になって、やがてLINEグループができて、そこで日々会話をしているうちに「実際に会いたいね」となって、オフ会が発生したりとか。

角間 流れとして最高ですね。

田中 私たちもびっくりしました。「今日はCOHINAのオフ会しました」とかお客さまに言われて、そんなこと1ミリも知らなかったので。お客さま同士でうちのポップアップストアに来てくださったり、COHINAのコーディネートでディズニーランドに行ってくださったりしてますからね。

角間 熱量の高い人が新しく周りの人を連れて来る好循環ですね。

田中 やはり共通の悩みや、「服」という身近なものが間にあると仲良くなりやすいのだと思います。お客さまにもすごく言われます。「COHINAの洋服も好きだけど、何より感謝しているのはCOHINAの服をきっかけに友達がすごく増えたこと」だ、と。作り手として、そこまではちょっと想像していませんでした。

お出かけ1回あたりの価値が上がってきた

角間 最後に。これは言いづらいかもしれませんが、コロナ禍は商売上追い風になっていますか?

田中 そうですね。やはりネットで買うことが当たり前になってきたのと、在宅ということでライブを見てくれる人も増えたと思います。
 あと、いわゆるプチプラの有名ブランドじゃなくて、多少お金はかかってもちゃんと自分の好きなブランドで買いたいという傾向が強くなってきたのかなと感じています。お出かけの回数が減ったからこそ、お出かけ1回あたりの価値がすごく上がっていて、「こんなに大事な日なんだから簡単に済ませられない」という雰囲気が醸成されているようです。
 それと同時にネット上で過ごす時間も増えたので、色々なブランドを見つける機会も増え、比例して好きなブランドも増えてきたというところで、指名買いが増えたのかなとも思いますね。
 衝動買いではなく、「ここのブランドで買いたい!」という指名をいかにしてもらえるかが、今後ますます大切だと感じます。

「ブランドとして愛されること」は今後もさまざまなビジネスでも重要なポイントとなるはずです。なにかヒントを得られそうな話ではないでしょうか。

というわけで、今回はCOHINAさんの事例を取り上げました。

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